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2022ニューイヤー駅伝 観戦記

あけましておめでとうございます。2022年は、雌伏から飛躍を目指します。全ての方々に素晴らしい日々が訪れる年となりますよう祈るとともに、私自身にとっても、実りの多い充実した一年にしていきたいと思います。

さて、新年三日間は例年通り、駅伝観戦三昧で駅伝観戦記に取り組みます。初日の今日は、実業団No.1を決める『第66回全日本実業団対抗駅伝競走大会』、通称ニューイヤー駅伝が、群馬県庁をスタート・ゴールとする7区間100㎞を37チームで争われました。大会関係者の尽力と献身に感謝です。

私の駅伝観戦歴も40年に達しました。全日本実業団駅伝が「ニューイヤー駅伝」として元日開催になったのは1988年以降です。私が駅伝観戦を始めた頃の全日本実業団駅伝は、12月に伊勢・志摩で開催されていました。

最近「実業団も大学のように三大駅伝制にしてみては?」というタイトルの記事を目にしましたが、伊勢・志摩開催の頃の全日本実業団駅伝は、より歴史の古い朝日駅伝(福岡)、中国駅伝(広島)と共に『三大駅伝の一角』という位置付けでした。

大学駅伝も出雲・全日本・箱根を『三大駅伝』と呼ぶようになったのは、ごく最近のことで、もともと3月に行われていた全日本大学駅伝には、順天堂大学や早稲田大学など関東の有力校は不出場でした。時代は流れます。

さて、前段はさておき、今年のニューイヤー駅伝は、前年の優勝チームで、日本代表クラスの揃う選手層の厚さを誇る富士通、王座奪還を目指す名門の旭化成、経験豊富な選手が揃うトヨタ自動車らが優勝候補とみられていました。晴天ながら、風が強く、選手たちを悩ませそうです

1区 12.3㎞ 群馬県庁〜高崎市役所

1区には、今季好調でトラックレースで好記録を持つ有力選手が多数エントリーされました。例年スタート直後から牽制がはじまり、大集団を形成してのスローペースで進む展開が多いものの、今年は旭化成・茂木選手が積極的に集団を牽引し、好ペースで進みました。

距離を追うごとに集団から零れ落ちる選手がぽつぽつ出始め、徐々に縦長の隊列になりました。長身のYKK・森山選手が好調で、残り1㎞過ぎで集団から抜け出します。そのまま区間賞を奪うかと思われましたが、猛追してきた1500mランナーの九電工・舟津選手のスプリント力が勝り、区間賞を獲得しました。舟津選手は、昨年同区で28位に沈んだ汚名挽回となりました。2位に森山選手と連覇を狙う富士通・松枝選手が同タイムの3位に続き、レースを引っ張った茂木選手も首位から4秒差の4位にまとめました。

区間賞 舟津彰馬(九電工)34分41秒

2区 8.3㎞ 高崎市役所〜前橋市公田町

コース最短の2区は、外国籍ランナーの起用が唯一認められているインターナショナル区間です。スピード自慢の選手達によるゴボウ抜きが毎年繰り広げられます。

首位を奪った九電工の二区は、昨年区間新記録を樹立したコエチ選手なのでこのまま独走になるかと思われたものの、僅差でタスキを受けた2位以下のチームの選手も離れずについてきます。コエチ選手は昨年の勢いがなく、三区中継では9位に転落する誤算の走りとなってしまいました。

10位でタスキを受けたSUBARUのキプランガット選手がひときわ好調で、区間賞の快走で首位を奪取しました。2位にはYKKのコシンベイ選手が16秒差で続き、3位には12人抜きのトヨタ紡織・ケイタニー選手が続きました。

一区で3位の好位置につけた連覇を狙う富士通は、ロキア選手が振るわず、首位から1分13秒差の20位に転落する誤算となりました。旭化成もモゲ二選手が区間15位で、首位から45秒差の10位へとポジションを落としました。

