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千穐楽おわって

「不安の倒し方について」稽古が始まったのは2月上旬。

今もだけどやっぱりコロナ関連は落ち着かず、感染者も減らないし、まんぼう延長されるしで、感染対策バッキバキでの稽古がスタート。マスクや消毒はもちろん、常時窓開け換気(とにかく寒い)、終わったら速攻で帰り、定期的にPCR検査。毎回結果までドキドキして、結果見る瞬間心臓飛び出そうってか飛び出て、陰性だったからその心臓また飲み込むの、何回繰り返したことか。ある意味、心臓で食あたりしてた。

稽古期間中はピリピリムードと和やかムードが丁度いい塩梅だった気がする。森さんとあさこさんが通常運転で笑いを届けてくれて、若手男子の想定外行動に能龍さんがツッコんで、やべっちの高笑いが響いて、女子たちは粛々と仕事人してる、みたいな。みんな、笑いながらも悩んでいる。仲間だけどライバル。楽しいけど苦しい。見え隠れする本音と建前。

物語が出来上がるにつれて、より繊細な、針の穴に糸を通すような、まさに魂は細部に宿るというような芝居の作り込みが行われ、同じセリフを吐いて、同じ動きをしているはずなのに、何故だか全く違うものが出来上がったりした。能龍さんが持つ正解に近づけ、その誤差を出来る限りなくし、加えてベストを更新していく作業。なんかアスリートのこと書いてるみたい。でも、その辺のそんな感じだった。

小屋入りしてからは、舞台セットと照明、音響とのコラボレーションが始まる。客席からは見えない場所での戦いもスタート。
舞台袖がない特殊な舞台だから、出ハケひとつとってもなかなかの神経と労力を使う。後ろ以外は、テントの裏に穴があってそこから出入り。音をたてないように忍者のように潜んでスタンバイしていた。
そして待機場所はほぼ奈落と呼ばれる舞台の下。待機する頭上でみんなが動き回っている。最初は居心地悪かったけど、次第に快適になるから人間って不思議。
それから舞台装置の目玉である回転テント。どのタイミングとスピードで回すのか、細かい調整が行われた。
最後のシーン、テントをすべてバラすのだが、これは暗転中に行われる。全員が何かしらの役割を持ち、暗闇の中で蓄光テープ(光るテープ)を頼りにぶつからないように任務を遂行する。まるでスパイ。まるでCIA。見えない時も、そこにいるんですよってね。

そして緊張の初日からあっという間の千穐楽。
連日たくさんのお客さんが入って下さった。
稽古からつくり上げてきたものを、全員でリレーしながら届けていく。最後はやべっちと森さんとあさこさんがしっかりと、そして大切に刻んでくれた。お客さんの心に、キャストたちの心に。
毎日カーテンコールでは、たくさんの笑いと、拍手と、笑顔。マスクで全部は見えないけれど、お客さんのキラキラした目が舞台に注がれていて、同じ時間と空間を共有できたことで胸が温かくなる。
観て下さった方が「舞台っていいなぁ」って感じて下さっているのと同じで、立つ側も「舞台っていいなぁ」を全身で浴びるように感じさせてもらっている。

本当にありがたい。有り難いのです。
このご時世に、有り難いことが、有り得ているこの奇跡。
どうしたって不安は消えないからこそ、この作品で述べられる「不安の倒し方」というか「不安の捉え方」のアドバイスが、誰の胸にも響くのだと思う。

かくいうわたしも不安まみれ。将来に、仕事に、家族に。安心できる要素なんて「健康」くらいかもしれない。でもそれも今だけかもしれない。あぁやっぱり不安。いっぱいいっぱい月を眺めてから、ゲームしよう。登山しよう。友達と遊ぼう。お酒飲もう。あぁいっぱい関係ない時間過ごせそう!

きっと大丈夫。
背負って歩けるから。

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