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初めてのサークル参加で見えた景色 技術書典15

11月12日は技術書典のオフライン開催でした。初めてサークル参加したので、感想とか反省とか色々雑多に書いておきます。

当日のできごと 時系列で

  • 9時前に池袋駅に到着

    • 朝の池袋を散歩しつつ現地に向かうも9時5分頃にはビルに到着

  • 9時半、初のサークル入場

  • 10時過ぎまで設営

    • 直接搬入の開発と設計本、宅配のオームの法則本+設営資材が届いていて一安心

  • 開場まで会場内の散歩や食事(おにぎり一つ)、近隣サークルさん、Twitter上で交流してくださったにご挨拶

  • 11時から一般参加者が入場し、早速立ち読み&購入いただき、感動する

  • 12時からその枠の一般参加者が入場し、また忙しくなる

  • 12時半頃、カーディガンのボタンを掛け違えていたことに気づく

  • 12時半すぎ、唯一知らせていた友人(デザイナー)がブースに来てくれる

    • 表紙や名刺のデザインが良いとお褒めの言葉をくださる

  • 13時~15時半頃まで人が途切れず

  • 15時50分頃、トイレ休憩に出る

    • ついでにいくつかのサークルをまわって書籍を購入し、1万円ほど使う。5分足らずの出来事。

  • 16時57分頃、最後の一般参加の方がオームの法則本を購入してくださる

  • 17時閉会

  • 17時半頃撤収

  • ジュンク堂によってから帰路につくも鉄道が止まっており、しばしの足止め

  • 駅で運行再開を待っている間、Twitter上の戦利品報告画像に開発と設計本が含まれていることに気づき、感動する

  • 21時すぎに帰宅

初めてのサークル参加で見えた景色

どんなことでもそうですが、その立場になってみないとわからないことはよくあります。
今回、初めて自分で書籍を制作し、それを対面で販売することになったわけですが、本を作ること、文を書くこと、印刷のこと、設営のこと、自分の発信する技術をより理解してもらえるように伝えることなど、様々なことの解像度が高くなったように感じています。物理本の製作工程もいくつかの動画を見るなどして勉強し、塗り足しがなぜ必要なのか、版はどのようなものなのか、オフセット印刷はどのようにして色を作っているのかなどわかりました。それを理解すると、製造上の制約を理解して、本の制作にあたることができるようになります。
また、設営も一般参加ではわからないことが多くありました。これまでは、ただなんとなく布を敷いて、ポスターを掲げ、見本誌を置いておけばよい、くらいの理解でした。今回、設営にあたって、人の流れはどのような向きか、机上の紙はどのくらいのフォントサイズだと視認できるか、見本誌をどこに置けば手に取りやすいか、決済用バーコードをどこに置けばスムーズか、公式決済のみ扱うことを示す掲示はどのようなレイアウトにすれば伝わりやすいかなどなど、非常に多くの要素を事前に考える必要があることがわかりました。設営や撤収のしやすさ、輸送の際に壊れないような梱包や資材の選定も考慮が必要でした。
執筆そのものは書くべきこと、書かなくて良いこと、構成あたりを考えておけば、あとは自分の書きたいことを書いておけば良いので、時間はかかるものの負担が大きいわけではありませんでした。一方、執筆以降の本の制作、設営の準備はなかなか大変でした。まあ仕事でも、技術的なことは日常だけど、請求書の処理とか交通費の精算とかとても面倒で大変に感じるのはよくあることかと思います。
ただ、今回の技術系同人誌の活動は、これまであげた細かいことのような種々の大変なことを乗り越えて迎えた対面での販売で得られる読者からの直接的な反応や感想が、それまでの苦労を忘れさせてくれるわけです。そして読者に自分の考えや発信しようとしている技術が伝わったときの感動は忘れることができないでしょう。
自分はメーカーでエンジニアをしていますが、入社当初、家電量販店で販売員をやる研修があり、接客の機会がありました。自分がお客さんと話、相談を受け、考えて勧めた商品を初めて購入していただいたときの感覚を思い出した気がします。外国のお客さんにカタコトの英語でなんとか説明して買ってもらったこともありました。伝わるってこういうことなんだろうなと思ったような記憶があります。初心を忘れずにいたいですね。
話を戻すと、やはり、自分が好きでやっていることで、0から100まで自分で手掛けたものが伝わる瞬間は何者にも替えがたいということです。そして、それぞれの著者が、自分から見える視点で語った技術を一同に集めるイベントは、とても素晴らしく有意義で感動的だと感じています。まだしばらくは自分から見える景色を発信しつつ、皆さんから見える景色をわけてもらいたいと思っています。

