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一体何が悪いのですか?「プロレス芸」と言って。〈その壱〉


大好きだから、noteにも書いてきました


 私はプロレスが大好きです
 ですから、noteに投稿した記事でも、ちょこっとずつですが、何度かプロレスについてふれてきました。
 例えば『【書評】『楚人冠全集第一巻』明治言論人の慧眼と、マイナンバーカード』では、ジャイアント馬場さんが豪快なプロレスでワクワクさせてくれたことや、そんな馬場さんが童謡『蛙の笛』を愛唱歌としている、とても感受性豊かで繊細な人であったことを記しました。
『朝日新聞社での思い出①』には、中学生の頃からカッコ良くて素敵だなあと思っていた美人レスラーのPenny Bannerさん(1950年代のアメリカで活躍された方)の写真を載せました。
『朝日新聞社での思い出②』には、新間寿(しんま・ひさし)さん前田日明(まえだ・あきら)さんという二人の方の、まったく異なるプロレス・スタイルについて、少しだけですがふれました。
 新間さんは、新日本プロレス取締役営業本部長やプロレス団体UWFの代表を務められた方で、プロレスラーではないのですが(のちに『アントニオ猪木の伏魔殿』〔徳間書店〕という本を出版されました)、私はこの方の仕事のやり方は、見事なる「プロレス芸」以外の何物でもない、と思います。  
 猪木・アリ戦を実現したり、虐政で世界に悪名を轟かせていたウガンダの大統領と猪木さんの格闘技戦を発表したり※1、第1回IWGP決定リーグ戦は世界数ヵ国の大都市をサーキットし、決勝戦はマジソン・スクエア・ガーデンで行なうと発表したり※2。
 ちなみにIWGPとは、「世界中にごろごろしているプロレスのチャンピオンベルトを統一し、真の世界王者を決めるべきだ」という「プロレス哲学」を振りかざした猪木さんが、無謀にも新しく作ろうとした(実際に作ってしまって今もある)新タイトルのことです。
 新日本プロレス出身の前田さんは「格闘王」と呼ばれるようになり、「プロレスって言葉嫌いな人、この指とまれ」なんて言い出します。ですが、この人の心の底には紛れもなくプロレス魂が燃えている、と私は思います。だって上記の言葉からして、まさしくプロレス的だもの。ボクサーや柔道家やアマチュアレスラーはこんなこと決して言いません。プロレスをけなすことはあるとしても。
 『chatGPTクンに「私自身」について訊ねて爆笑し、そして考えたこと』で、私はついにカミングアウトしてしまいました。わが理想の女性像はプロレスラー(梶原一騎・大島やすいち両先生が創造されたキャラクターの「プラチナ・ブロンドの戦う女神」マリリン・グレース)であることを。
 書いたけど結局投稿せずに削除した、ずばりプロレスラーが主役の記事もあります。初恋の人と生涯添い遂げた(出逢いのとき、二人は十七歳と十五歳!)ジャイアント馬場さんの愛妻家ぶりをモチーフにしたものです。読み返してみると、何だか偉人伝の中の美談みたいで、肝腎のプロレス・テイストが全然ないのでボツにしました。
 「プロレス・テイスト」とは私の造語ですが(「プロレス芸」は参議院議員塩村あやかさんの造語)、それが何かにつきましては、本稿を通読(今回だけでなくその参まで)されてください。

※1 結局、その大統領は発表後ほどなくクーデターにより失脚しました。
※2 結局、「新日本プロレスプロモーター協議会」全員連名の嘆願により、リーグ戦の全日程が日本国内で行なわれ、決勝戦会場は蔵前国技館になりました。新間さんの言う数か国の大都市がどこだったか、記憶が定かではないのですが、ドバイは確かに含まれていました。

プロレスのワクワクにシビレる元アイドルと私 

 何で私はこんなにもプロレスが好きなのか。
 決っています。ワクワクさせてくれるからです。
 何が飛び出すか分からない、興奮の玉手箱(それもパンドラの玉手箱)のような世界、それがプロレスです(そんなプロレスのことを「あんなもの、所詮予定調和だよ」なんておっしゃる方がおられますが、何言っているのですか)。
 ごく最近、そんな「ワクワク感」に魅了された女性に上原わかなさんという方がいらっしゃいます。
 芸能方面には疎(うと)い私なので調べて知ったのですが、タレントとして活躍されていた方で、アイドルグループ(複数)に所属されていたこともあったそうです。なるほど、かわいらしい顔立ちされています。
 ウィキペディアには、
〈2022年4月番組の企画でプロレスを始め、同年11月27日にプロレスに本格的に参戦することを発表。2023年1月4日の東京女子プロレス後楽園ホール大会でデビュー〉
 という、私には理解不能なことが記されています。果たして彼女がプロレスに入門したのは2022年の4月と11月のどっちだったんでしょ(「番組」というのは、TVのそれではなく、YouTube配信のコンテンツだったそうです)。
 そのことはともあれ、その2022年4月かそれ以前に、彼女は私の頭がクラクラしてしまうような発言をされています。
 それは、
「プロレスは、やったことも見たこともないのでワクワクしています」
 と言うものでした。
 私はこれを、2023年6月ごろ、YouTubeの動画で視聴しました。
  一体そんな女性の何がどうなって、発言のおよそ8カ月後にはプロレスラーになってしまっていたのでしょうか? 私にも分かるわけがありません。 
 それにしても凄いですね!
 良いですか。
「見たこともやったこともない」
 のではなくて、
「やったことも見たこともない」