注目された、5000m日本選手権優勝の遠藤選手(住友電工)、1500m日本記録保持者の河村選手(トーエネック)は、23分1秒の同タイムで区間18位でした。

区間賞 B.キプランガット(SUBARU)22分3秒

3区 13.6㎞ 前橋市公田町〜伊勢崎市役所

強い追い風に後押しされるスピード区間。首位を走るSUBARUのキャプテン・梶谷選手を、トヨタ紡織の10000m27分台ランナー大池選手、5位でタスキを受けた三菱重工の新鋭・林田選手が追いつきます。さらにその後方からは、東京五輪10000m代表の旭化成・相澤選手が、10㎞通過が26分台という脅威的なペースで激しく追い上げてきます。

林田選手が好調で、大池選手、梶谷選手を振り切ると、四区中継では、2位に上がってきた旭化成に16秒差をつけて首位を奪取しました。相澤選手は、8人抜きで従来の区間記録を30秒も上回る区間新記録をマークしました。区間7位までの選手が、区間記録を更新する快走を見せました。

区間賞 相澤晃(旭化成)37分9秒=区間新

4区 22.4㎞ 伊勢崎市役所〜太田市役所

エースが健脚を競う最長区間の4区。今年も豪華な顔触れが揃っています。

先頭の三菱重工は、区間記録保持者の井上選手が、冷静な走りで、追ってくる2位の旭化成・市田選手をじわじわと引き離していきます。旭化成四連覇時代の功労者で、毎年のように快走を続けてきた市田選手ですが今年はペースが上がらず、五区中継では8位まで順位を落としてしまいました。

その後方では、富士通の中村選手、Hondaの伊藤選手、GMOインターネットグループの吉田選手、SGホールディングスの佐藤選手、トーエネックの河合選手ら、日本を代表するトップランナーが集団走で前を追い、さらにその後方からは、進境著しい安川電機の古賀選手が区間記録を上回るペースでぐんぐん上がってきます。(区間新記録で区間2位 29→14位へ)

井上選手は、高林交差点を左折してからの強い向い風を持ち堪え、区間3位の走りでがっちり首位をキープしました。2位には、マラソンで好タイムを連発している黒崎播磨・細谷選手が区間新記録をマークして飛び込んできました。3位は清水選手が好走したSUBARU、4位はトヨタ自動車の西山選手、5位には、向かい風になってから集団を抜け出した伊藤選手の力走でHondaが上がってきました。

富士通は、東京五輪マラソン代表の中村選手が、後半精彩を欠いて区間26位に沈み、首位から3分10秒差となってしまいました。

区間賞 細谷恭平(黒崎播磨)1時間3分43秒=区間新

5区 15.8㎞ 太田市役所〜桐生市役所

5区は向かい風と上り基調に悩まされる難コースです。

2位黒崎播磨に39秒差の首位でタスキを受けた、三菱重工のマラソンランナー、山下選手は、向い風に苦しめられながらも、堅実な走りを展開しました。六区中継では、2位に上がったSUBARU・照井選手に21秒差まで詰め寄られたものの、首位をキープしました。

注目の東京五輪マラソン代表、トヨタ自動車・服部勇馬選手は前半積極的な走りで、一時は2位まで上がったものの中盤以降失速し、Honda・青木選手(区間2位、3位)、旭化成・小野選手(区間賞、 5位)にかわされ、6位に転落してしまいました。

この時点で、首位の三菱重工から1分差以内で続く、SUBARU、Honda、黒崎播磨、旭化成に優勝争いは絞られてきました。富士通は、期待されたマラソン日本記録保持者の鈴木選手が区間10位に終わり、首位とは3分28秒差と絶望的な差となってしまいました。

区間賞 小野知大(旭化成)47分46秒

6区 12.1㎞ 桐生市役所〜伊勢崎市西久保町

勝負は後半。戦略の6区へ。距離は短いものの、アップダウンもあり、向かい風をまともに受け、コーナーが多くてペースが掴み辛い難コースだと言われています。過去9年間、6区の区間賞を獲得したチームが総合優勝を飾っています。

