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1人当たり売上高から考えられることとは?

以前に1人当たり売上高について記事にしたことがあります。

この時は生産性に関する指標であることと、
適正な従業員数を考えるための指標とする、
ということを私見としてしたためました。

この1人当たり売上高について、
また別の観点から改めて考えてみたいと思います。

1人当たり売上高を上げるために

1人当たり売上高は、売上÷従業員数で求められる指標です。
よってシンプルにその数値を上げようとするならば、
1.従業員数の増加以上に売上高を伸ばす、
2.売上は維持か減少したとしても、それ以上に従業員数を減らす
ことによって実現できます。

しかし1の選択肢をとった場合に
売上高が伸びたことで業務量が増加したら、
同じ従業員数では業務が終わらない。
よって従業員の労働時間を増やさざるを得ず、
結果として従業員の負荷が増える。
という事態も想定できてしまいます。

緊急事態の一時しのぎであれば仕方のないところではありますが、
昨今の働き方改革の方向性からは逆行してしまう流れでもあります。

AIやDXといった最新テクノロジーを導入して業務の効率化を図ることで、
生産性の向上、即ち一人当たり売上高を高めるといった施策が求められてくるのだと思います。

またこうしたテクノロジーの活用で人員を減らすことで
更なる一人当たり売上高を増加させるといった取り組みも当然考えられます。
むしろこの流れが最近のトレンドかもしれません。

しかしながら、1人当たり売上高とはそもそも売上に関する指標です。
とするならば、
人員やテクノロジーよりもまずシンプルに売上を伸ばすことから
考えなければならないのでは、とも思うわけです。

売上を伸ばすということは、
1.商品単価を上げる(値上げ)
2.客単価を上げる(1回当たりの購入点数を上げる)
3.顧客単価を上げる(1人当たりの購入単価を増やす)
4.顧客数を増やす(購入機会を増やす)
といったような施策をまずは考えなければなりません。

そしてこれらの施策を考えるためには、なによりも顧客の価値とは何かを考える必要性があります。

顧客の価値を考えるために

顧客のニーズ、またはウォンツを考えるということは
顧客を知る、ということです。
場合によっては顧客本人以上に顧客のことを知っている、
という状況まで考えることでもあります。

顧客視点という言葉がありますが、まさにこういう取組みを表した言葉だと思います。
マーケティングの大家、コトラー教授は
「マーケティングとは、顧客の価値と満足を理解し、創造し、伝え、提供すること」
と述べています。
マーケティングを考える、とした観点からはやはり「価値を創造」することをまず考えることだと私は考えますし、通販人としては「価値を伝える」にもフォーカスしたいと思うのです。

今はデータサイエンスも進化しており、顧客の価値をテクノロジーを用いて分析し解明する技術が大きく発展しています。
ビッグデータのような膨大なデータを解析するためには当然テクノロジーは欠かせません。

しかし分析するのは過去の販売データだけではありません。
人のニーズやウォンツ、
つまり心理であり、人の内面も考えることが重要です。
そうなってくると、やはりまずは人間が考えることが大事なのではとも思うのです。

「こういうニーズにはこうした心理があるのでは?」
「こういうウォンツはこうした背景があるのでは?」
という仮説を立てるためには
まずは人間が自ら立てて
その仮説を立証するデータをテクノロジーを用いてはじき出す。
そのデータがターゲットの分析として適切であるかは
改めて人間が判断する。
という役割分担のイメージといったらいいでしょうか。

こうした考え方からすれば、
人間は付加価値の創造力を高め、
顧客へ伝える力を伸ばしていく必要性が生じます。
この時に人を減らして取り組むというのは果たして得策なのかと
私は考えてしまいます。
むしろ人材を増やし、多くの仮説を立てて検証し、実践する。
成功失敗含めてデータを蓄積し、人材の経験値を高めていく。
それがまた、新たな付加価値の創造に繋がっていくというサイクルこそが
望ましいのではないかと考えてしまう。

つまり1人当たり売上高を増やすために従業員を減らすというのは
手法としては悪手ではないか、ということです。
今後のテクノロジーの発達によって変わり得るかもしれませんが、
少なくとも今は、そしてもうしばらくは、
人間が考えていくことが重要であり、
1人当たり売上高を上げようと思ったら、
人を採用し、人材育成に取組み、
創造する付加価値の量を増やしていくことが王道ではないのか、
と私は考えているわけです。

結果の質とは挑戦した量に相関するという考え方もあります。
量を確保するためには一定の人材の数が必要です。

また成功には「運」も必要です。
「運」のある人、「運」が向いてきた人というのは現実にはコントロールできませんので、
とするならば、一定の人数がいた方が、「運」のある人、「運気が高い」状態の人がいる可能性も高くなります。

人を減らしたら、この逆が起こるわけですから、それを考えると実は怖いことでもあるのです。

1人当たり売上高を考える時の、
何かの参考(もちろん反面教師としても)になれば幸いです。


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