 なんですよ!
 男がこんなこと言ったとしたら、単なるノータリンだと私は思いますが、上原さんのような魅力ある女性が口にされると、言葉の意味が違ってきます。

謎多きプロレスラー・上原わかなガンバレ!


 上原さんには「ワクワクしてしまう未来」が見えていたのだと思います。すなわち予知能力がおありだったのです
 その後私はYouTubeの動画で上原さんの試合(のほんの一部だけ)
を観ることができました。巧拙はともあれ(つまり一切問わないことにして)、ちゃんとプロレスの試合になっていました。痛みに負けまいとする一所懸命さが良くて、いろんな意味でハラハラさせられました。。
 筋トレをする人間には常識ですが、人間の身体はトレーニングを始めても1年くらいでは、そんなに変わるものではありません。先述の前田日明さんは、身長192cmと日本人レスラーとしてはかなり大型でしたが、新日本プロレスに入門してからベンチプレスで100キロ挙げるまでに、約1年かかっています。
 本格参戦後何と1カ月あまりでプロのレスラー(Professional Wrestler)になっていた上原さんには…おそらく人間離れした素質がおありだったのでしょう。
 ガンバレ上原さん。でもケガにだけは気をつけてくださいね(プロレスしてたらケガは必ずするものですが)。
 5年ほど前でしょうか、私はTVで全日本、新日本という老舗団体の(もちろん男の)プロレスを、たまたまなのですが続けて観ています。ですが、両者とも上原さんの試合とは比較にもならないくらい、絶望的にツマラナかった。
 名前も知らない若い選手たちは筋骨隆々と肉体が仕上がっていて、運動能力は高くスピーディーに難しい技をこなしているのですが、何か心の虚しさが伝わってくるような寂寞(せきばく)としたムードが、痛々しく感じられました※。

※個人の感想です

シンはなぜ新宿伊勢丹前で猪木を襲ったのか?


 プロレスのアンチの方が必ずと言って良いほど口にされる言葉に、
「ロープに振られた選手が、何でロープから跳ね返って走って来るんだ」
というものがあります。
 これに対してジャイアント馬場さんは、見事な回答を示されています。
 馬場さん穏やかな口調でこうおっしゃいました。
「あれはね、催眠術。やられるなあと思っても、体がついて行っゃうんだよね」
 話変わって1973年11月5日のことです。
 当時奥さんだった倍賞美津子さんと、新宿のデパート伊勢丹で買物を済ませたアントニオ猪木さんは、出口で当時の抗争相手だったタイガー・ジェット・シン選手に襲撃され、ボコボコの血まみれにされてしまいました
 このことについては「プロレスの味方」を自認し、力強く猪木支持(当時の感覚では、即ち馬場不支持)を主張していた村松友視さん(のちに直木賞作家)も「なぜシンに猪木の休日の予定が分かったのか。なぜ東京の地理に不案内なシンがピッタリのタイミングで猪木をキャッチできたのか」という主旨のことを述べられています(つまり不可解の念を隠せなかったわけ)。          今と違ってGPSはあることはあったけど、アメリカが巨費を投じて専(もっぱ)ら軍事用に使っていた時代でしたから。
 私は村松さんとは反対に、ずっと断乎たる馬場派なのですが、この「猪木神話が揺らぐと嫌だな」的疑念にはキッチリお答えできます。
 そりゃ決っているでしょ。
 シンにはやはり予知能力があったのですよ

リングでプロレスしてSFを極めた学生たち


 人の意思を奪い思うがままに操る催眠術、そして予知能力。
 何だかSFみたい、と思われた読者も多いことと思います。
 「みたい」ではなくて、実際に、プロレス=SFである、という有力な説が存在したのです。
 私は1980年代初頭、明治大学でSF研究会というサークルに所属していました。私たちが、やたらと凶暴で動機もなく殺人を重ねるアンドロイド美少女が主人公の映画や、国枝史郎と半村良の比較研究なんかを掲載した同人誌をシコシコ作っていたその頃。
 京都では、同志社大学SF研究会の部員たちが、ちゃんとしたリングを設置して、その上で華々しくプロレスを戦っていたのです(今はどうなっているか知らないけど)。
 彼らによると、SFは、
「スーパー・ファイトの略でもある、すなわちプロレスだ」
 とのこと。
 私も確かにプロレスは単なるファイトではなくスーパー・ファイトだと思います。
 流石(さすが)はSFの大家・筒井康隆先生の母校同志社大学
 羨望とある種の悔しさを感じた私は「何をっ、こっちの先輩にはマサ斎藤坂口征二(プロレス好きには説明不要の選手たちです)がいるんだぞっ」なんて負け惜しみの言葉を吐き棄てていました。

