7月9日から、長らく遅滞していた読書の習慣をよみがえらせました。FANBOXに更新している日報にその記録を書き記しているのですが、読み物も漫画もいっしょくたにしています。9日間で35冊読んだようです。体調不良などもありましたが、そこそこですね。

実のところ、私は"読書"が苦手です。ただ、それは私が重度の発達障害を負っているからで、自分にあったやり方での"解読"はするする進むことがわかりました。これは良いニュースです。

悪いニュースもあります。人生は、常に吉報と凶報で揺れ動くものです。「人生万事塞翁が馬」という成句を引くまでもなく、多くの方がこの事実に同意してくださるでしょう。

私は、やはり創作者として恥ずべき病を患っていました。「眼高手低」です。品評だけは一丁前にできる。作品をつくる力はまるで伸びていない。なんと情けないことか。半生を創作に費やしてきたというのに。

というのも、ほぼ意図的に小説分野のまわりを歩いてきて、ついに小川一水さんの『天冥の標』に手を出しました。ツイッター経由で激賞とともにおすすめいただき、第1巻の上下を読みました。

私には、刺さらなかった。

個人の好みではあるでしょう。消費者であれば、それは問題ありません。しかし、創作者たらんとするとき、話が変わります。私にはこのよくつくられた物語を超えられない。その実績もまったくない。

私の感性が、致命的に死んでいるのです。おそらくは。

■自儘と不作為の代償

さて、私はどうにかこうにか、感想を絞り出しました。いつもは140字をいっぱいに使うのですが、なんとも味気ない一言です。

私は自分について、相当な負けず嫌いであると理解しています。とりわけ、テキスト分野では誰の後塵をも拝したくない。

然るに、これまで書き手としてどのような実績をつくってきたか？

ゼロです。ボツ原稿、選考落ち原稿、それだけなら数百万字をものしてきたでしょう。ところが、商業に通用する文章を書けたか？

いいえ。

ただ一言、これだけです。アマチュアがプロの作品を指して、その決定的な良さを見つけられない様は、なんとも情けないものです。

なるほど、私は生来の病を持っていますが、少なくとも良いものは楽しむ度量は持っていました。良いものを見つける目も。だから、小説を書き始めたのです。超えたいと思い、超えられると思ったから。

ところが、今や「超えられる」だけがぶくぶくと太り、ほかの皆は死に絶えてしまった。下衆な老い方をしたものです。そんな自分に腹が立たないわけがありません。このような大人になったと、過去の私が知ったら嘆くでしょう。

解決策はね、やっぱり書くしかないですよね。

もう何度書こうと試みては崩れ落ちたことか。「他愛もない商業小説の慣習」に振り回されて、嫌になったのは事実です。それがトラウマのように響いているのかも。

ただ、書かない言い訳に過ぎません。絵に描いた餅は食えないし、アイディアにとどまっている小説は読めない。まして、実際に世に出ている傑作とは比べようもない。

死んだ感性を取り戻すため、小説を書きたい。それはまた、生きるためでもある。

そんな気持ちが芽生え、いよいよ読書習慣の本丸である小説の多読をせねばという気持ちになっています。読まずに作家になった人もいるでしょう。しかし、私が好きな作家の皆さんは、なんでも読んでいる。小説も、学術書も、広く。

私は古典もほとんど読んでいないし、最近の小説にいたってはほぼ全滅です。まったくまったく、畑がどんなものかも知らずに、畑を耕そうとしている。

なんで、こうなっちまったんだろう？

そう思わずにはいられませんが、それを自分の不始末、努力の欠如、怠惰の結実以外に求め始めたら、完全に人間としてダメになっちまうでしょう。

長々と書きましたが、自分の弱った脳髄を今度こそ叩き起こさないと、完全に"息をしているだけの肉塊"になると、強く感じました。これは渋沢栄一の『論語と算盤』にあった比喩ですが、今の自分にはぴったりです。病気の由来とはいえ、肥満さえ解消できていませんからね。

粗雑に生きてきました。丁寧に生き直しましょう。そう思った、2023年7月18日です。7月9日にそう思って読書を再開したので、7月27日はまた何かを思うでしょう。

なんといっても、私は、私が複数の病を持って生まれてきて、その境遇に飲み込まれて死んでいくのは、我慢ならんのです。少しだけ、頑張ってみますね。

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