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初めての地に移住してみて、お耳の「仲間」がいるという心強さに支えられて暮らしています。|2024.啓蟄・桃始笑

■ ここ最近のあとがきのような


美観地区 倉敷川

・音のない世界の仲間がいるということ

2023年12月、倉敷市地域おこし協力隊となったわたしは、関東から単身で岡山県倉敷市に移住してきた。

倉敷とことこで一緒に働こうよ」と言ってくれた友人や、瀬戸内を旅していたときに知り合った友人は何人かいたものの、倉敷市どころか岡山県にだって、わたしは縁もゆかりもない

たった一人で倉敷に移住してくることに対して、もちろん不安はたくさんあったけれども、でも「きっと大丈夫だろうな」という根拠のない自信もまたわたしのすぐそばにあって。

photo @neko33umeki 

というのも。

わたしには、聴覚障がいがある。今このnoteを書いている日本語のほかにもうひとつ「手話」という言語をもっている。

だからきっと。

新しい土地に行っても、お耳の仲間手話の仲間がわたしを受け入れてくれるだろうと、そんな漠然とした期待がどこかにあって。

photo @neko33umeki

ほかの障がい種の人たちがどうなのかは分からないけれども、わたしたち聴覚障がい者は「仲間意識」のようなものが強いように感じている。多分それは、音の世界の人たちの中で日々感じている「分からない」という孤独感共感しあえることであったり、わたしたちの言語「手話」があるおかげで。

倉敷市役所

実際、倉敷市地域おこし協力隊に着任した初日に市役所やその関係施設で働く聴覚障がい者のコミュニティの存在を教えてもらって参加し、手話サールをまわってろう者(聴覚障がい者)や手話通訳者と顔見知りになり、取材で倉敷市聴覚障害者協会に出会った。

・【手話サークル「草の会」(くらしき健康福祉プラザにて毎週水曜日開催)~ ゲームを通して仲間とともに手話力向上を目指すコミュニティ】あとがきのような

手話サークルには市内で活躍する多くの手話通訳者さんがいるので、お仕事で通訳を依頼するときに結構な高確率で顔見知りの通訳さんが来てくれる。わたしは通訳さんの指名はあまりしないので、毎回どんな通訳者さんが来てくれるかドキドキしている。だから、集合場所に行って見知った顔のかたが通訳をしてくれると、とっても安心できる。

初めての場所で通訳を受けるのであればなおさら「はじめまして」よりも「今日もよろしくね~。元気にしてた?」から始まるほうが良い。こと手話通訳は相手の手話を読み、わたしの手話を読んでもらうという会話だからこそ。お互いのことをはじめから知っている人に通訳してもらえるのは心強い。

・【第2回ふれあいサロン(2024年1月28日開催)~ 手話で語り合いながら七宝焼作品を作ろう】あとがきのような

倉敷市聴覚障害者協会は、当事者団体。「ろう協」とも呼ばれるこの組織は全国にあって、自分たちにとって必要な情報保障について学んだりしながら生活や仕事での困りごとを一緒に解決したり、交流をしたりしている。

わたしには音の世界にもお友達はいるし、音声でも会話ができる。それでも、当事者同士だから、手話を使って話せるからできる話もあって。音の世界と音のない世界の狭間をぴょんぴょんとしながら生きているのが性に合っているのかもしれないなぁと思っていたり。

音の世界に住む協力隊のみんなとも
定期的にご飯に行っています

どこに行っても「ようこそ倉敷へ」とあたたかく迎えてもらい、ちょっぴり自己紹介をしたあとは、まるで昔からそこにいたかのように他愛もない世間話の手話が止まらない。

多少の方言はあれども、倉敷で出会うろう者は「その手話は違う!」と否定してくるタイプの人はほとんどいなくて「へぇ~東日本はそうやって表現するんだ!」と受け入れてくれる。

photo @neko33umeki

この「わたしはわたし、あなたはあなた」というスタンスは、きこえに関係なく倉敷でよく見かけるタイプ。移住者として関東から倉敷に越してきて、「常識だと思っていたこと」がそれぞれに異なることもあるけれども、そんなときに「わたしはわたし、あなたはあなた」とそれぞれの常識を認め合えるお国柄が、なんだか居心地よく感じている倉敷移住4ヶ月目。

音のない世界で仲間たちにあたたかく抱きしめてもらっているから、音の世界でも頑張れる。そんな仲間たちに受け入れてもらえて本当にありがたい。

■ 桃始笑(ももはじめてさく)

・マスカットスタジアムで野球観戦をしてきました

そうそう。先日は、お耳の仲間たちと一緒にプロ野球のオープン戦に行ってきた。対戦チームは、広島カープvs楽天イーグルス。岡山はプロ野球チームを持っていないからそんなに盛り上がらないだろうと思っていたけれども、倉敷にあるマスカットスタジアムは年に数回プロ野球がやってくるらしい。

誘ってくれた子がカープファンなので、取ってくれた席はカープ側の内野。しかも、前から4列目という本気モード高めの良席。

わたしは宮城県仙台市出身ということもあって楽天に肩入れしてしまうけれども、周りがカープファンだらけだったので、心の中で「いいぞー!」とか「ああああー惜しい!」とか叫び続けながら、カープの好プレーに拍手を送り続けた。

隣に座っていた友人は「まりこちゃん、楽天がいい感じになると自分の太ももをこぶしでガシガシたたいてて、本気の楽天ファンだったよね」と笑っていた。楽天推しは、全然心のなかだけじゃなかった。バレバレ。

今回は音のない世界の住人5人と子ども1人の6人で観戦に行ったんだけど。内訳は、カープファンが2人、阪神ファンが1人、日ハムファンが1人、にわか楽天ファンが1人、あとおちびちゃん。みんなそれぞれに野球が好きで、それぞれに推しのチームがあって。それを認め合いつつも、思いっきり手話でおしゃべりができること、野球観戦という共通の娯楽を楽しめること。

そういう休日を一緒に過ごしたい音のない世界の仲間がこの倉敷という地にひとり、またひとりと増えていく日々は、とんでもなく心強い

いつもありがとね。これからも、仲良くしてね。

とんでもなく楽しそうなわたし(左)

【啓蟄】土中で冬ごもりをしていた生き物たちが目覚める頃。
初侯:蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく) 3月5日~3月9日
次侯:桃始笑(ももはじめてさく)3月10日~3月14日
末侯:菜虫化蝶(なむしちょうとなる)3月15日~3月19日

茶道手帳2024

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