首位の三菱重工は。立命館大卒のルーキー、吉岡選手を起用。3位でタスキを受けたHondaの中山選手が、2位のSUBARU・小山選手をかわして迫ってきます。吉岡選手は、追いつかれた後、しばらく粘ったものの、徐々に引き離されてしまい、七区中継では小山選手にもかわされ、3位に落ちました。

中山選手は、区間賞を獲得する力走で、2位に16秒差をつけて首位に立ちました。実績のある旭化成・鎧坂選手が、区間3位と力走したものの、首位とは32秒差の4位です。

区間賞 中山顕(HONDA)36分27秒

7区 15.5㎞ 伊勢崎市西久保町〜群馬県庁

向かい風が吹き付ける最終区間。首位のHondaは、マラソンで2時間6分台のベスト記録を持つ土方選手が走ります。2位のSUBARUは口町選手、3位の三菱重工は定方選手が起用されています。4位の旭化成は大六野選手、6位のトヨタ自動車は大石選手のチームキャプテンが起用されています。

前半は口町選手が、独特のダイナミックなフォームで土方選手を追い上げ、一時は6秒差まで迫りました。しかしその接近に気付いてリズムを切り替えた土方選手はペースを上げ、逆にそこから差を開きはじめました。ゴールでは1分5秒まで差を広げて初優勝のゴールに飛び込みました。

2位には大健闘のSUBARUが入り、大六野選手が、定方選手とのスパート合戦を制した旭化成が3位に入りました。トヨタ自動車にかわされたものの、6位に入った黒崎播磨は55年振りの入賞です。

区間賞 土方英和(Honda)46分36秒

チーム成績

① Honda 4時間51分04秒
② SUBARU 4時間52分09秒
③ 旭化成 4時間52分09秒
④ 三菱重工 4時間52分49秒
⑤ トヨタ自動車 4時間54分08秒
⑥ 黒崎播磨 4時間54分50秒
⑦ SGホールディングスグループ 4時間54分52秒
⑧ トヨタ自動車九州 4時間54分53秒

勝手に寸評

Hondaが創部51年で初優勝を飾りました。大志田秀次選手(現・東京国際大駅伝部監督)藤原正和選手(現・中央大学陸上競技部監督)、設楽悠太選手(現Honda)ら、日本有数の名選手を多数輩出してきたHondaが、これまで全日本実業団駅伝で優勝がなかったのは意外でした。

平均年齢23歳以下という若いメンバーで挑んだ今大会、一区で、ルーキーの川瀬選手が19秒差の13位、二区のカベサ選手が区間24位で23位と出遅れてしまったものの、三区の小山選手(23→14)、四区の伊藤選手(14→5)、五区の青木選手(5→3)が着実に追い上げ、六区の中山選手の逆転へと結び付けました。

タレント揃いの富士通は、一区の松枝選手が首位と3秒差の3位と好位置で滑り出したものの、二区のインターナショナル区間でロキア選手が20位にまで順位を下げてしまい、四区の中村選手が思わぬ不振(区間26位)で大きく引き離されてしまい、最終的には12位と予想外の結果となりました。大会前に優勝旗を紛失する不祥事が発覚し、汚名返上を狙っていただけに不本意な結果だろうと思います。

旭化成は、相澤選手、小野選手が区間賞を獲得したものの、全体的に勢いを欠くレースになってしまいました。地力のあるトヨタ自動車も、服部選手の不調は誤算でした。九電工の舟津選手、黒崎播磨の細谷選手、安川電機の古賀選手などは、地力の高さが再評価されるレースになった気がします。

昨年も同じ感想を残しているのですが、レース途中でのCM中断がかなり多いです。協賛スポンサーが多いとこうなってしまうのは致し方ないのかもしれません。公式YouTubeチャンネルでは、解説はないものの、各中継車からの映像が観られるので、純粋にレースの推移を楽しみたい方は、こちらで観戦した方が良いかもしれません。

過去の観戦記はこちらをご覧ください。


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