#30 髪を切りに行った

髪を切りに行った。

いつも行く店は決まっていて、近所のおじいちゃんから子供まで来る小さな店だ。三席しかない店の規模の割に結構人が来るので回転率が悪い。休日だと三、四人待ちはザラだ。たまたま平日に休みができたので丁度いいと思い立ち、午前に髪を切りに行った。

家から店までは数百メートルの距離なので歩いていける。道中に信号がある。信号待ちにスマホを取り出し、Twitterか何かを見ていた。あとから大声で話す若い男二人組がやって来た。「うわ、ガラの悪いのが来たな」と心の中で思い目を合わせないようにしていたら、その片方に「信号青なってますよwww」と声をかけられた。声色からその発言が決して親切心によるものではなく、明らかに回転寿司悪ふざけキッズ的ノリのものであることが即座にわかった。最悪だ。せっかくの平日休みを午前から台無しにされた。「あぁ、もうどうでもいいや」という気持ちに一瞬にしてなった。音ゲーで開始早々にコンボが途切れた時の感覚だ。書道の一画目で失敗した時の感覚でもある。
もう1人が「ちょお前やめろよwww」的なことを言いながら二人組は去っていく。自分は数秒その場に立ち止まったままだった。

この日はこれを引きずり、帰ってから何もできないまま1日が終わった。

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