良かったこと・嬉しかったこと

ブースで過ごす時間やお立ち寄りいただいた方とのお話で、いくつも良かったこと、嬉しかったことがあるので記録しておきます。

  • 開始直後から立ち読みしてくださる方・購入してくださる方が多くいた事

  • 立ち読みで熟読する方が多数いたこと

  • 立ち読みやお買い上げいただく際に頂いた言葉

    • 『このなかで一番おもしろい。熱い。今日来てよかった」

    • 『すごく気になっていた』

    • (開発と設計本を読みながら)『こういうところは大事。』

  • 開発と設計本は想定の倍以上お買い上げいただいた

    • もともと立ち読み1人、購入1冊が目標だった

    • 良くても5冊くらいかと思っていた

来てよかったとまで言ってもらえるとは……とてもありがたいです。

会場でのきづきなど

本の内容や反応の前に、設営や当日の流れなど、オフライン特有または技術書典特有のきづきを書いておきます。

設営

初めての設営だったので、うまくできるか不安でしたがなんとかなりました。設営に関しては作家の朱野帰子さんが事前に家で模擬して流れを確認しておくと良いとの旨をXで発信してくれていたので、その教えに従い、ある程度準備してから臨んだので、割とスムーズにできました。全体的に落ち着いた紺色で統一し、値札やかんたん後払い、決済方法を示す札の見た目も統一しました。また、説明のための本の内容をまとめたA4の紙も、当初は机に平置きにしていましたが、通りかかる方々にも見えるようにブックスタンドに立てかけるようにしました。名刺は置いておきましたが、あまり気づかれず。何も表示していなかったためと思います。あと、見本誌ももう少し置いたほうが良い、見本誌と表示したほうが良いなど改善の余地はありそうでした。次のリアルイベントの技書博までにはいくつか直したいと思います。
そういえば、開場後、机の全面に貼り付けていた表紙を印刷したポスターが剥がれ落ちてしまい、それを前方のサークルのfkuMnkさんに教えていただき、さらに通りかかった方に拾っていただきました。大変助かりました。ありがとうございました。
さて、今回私は通り過ぎる人がどこに目線を落としているかを観察しながらブースに立っていました。だいたい、見本誌の表紙かポスターの表紙を見てからA4の説明を見るといった流れで、表紙で引っかからなかった人はそのまま通り過ぎていく感じでした。特に開発と設計本の方は、"最適化"や"開発"、"設計"あたりの言葉に引っかかる人がA4の説明を見る感じで、立ち読みまでしてくださる方は割りとすぐ近づいてくれる感じでした。内容をよく表し、通る方にもよくわかる言葉を選ぶことが重要と思いました。

A4の説明の紙(開発と設計本)
最初の設営(最終的な設営はヘッダ画像)

技術書典公式アプリ・決済

技術書典では、サークル側は公式アプリでのかんたん後払いに対応することが必須なんですが、一般参加の方の支払い方法は任意となっています。そのため、サークル側はかんたん後払い以外に現金や電子マネーなどに対応することがあるわけですが、今回はかんたん後払いのみに対応することにしました。事前に公式のDiscord等で現金で支払う方はとても少ないとの情報を得ていたためです。結果的に現金決済を求められたのは2件でした。うち1件はかんたん後払いで決済していただきましたが、もう一方はお断りすることになってしまい、申し訳なかったと思っています。
さて、かんたん後払いですが、どのように操作すればよいかわからない方も何人かいらっしゃいました。そのため次回は手順を書いた紙を作っておこうと思います。また、決済時、電子+紙、電子+受注など、どの選択肢を選べばよいか(ほぼ100%)迷うので、これも紙を作ろうと思います。途中から「一番上ですね」「三番目ですね」などと説明するようになりましたが、本が増えたら難しいので、どのように提示すればわかりやすいかは要検討ですね。

