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食品ロスの原因は「食材への愛着不足」?マルシェ通いで食品ロスが減ったフランス暮らし

こんにちは!フランス在住ライター&幼児教育者のMarikoです。今日はタイトルそのまま、「フランスに暮らし、定期的にマルシェで買い出しをするようになったら食品ロスが減ったよ」というお話です。

「マルシェ=marché」とはフランス語で「市場」
を指し、フランス人たちが新鮮な食材や花などを買い求めて訪れる場所。屋内で毎日のように開かれるマルシェもあれば、「毎週◯曜日の午前中」というふうに、特定の曜日、特定の場所に販売者が集まって開催されるマルシェもあります。

膨大な食品ロスを生み出していた東京での暮らし

3年前、夫の故郷であるフランスへ移住するまで、私たちは東京に暮らしていました。夫も私も料理は嫌いではないので当時からよく自炊はしていましたが、今振り返るとつくづく思うのが、「毎週のように食品ロスを排出していたよなぁ」ということです。

仕事帰りや週末にスーパーへ行き、ある程度の食品を買い置きしておく。それが私たちの日常でしたが、「買い置き」と言ってもせいぜい4~5日分の食材です。日常的に自炊していたにもかかわらず、「しわしわになった葉物野菜」や「賞味期限の切れたヨーグルト」など、毎週のように食品を処分していたことが思い出されます。

食品ロスの裏にある、日本の外食やお惣菜の手軽さ

たった数日分の食材も使い切ることができなかったのはなぜなのか?私たちの場合、それは日本(特に東京)の外食のしやすさや、お惣菜の豊富さが一因だったかもしれません。

たとえば仕事が終わり夫と帰るタイミングが合うと、「どこかで食べて行っちゃう?」と、つい外食へ流れてしまいます。閉店前のスーパーへふらりと立ち寄っては、値引きされたお惣菜に手が伸びます。朝は朝で「お弁当を詰める時間がないなぁ」とコンビニに寄り、これまた便利なお惣菜やお弁当たちに手が伸びます。

「冷蔵庫にまだ食材があったけど、疲れたしなぁ。時間がないなぁ」と言い訳をつくっては、便利で楽な方へ流れ食材を無駄にしていたのです。

「ほぼ自炊」でも食品ロスが出た渡仏当初

一方、日本のような便利さのないフランスではこうしたことが起こりません。外食はランチでもそれなりの金額ですし、スーパーやパン屋さんに売っているお惣菜やサンドイッチも安くはありません。何より日本ほどバラエティに富んだお惣菜は売られていないので、「それなら自分が食べたい和食を中心に自炊しよう」ということになります。

そんなわけでフランスに来てからというもの、外食の機会がぐんと減った私たち。(子どもができた、夫婦揃って独立をしたため生活スタイルが変わったこともありますが。)しかしそれでも、渡仏して1年間ほどは食品ロスを出し続けていたと記憶しています。東京にいたときのそれに比べれば量は大幅に減りましたが、野菜や果物などの生鮮食品を中心に食品ゴミを排出していました。

食品ロスが激減、きっかけはマルシェ通いの習慣化

それでは「食品ロスが激減した!!」と感じ始めたのはいつなのか。それは、およそ2年前、毎週開かれる近所のマルシェに通い始めた頃でした。当時は娘が生後3~4ヶ月、ベビーカーや抱っこ紐でスーパーへ行くことにどうしても気後れしてしまって(単に疲れるから)、「ならば家の近くに出るマルシェに行こう」と思ったのです。

わが家の近所のマルシェは、毎週火曜日の午前中、販売者のみなさんがバンに生鮮食品を積んで集まり開催されます。そろうのは野菜屋さん、チーズ屋さん、お魚屋さん、オリーブやスパイスのお店、ホームメイドパスタ屋さん、お花屋さんなど。小規模ではありますが、その分販売者とお客さんの距離が近くとても雰囲気のいいマルシェです。

この中でも私が毎週通い始めたのが野菜屋さん。店主はとっても陽気なお兄さんで、買い物をすれば必ずおまけをつけてくれます。野菜や果物は、生産者が集まる市場から直接仕入れてくるので、旬のものや調理法など、何か尋ねれば詳しく教えてくれます。(彼の南西訛りのフランス語がなかなか聞き取れず、まったく理解できないこともありますが。苦笑)「このみかん、おいしい?」と聞けば「ひとつ剥いて味見しな!」と気前もいい。このお兄さんのお店には毎週たくさんの常連さんが集まります。

このお店のおかげもあり、私はマルシェに並ぶ野菜や果物を手に取り、料理を考えたり、季節の移り変わりを感じるのが大好きになりました。「トマトの種類が増えてきた、夏だなぁ」とか、「あ、いちごが並び始めた!」とか、「もうかぼちゃも終わるなぁ。最後にポタージュを作ろう」とかそんなふうに。東京にいた頃は、スーパーへ行って野菜を手に取っても、こんなことを考えたことはありませんでした。そもそも日本のスーパーではビニール袋に梱包された状態で販売される野菜がほとんどなので、手にとってその触感を確かめるという習慣もなかったのです。

マルシェでの買い物が私の心にもたらした変化

こんなふうに買い物をするようになり、ある変化に気がつきました。私自身、購入した食材に対し、深い思い入れや愛着のようなものを感じるようになったのです。

これはとても不思議な感覚でした。買い物袋いっぱいに購入した食材をキッチンの野菜かごや冷蔵庫に移し入れていく際、食材を丁寧に扱うようになったり、旬の食材たちのつややかとした美しさに見惚れる感覚を覚えたのです。きっと「販売する人や、販売されている“もの“と対話をしながら食材を購入する」というプロセスが、私の食材に対する思いを深くしてくれるのでしょう。

こうして自分が思い入れを持った野菜や果物は、粗末にできるわけがありません。この一連のプロセスが私の心に運んでくれる食品への愛着は、「食品ロスを減らそう」「もったいない」と謳われるキャッチコピーの数千倍の威力を持ち、「大切にいただこう」という思いを植え付けてくれるのです。

この経験は私に、「購入する」という行為ひとつを取っても、「どこで、誰から、何を、どのように」という一つひとつの選択がいかに大切なのかを気付かせてくれるきっかけとなりましたし、そのプロセスが私たちの人生に与える影響についても考えさせてくれました。このような経験を重ねていくことで、私たちの人生はどれほど豊かになるでしょう。

食品ロス問題の核心は、食材に対する愛着形成にある?

この経験をした今になって思えば、日本にいた当時、私は捨てなければならなくなってしまった食材を手に取っても、「あぁもったいないなぁ」程度にしか感じていませんでした。

もちろん今でも食品ロスがゼロになったわけではありません。しかし、こんなふうに食材に愛着を感じるようになると、食材がダメになりかけているときも「こうやって食べればまだいけるかも」と救済法を探る努力をします。仕方がなく廃棄するときにはとても申し訳なく感じ、翌週買う食材をより吟味するようになります。

私は、この「食材への愛着」を形成することこそが、食品ロス削減のカギになるのではという気がしてならないのです。これは子どもたちの食育にもつながることですが、食材が生産販売される過程を少しでも理解し、肌で感じ、そのありがたさを知ること。食への心、食材を愛でる心を育むこと。

日本でも地産地消の取り組みなどがあちこちで行われ、サステナブルな動きが活発化していると聞きます。それがうまく作用し、少しでも多くの人々の心に食材への愛着を芽生えさせられるようになるといいなと願います。

ここまでお読みいただきありがとうございました☺️

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