«Le Petit Prince» をよむ 1

(まえのページ)


・ ・ ・


さっそくはじめてみる。まずは表紙から。表紙には3行ぶんの文字がある。


逐語をみていく

Antoine de Saint-Exupéry

これは著者の名前だ。最初の難関である。外国人の名前を訳すのはむずかしい。便宜的にカタカナで、習慣的な表記であらわすしかないだろう。

Antoine を “アントアーヌ” とすることはほとんどないようだ。toi は “トワ” とする。

de もねぇ……。[də] だけど、まあ “ド” でいいんだろう。かりに “ドゥ” にしたところで益がない。(ところで、de といえば貴族の姓と考えてしまうが彼はそうではないらしい。)

- はどうしよう。邦訳では “-” と “=” の二様あるようだ。そもそもこれはなんなのだろう。説明できないことばかりだ。

Exupéry のどこが濁るかもじつは二様ある。手元の辞書にしたがう。


Le Petit Prince

タイトル。これが最大の難関だ(と思う)。

逐語訳すれば、男性単数の定冠詞、“小さい”、“王子”(または“君主” ”大公”)、つまり「小さな王子」となる。じっさいそういう書名で出された邦訳もある。Le Petit Prince を「星の王子さま」と訳したのは内藤濯で、その後の新訳はそれにならうかたちになっている。

Petit は形容詞で、ここにあてはまりそうなのは次の意味。
① 寸法が小さい、丈の低い
② 年齢的に小さい、幼い、年下の
③ 社会的に地位の低い
④(親しみを込めて)かわいい、いとしい ★そのまま訳せないことが多い

登場するのは幼さののこる男の子だから、①②にはたしかにあてはまりそうだ。また、Prince といえどももっているのは一軒家くらいのちいさな星なのだから、③といえないこともない。しかしおそらく、いちばんちかい意味は④なのではないかと思う。だから「小さい」という訳にはならない。

「星の」という修飾のすぐれた効果について、池澤訳のあとがきでふれられていたようなきがする、が、手元にないため参照できない……。

Prince は “王子” でよいように思うけど、いずれにせよ訳は保留。はじめに書いたルールで保留をよしとしたのは、あきらかにここでつまずくことがわかっていたからだ。


Avec des aquarelles de l'auteur

さいごに、著者名、書名よりずっとちいさな文字でつけくわえられた一行。これは訳せる。de は《行為者・主体》でいいかな。



私訳をこころみる

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ

Le Petit Prince(保留)

作者による水彩画とともに



きょうはここまで。


・ ・ ・


(つぎのページ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?