特典

今回、オフラインでのサークル参加では、特典としてクッションがいただけました。当日、早速使いましたが使い心地もよく、とても役に立ちました。そして午後2時だったか3時だったか、公式の不織布バッグも配布していただきました。今回は貰えないかもと思っていたので嬉しかったです。
さらに、サークル参加者向けの特典?として出展者証をあげたいと思います。サークル入場時、バーコード提示と引き換えに出展者証をもらいましたが、ちょっと良い方のネックストラップにきらきらしたカードが入っていました。これは返すやつかなと思いましたが、返さなくて良いとのことでした。これは良いものをもらいました。ありがとうございます。
また、今回はオンラインマーケットで電子+紙を購入した先着1,500人にカレンダーがもらえるらしいです。前回、会期の中盤に買ったところ、遅かったようで貰えなかったので、今回は初日に色々購入しました。カレンダーも届けばラッキーです。

サークル参加記念のクッション
出展者証と当日首から下げていたもの

人の流れ

11時に開場し、多くの方が来場されました。自分のブースは入場口に近い島に配置されていたため、きりの良い時間から30分くらいは混雑し、30分以降はすこし空いてくるといった感じでした。よく考えればわかることですが、時間が経つにつれて人が多くなっていきます。つまり、11時~12時は11時入場の人だけがいるわけで、12時~13時は12時入場の人に加え、11時入場の残っている人もいるわけです。13時すぎにはすこし空いてくるだろうと思っていましたが全くの逆で、16時以降を除けば11時45分~12時くらいが最も空いていたかもしれません(空いているといってもまったく人が来ないわけではありませんが)。それを知っているのか、おそらくベテランサークル参加の方がその時間帯に買い物されているようでした。次回も同様の傾向になるかわかりませんが、おぼえておくと良いかもしれません。
結局、16時前まではずっと人が途切れる気配がなく、食事も離席もできませんでした。自分は昼食を食べなくても大丈夫な人なのでなんとかなりましたが、厳しい人は一瞬の隙を見計らって食べるか、複数人で参加すると良いかもしれません。もしくは、本当に一瞬で食べられるお菓子のようなものが良いかもしれません。(一人参加はやめたほうが良いと言われることが多いなか、今回一人参加を決断したのはコミケ常連の友人が全然問題ないと言ったからでしたが、きっと彼は早々に売り切れてしまうからだろうと察しました)
16時台はサークル参加者が回る様子がよく見られました。最後の1時間で見られなかったサークルをまわっているのかもしれません。ただ、最後の1時間は売り切れや撤収しているサークルがあるので、本当にほしい本があったりお話したい人がいる場合ははやめに行ったほうがよいかもしれません。

電子本と物理本

電子本は情報、物理本は作品・製品といった感じと思いました。やはり物理本は紙の色、質感、大きさ、厚さ、重さなど、物体としての価値というか、それから得られる効用・満足感を含めたものだと思います。一方、電子本は読者の持つディスプレイを通して文字・文を読み、絵を見て、情報を得るということが価値の大部分を占めると思っています。そして、それぞれの形態に対してそれぞれの読者がどちらに価値を見出すかということは全くの自由であるわけです。これを考えると、会場(電子)を用意しておかなかったのはミスですね。次回、もし当選して出展することがあれば、必ず設定しようと思います。
物理本は大変なところもあります。やはり一種のものづくりと言えるので、製造業の方はわかるかもしれませんが、製造そのものや在庫管理が大変です。特に同人誌の場合、試し刷りできる印刷所があったりなかったりなので、仮に印刷所から現地への直送の場合、当日まで最終製品の出来栄えを確認できないわけです。また、多くの在庫を抱えてしまった場合、どのように処理していくか考える必要があります。別のイベントに参加したり、通販を設定したりする必要があるわけですが、どうするか決めるまでは在庫を保管する必要があります。しかもきれいに商品として価値がある状態にしておかなければなりません。自宅の空間的な余裕が無いと厳しいかもしれないので、在庫管理まで考慮して印刷する数を決めると良いと思いました。技術書典の場合、後から印刷も使えるのでそれほど攻めた数としなくてもよいかもしれません。

