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«Le Petit Prince» をよむ

はじめに

Antoine de Saint-Exupéry の手による «Le Petit Prince» という100ページに満たないちいさな本を、とにもかくにも読みはじめてみようと思う。

わたしがこの本を買ったのは紀伊國屋書店新宿本店、おそらく2014年1月末のことだった。これはフランス人が書いた世界一有名な作品のひとつであり、ふまじめながらもフランス語学の徒として、大学を卒業するまでに通らなければならない道であるように思われたのだ。しかし、本にとっては気の毒なことに、その後ほとんど手にとられることなく本棚にしまわれたままだった。

訳をするためにちょっときれいなノートを買ってみたり、iPhone のメモ帳に書きだそうとしてみたり、いくつかのこころみがなかったわけではないが、まあ、ようは頓挫した。でも、note に日記を書くことが習慣化されてきたいまならば、もしかしたらできるかもしれない。あるいはあっさりあきらめるかもしれないが、だれにたのまれたわけでもないのだから、やめるならやめるでかまわないだろう。


訳書を読む

Wikipedia によれば、本邦における原著の著作権保護期間は満了し、岩波書店が独占していた翻訳出版権も消失している。わたしが『星の王子さま』という本を手にとったのは、各出版社がこぞって新訳をだした2006年ころよりあとのことだ。

はじめて読んだのは池澤夏樹 訳(集英社文庫)だった。どういう経緯で家にあったのかおぼえていないし記録も追えないが、2008年よりも前ということはいえる。
このあとオリジナル訳・新訳を買って読んだ記録をさかのぼると、以下の6冊があった。(年月は読了日)

2011年3月 Richard Howard による英訳(講談社)
2012年1月 河野万里子 訳(新潮文庫)
2013年1月 内藤濯 訳(岩波書店・オリジナル版)
2013年8月 倉橋由美子 訳(宝島社文庫)
2014年6月 管啓次郎 訳(角川文庫)
2016年9月 小島俊明 訳(中央公論新社)

どの訳者が好きか、と問われたら池澤夏樹と即答する。ただこの本はいまひとの手にわたっているので、中身が参照できない。

池澤訳はくりかえし読んだし、ほかの訳者のものにもいつも新鮮なきもちで接した。ひとつの作品をこんなになんども(いくつもの目で)読んだことはほかにない。そうでなくとも読むたびにすがたをかえる、ふしぎな作品である。


外国語を訳す

話はそれるが、すこしまえに所属している合唱団でフランス語の楽曲をあつかうことがあり、つたないながら訳をつくってパンフレットに掲載した。

軽いきもちで引きうけてしまったものの、もとの詩がもっている要素をなるべくそこなわないように、精確でありながら直訳的でないように、わたしたちの演奏にあうように、お客さんにとってノイズにならないように──たくさんのことを考えながら一語一語を訳していくことは、わずかな量であってもたいへんな作業だった。また当然ながら技能も圧倒的にたりなかった。日本語の語彙のすくなさにもほんとうになやまされた。

それでも、ああでもないこうでもないと考える時間はわたしにとってよい経験だったと思う。わたしの名前で書いたものが外にでるのははじめてのことだった。


«Le Petit Prince» をよむ

そんなわけで、わたしにとって大切な本である『星の王子さま』であるところの «Le Petit Prince» をよんでいく。先の経験のように、うんうんうなりながらよみすすめていくことでなにか発見があるかもしれない。

かんたんにルールがあったほうがいいだろう。

1.なるべく週に1文はよむ
2.逐語をみていく私訳をこころみる、の順におこなう
3.手元にある訳書を参照するさいは、その旨をあきらかにする
4.保留はOK

«Le Petit Prince» を、「星の王子さま」とはひとまず表記しないことにする。これはルール 4 に深く関係することだが、くわしくはおそらく最初の記事でふれる。


たぶん今夜につづきます。


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