「センス・オブ・ワンダー」が夢の架け橋

 SFの魅力は何か?
 SFとは何か?
 この二つの問いには、こんなひとつの言葉で明確な回答が示されています。
「それは、センス・オブ・ワンダーである」と。
 この言葉は直訳すれば「驚異の感覚」。SF関係者やSFファンの間では「ある種の不思議さが生む感動」という意味合いで用いられています。
 SFに関わるこうした用法がいつ生まれたのかは不詳ですが、1940年代のことである、というのが定説になっています。アイザック・アシモフが有名な「ロボット工学三原則」を発表した時代ですね。
 余談になりますが、「ロボット工学三原則」をエピグラフに掲げたアシモフの短編集『われはロボット』の刊行が1950年なので、「三原則」の提唱は1950年、としている資料が多いのですが、これは誤りです。『われはロボット』収録作品のひとつ『うそつき』(1941年)には、すでに「ロボット工学三原則」という言葉と、その第一条が記されており、同じく『堂々めぐり』(1942年)では「三原則」の全文が明かされています。
 さて、本稿のテーマはプロレスです。
 プロレスの魅力とは何か?
 プロレスとは何か?
 これもまさしく、「驚異の感覚」であり「ある種の不思議さが生む感動」、つまりセンス・オブ・ワンダーに外(ほか)なりません。
 ですから、プロレス=SF説は、曲学阿世(きょくがくあせい)の奇説なんかではなく、まさに両者の本質を見事に摑んだ正論なのです!
 伝説のプロレス実況アナウンサー、古舘伊知郎さんだって、プロレス会場のことをこう言っていたではありませんか。
「闘いのワンダーランド」と。

復讐鬼の眼帯に隠されていた未来の科学


 第1回IWGP開催の少し前の時代に、こんな実話があります。
 新日本プロレスに、ジ・エンフォーサーというリングネームのヘビー級選手が来日しました。エンフォーサーの本来の意味は「法律などの執行人」ですが、アメリカのスラング(俗語)では「用心棒や乱暴者など」を意味します。
 なるほど、いかにも凶悪とか獰猛(どうもう)という言葉が似合う凄まじい形相を、私もプロレス雑誌で見ています。片目には眼帯をしていました。
 眼帯をするようになったのは、プロレス界で別格扱いされてきた超巨人レスラーのアンドレ・ザ・ジャイアント(身長223cm、体重235㎏)に、アメリカのリングで片目を潰されてしまったからです。
 彼がこのとき、なぜ来日し新日本プロレスのリングに参戦したかと言うと、同時に来日していたアンドレに復讐するためでした。
 …といった恐ろしいいきさつを記した選手紹介文を、観客席に座りながらパンフレットで読んでいた村松友視さんは、ふと「?」という違和感をおぼえ、とまどいました。
 考えるまでもなく、違和感の正体は、すくに判明しました。
 パンフレットに掲載されているエンフォーサーの写真と、リング上に現れた彼とでは、している眼帯が左右逆だったのです。
 
なぜこのような現象が起きたのかを説明します(以下は新日本プロレスのパンフレットに掲載されておらず、プロレスマスコミも一切報道していないことです。しかし私は知っている)。
 1980頃のエンフォーサーには、2023年の現在よりも、さらに先の未来のバイオテクノロジー技術が使え、DNA操作が可能だったからです。
 アンドレに片目を潰されたエンフォーサーは、その未来の技術でたちどころに眼球を再生しました。ところがそのことを知った執念深い性格のアンドレは、路上でエンフォーサーを闇討ちにして、もう一度片目を潰してしまったのです。それが前回とは左右逆だったという次第。
 たび重なる屈辱に復讐の鬼、怨念の塊と化したエンフォーサーは、今度は眼球を再生せず、怒りの凄まじさを見せつけるために、眼帯をしたまま太平洋を越えて新日本プロレスのリングに上がったのでした。
 何でエンフォーサーにそんな未来のテクノロジーが使えたのか、ですって?
 くだくだしい説明は不要でしょう。少し想像力を働かせれば分かることです。
 だって、プロレスはSFなのですから!


 

                         〈その弐〉につづく

※トップの画像は映画『力道山の鉄腕巨人』(1954年新東宝)のポスターから。ここで力道山が演じたのはモロに日本版ターザンでした(日本国内の密林で縦横無尽の大暴れをします)。この力道山の腕にぶらさがっているのは少女スターだった松島トモ子さんです。古川緑波、柳家金語楼共演。若き日の丹波哲郎、安倍徹も出演しています。力道山道場一門総出演





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