現地開催

オフラインの現地に出展するのはやはり色々準備が大変でお金もかかります。が、立ち読み直後に読者に反応を頂いたり、内容についてお話できたりするのはオフラインならではといえます。また、近隣サークルさんとの交流もあったりしてなかなか楽しかったりします。もし知り合いが増えるようなことがあればオフ会的な感じにもなるかもしれません。まあ、面白い本を書く方がたくさんいらっしゃるので、会いに行くだけでも楽しいわけです。

本の内容に関すること

今回は他のイベントも含めて初サークル参加となったわけですが、気合を入れて2冊も作っています。
1冊目がオームの法則本、2冊目が開発と設計本です。
それぞれいただいたコメントや特徴、反省点、改善点などを書いておきます。

オームの法則本

ターゲットがぼやけてしまったと感じています。電子工作初心者に対しては理論的でほしい情報ではない、玄人には簡単すぎて必要がない。では誰が読むのだろうか?という感じです。いただいたコメントのなかに「具体的な回路例がほしい」といったものがあったので、もう少し実用面を充実させればよかったと思っています。また、表紙をシンプルにしすぎた感もあるかもしれません。引っかかりがない。色が落ち着いているので差し色を入れればよかったかもしれません。いずれにしても、ハードウェア関連の本はかなり突き詰めるか、実用面を充実させるかなど、読者をより明確にして、それがタイトルや表紙で伝わるようにしたほうが良さそうということがわかりました。

開発と設計本

もともとこちらはずっと書きたかった内容でした。現地での読者からも良いコメントをいただき、想像以上に面白いと思っていただいたようです。オフライン開催前日の公式配信でご紹介いただき、タイトル以上に深く、抽象度が高め、新しい切り口などのコメントを頂きました。自分としては、たしかに個別の問題を扱っているわけではなかったので、一般化した内容に近いとは思っていましたが、ウォーターフォールやアジャイルなどの開発技法自体を定式化しているものの、具体的な関数の中身を記述していないので、そこまで抽象的ではないのかなと思っていました。ですから、公式配信でのコメントを受け、なるほど、他の人からはそういう感じに見えるのか!と発見を得るとともに、自分の自分を客観視する力の無さも自覚しました。オフライン開催ではこのコメントを活かし、やや抽象度が高い概念的な内容を扱っています、と説明することができました。今回は一人で執筆、一人で校正、査読なしで進めたので、やはり誰かに読んでもらう機会を作ったほうが良いと感じました。まずは査読してくれる人を見つけるところから始めなければなりません。さて、話を内容に戻しますが、この本の反省点は締切を優先してしまったがために、図がおろそかになってしまったことやもう少し加筆したかった箇所があること、書き忘れた説明があることなどでしょうか。書いてある内容についても、もう少し全体を通した軸を強調できればよかったと思っています。今後、いつになるかわかりませんが、第2版が作られるかもしれないので、そのときに改善できるようにしておきます。

ちなみにオンライン開催初日は、オームの法則本のほうがお買い上げいただいていました。オフライン開催当日は開発と設計本のほうが人気だったわけですが、公式配信でご紹介いただいた影響が大きいように感じています。

最後に宣伝

まだまだ技術書典オンラインマーケットは続いています!今回の開催で紙の本を買えるのは26日までということになります。弊サークルの書籍はオンラインでも紙の本を買えるので是非見てみてください!

また、25日には技書博9が蒲田で開催されます。こちらもよろしくお願いします。




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