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Testosteroneという漢(おとこ)

小さな顔、不敵な笑み、怪しく整った髭、常人の域を超えて発達した筋肉。

このアイコンを見たことがないツイッタラーはいるだろうか。フォロワー102万人、コンパクトかつ爽快感とユーモアのあるつぶやきには怒涛の勢いでRT/いいねがつき、タイムラインで見かけない日はない。

そのTestosterone氏が「本当は」どんな人物か、ご存知の人は果たしてどれくらいいるのだろうか。

「Testosterone」との出会い

わたしが初めて「Testosterone」を知ったのは、2017年7月、品川駅構内ecuteの書店だ。オンラインカウンセリング/コーチングサービスを提供するcotreeという会社の代表をしているわたしは、スタッフの臨床心理士(カウンセラー)の誕生日にプレゼントする本を探していた。

「自分だったらあんまり買わない本がいいよね〜」と思いながら徘徊していたわたしの目に留まったのが、これだった。

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筋トレが最強のソリューションである

大きくでたな…?

これだけは絶対買わない…

物事をこうやって単純化する人っているんだよ、特に筋トレ好きな人ってほんとに好きだからな、食事をタンパク質の含有量で評価したかと思ったら、信号待ちでガラスに映った自分を見ながら胸筋触ったりするんだ…そんで「究極」とか「最強」とか使いがちなんだよ…

そんなやさぐれた気持ちで手にとったこの本を、わたしは気づいたら最後まで立ち読みしていた。

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「世界…征服してみるか…」?

この人には一体何が見えているの…?どうしたの…?いやまてよ、でもこの複雑かつ不透明な現代社会。もしかして必要なのはこういう根拠のない明るさなんじゃないか…?

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「いろいろな世界を持てば追い込まれない」…?

これは、福祉の世界では有名な東京大学の熊谷先生の「自立とは依存先を増やすことである」という名言を、誰にでもわかる言葉で伝えている…メンタル不調を抱えた人に対するメッセージとして実に的を得ている…!

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解決した…!

カウンセリング/コーチングという専門家との「安全な対話」を通じて世界の解像度を上げ、メンタルを支えるサービスを提供しているわたしたちにとって、全てを筋トレに還元して解像度を下げる営みは皮肉でもあり、一方でときに抗えない真実でもあった。

「難しく考えすぎじゃね?」

の一言で解決する問題は、確かにあるのだ。

なお、わたし自身は実に難しく考えすぎなタイプで、「難しく考えすぎて何もスタンスを取れていないが、間違ってはいない」と評判のnoteを書きがちである。例えばこれ。

今見えてることだけじゃなくて、いろんな視点があるよね…?自分だけの視野にとらわれて批判するのでなく、広く長い視野に立ってみような…?というのがわたしの基本スタンスだ。

よってTestosterone氏の「筋肉一択!!!」という姿勢は、そういう意味でもわたしのスタンスの真逆にあった。

だからこそ、このような「難しく考えすぎない」「課題と真っ向から向き合わない」視点は「私たちに必要かつ回避しがちな視点」であると考え、この本を弊社のカウンセラーにプレゼントしたのである。

オフィスで本をプレゼントして、みんなでひとしきり回し読みして笑ったあと、スタッフが「そうだ、この人twitterで見たことある人だ」というのを聞いて、わたしはTestosterone氏をフォローするようになった。

カウンセラー氏は、その後ちょっと筋トレにハマってた。ような気がする。

そして3年が経った

氏のキャラクターは一貫しており、3年という長い月日の中でもブレる様子が一向にみられない。それはもう、こちらが心配になるほどにブレない...

Teststerone氏の言葉は、強い信念を持ちながら、誰を傷つけることもしない。「なんか大丈夫かも」と思える語り口にユーモアを忘れず、その根底にはフォロワーへの愛が溢れている。

品川の書店で見かけてから3年、このような愛のあるメッセージに触れ続けるうちに、いつしかわたしはTestosterone氏に弟子入りを願うくらい、尊敬の眼差しを向けるようになっていた。もちろんわたしは100万いるフォロワーのひとり。陰ながら尊敬の眼差しを送るのみであった。

そして、そんなある日。

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師匠が…フォローしてくださった…!!!!!

新幹線でジャニーズに遭遇したジャニオタのように、フォローされた瞬間の写真をスクショし、喜びとともにつぶやいていた。特に筋トレで継続的に自分の限界を超えているわけではないのに、喜びのあまり小さな嘘までついてしまった。

そしてさらに衝撃的なことに、その後すぐにTestosterone氏から、「お話をしたい」とメッセージをいただいたのだ。

心の師匠とはいえ、なにせ、実際にどんな人なのか想像もつかない。twitterではあんなキャラクターだけど完全なる商売用かもしれないし、すごい暗い人だったり、危ない人だったりする可能性だってないわけではない。そもそも素性も顔も知らない男の人と会って大丈夫なのか。

という葛藤もそこそこに、いや、師匠の中の人、見たいわ。と思ったわたしは、即答でお会いすることになったのである。

「リアル」におけるTestosterone氏との出会い

渋谷のカフェで会う約束をし、ギリギリの到着になりそうだったわたしに対し、Testosterone氏は、約束の時間7分まえに到着され、こんな配慮溢れたメッセージをくださった。

おはようございます。席についております。サングラスかけてファイティンポーズ取ってる男が俺です。よろしくお願いします。

おぉ…。

おそるおそるファイティングポーズの男を探していると、明らかに身体の分厚さ:長さ比が異常値の男性が振り返った。小さな顔。不敵な笑み。

twitterのアイコンと…シルエット同じだ…!

