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魚の目玉

幼い頃、焼き魚の目玉をくり抜いて食べるのが好きだった
あのコロコロ、コリコリした食感が、香ばしくて美味しい匂い玉みたいで特別だった、煮魚のはゼラチンっぽくて嫌いだったけど

私の実家は、昔からのしきたりや家族の仕事柄、人がよく集まる場所だった
色んなお客さんが集まってお食事会のようなものが開かれるたびに
近所の旅館にお願いして仕出しをしてもらい
それを母と祖母が客間に並べてたんだけど
ある時の食事会で、美味しそうにパリッと塩焼きされた魚が
ずらりと並べられていた時があった
そうするともう、両手で数えられないくらいの魚の目玉が
こちらを向いている

我慢できなくなって、母と祖母がちょっと目を離した隙に
私はお膳にのせられた焼き魚の目玉を、一個一個くりぬいて全部食べてしまった
こんがりと焼かれた身の色合いに馴染んだ濁りきった魚の目玉なんて
なくなっても誰も気づかないだろうと思った

その後どうなったかが肝になりそうな話だけど、結果をあまり、というか全く覚えてない。きっとばれて叱られたんだと思う、だけど私はたらふくの目玉で満足だったんだと思う、だからこそなのでしょうか、覚えてない

後先あまり考えず、欲望のまま突っ走るという衝動を、魚の目玉をえぐり口に運ぶということで初めて体現できたのではないでしょうかね

かしこ

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