そう、Testosterone氏は、アイコンと同じ小顔のマッチョだった。ジャケットを脱いだ氏は、真冬にも関わらず白い半袖Tシャツで、袖から伸びる腕が隆々としていた。

そうは言っても、何を話したらいいのか不安だった。「筋トレ…ちょっとだけやります…!好きなトレーニングはスクワットです!」と言うくらいの準備はしていたし、いざとなったら持ち前の傾聴力を発揮して筋肉トークを聴き続ける覚悟もあった。だがこれは完全なる杞憂だった。

それから、わたしたちは3時間、途切れることなく話し続けた。

驚くべきことに、Testosterone氏は本当に博識なのだ。精神医学、心理学、宗教、経済、哲学、あらゆる分野の書籍を読み、引用しながら現代社会の課題、メンタルヘルスについての問題意識、社会における弱者と強者、宗教の未来、あらゆるテーマについて持論を持っている。メディア発信についての話をしていたかと思えば「それはフロムの『自由からの逃走』の構造に似ている」などとおっしゃるので、ついていくのに必死である。

一方で、筋トレへの信頼、断定口調で繰り出されるユーモアは、twitterとなんら変わりがない。「だって、おもしろい方が幸せじゃないですか」「世界をよくしたい」「よくできると信じている」というピュアな言葉には嘘がない。

同時にそれを実現するために、一つ一つの発信には極めて繊細に向き合っている。「この言葉を使うとこんな印象を与えるから、こんな風にしてます。」「この言葉で始めると同じ内容でも1000RTで、こっちだと1万RTなんです」などと分析もした上で、最も「届く」最適なメッセージを戦略的に繰り出しているのだ。

「このまま日本取れると思うんですよね」という言葉も聞いた。まさしく冒頭の「世界…征服してみるか…」のノリで、氏はまず日本を征服してみようとしていた。

氏は、全ての複雑なことを極めて複雑に捉えた上で、筋トレというシンプルなメッセージを有用なツールとして活用している人なのだ、と悟った。

なぜ、氏は連絡をくれたのか

そんな中で出たのが、フォロワーさんから時折送られてくるDMの話だった。氏に日々届くメッセージの中には、「悩んでいる」「アドバイスが欲しい」「苦しい」などと書かれている。誠実に対応しているものの、当然ながら彼自身は専門家ではないしそれらに全て対応することはできない。

だから弊社(cotree社)の提供するオンラインカウンセリングサービスを、フォロワーさんに紹介させてもらいたい。PRとしてのフィーは自分は一切いらない。その代わり、フォロワーさんが気軽に使えるよう、優待をして欲しい、というのだ。

100万人フォロワーさんがいるインフルエンサー氏が、こんなことを…?

それどころか、こんなことをおっしゃった。

むしろ、カウンセリングにお金を出せないであろう子たちのカウンセリング料を私が払ってあげて、どっかのタイミングでcotreeさんから私にご請求いただくみたいな形を考えています。

え…フォロワーさんのカウンセリング料金払ってあげようとしてるの…?

もしかして…めちゃいい人なの…?こんないい人いるの…?

弊社は、オンラインカウンセリングサービスを広く届けることを目指していているために他サービスよりも安価に届けようと努力しており、正直なところそれほど儲かっているわけではなく、広告費用をそれほどかけられるわけではない。ただ今回、Testosterone氏の強い意向と、弊社の予算担当者の綱引きの末、このようなキャンペーンが実現することとなった。

カウンセリングは、安心して自身の苦しみを吐き出せる場所であり、カウンセラーと話すことを通じて気づきを得て前に進むことをサポートする専門サービスだ。日本ではまだまだ一般的ではないが、アメリカなどではごく日常的に、マッサージのように気軽に使われるサービスでもある。それを、オンラインを通じていつでもどこでも受けられるのがオンラインカウンセリングだ。まだまだ知名度は低くて、本当に必要な人には届けられていない

今回のTestosterone氏との試みをきっかけに、たくさんの人に「本当に苦しい時には、いつでも、どこからでも、頼ることができる場所」としてのオンラインカウンセリングという場があるということを知ってもらいたいと思う。

おわりに

筋トレとカウンセリング。単純さと複雑さ。身体と言語。鍛錬と安心。対極にあるように思えるこれらのアプローチは、互いに補い合うものでもあり、バランスを取りながらうまく活用することでよりよく生きることが可能になるのではないか。

そういえば、Testosterone氏のシルエットは何かに似てるな、と考えていたら思い当たった。

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『花の慶次』だ…。

「漢」という一文字でそれを表現し、広く一般に定着させた作品といえば、誰がなんと言っても、『花の慶次 ―雲のかなたに―』だろう。
「漢」とは、豪快で、広い器を持つ、真のヒーロー……そんな人物を「漢」と書いて「おとこ」と呼ぶ(*)。

Testosterone氏は、まさに「漢」と呼ぶにふさわしい、新時代のヒーローなのではないか。

筋肉とユーモアと平和を愛するこの人と、オンラインカウンセリングというサービスの存在を知っていただくための取り組みをご一緒できることが、この上ない喜びである。


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