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オタクは「最強の価値共創者」らしい

※読んでいただき、ありがとうございます!圧倒的感謝…

今回の「Tribal Professional Academy(TPA)」のテーマは「サービス・ドミナント・ロジック」です。略して「S-Dロジック」。

ドミナントロジックとは、「支配的論理」のことで、わかりやすく言うと、それが当たり前と認識している状態や、世界観、と説明されています。
ドミナントってギターのコード用語でも使われてたりしますが、意味は違いますね。

僕は企業のマーケティング施策としての共創やコミュニティの仕事をして約6年なのですが、初期の頃は「コミュニティやってて意味あるんだろうか?」みたいなジレンマに苛まれることが多々ありまして、その時にこの「サービス・ドミナント・ロジック」という考え方に出会い、壁を乗り越えられた思い出があります。

その時、この2冊の本をゴリゴリ読みまくってました。
非常に難読なんですが、いまだにこの時に得た考え方は、自分の大きな基盤となっています。

これ、コミュニティマネージャーの業務や、新世代のマーケティングを考える上で、必須の考え方だと思います。

グッズ・ドミナント・ロジック

経済活動の中心がモノの売買によって成されていた時代、価値は「モノ」にあり、お金を払って「モノ」を買うことで価値を消費する。

これがモノ中心の支配的論理、グッズ・ドミナント・ロジックといいます。

「モノからコトへ」という言葉を聞かれたことがある方も多いと思いますが、経済活動の中心が、モノの購買からサービスにお金を払う時代、前回の記事の「サービス・マーケティング」でいう「顧客はサービスを買っている」という状況にシフトしたとき、サービス中心の支配的論理、サービス・ドミナント・ロジックが提唱されたということになります。


サービスとは?

「S-Dロジック」の勉強する時に最も難解な部分が、「サービス」という言葉をどう解釈するか、です。

「サービス」でググると、

個人(客・来訪者)や社会や家族に対する、奉仕的な活動、また、職務としての役務提供。

と出てきます。
しかし「S-Dロジック」におけるサービスとは

他者あるいは自分の便益のために自らのスキルと知識を活用すること

と定義されており、
平たくいうと「知識とスキル」と解釈するのが一番シンプルです。

例をいうと、ブルーボトルに代表されるサードウェーブコーヒーのサービス価値は、

どんな豆を、誰が、どのように(ハンドドリップ)で淹れる「品質」に伴う「知識をスキル」にお金を払っている、

と解釈すると理解が進むと思います。


G-Dロジックが「価値はモノにある」と考えるなら、S-Dロジックは「モノには、知識とスキルが適応されて初めて価値が生まれる」と考えます。


S-Dロジックと価値共創

S-Dロジックを理解するために欠かせない要素のひとつに「価値共創」の考え方があります。

「価値とは共創されるものである」ということなのですが、これがどういうことか。「車」を例に考えていきましょう。

車自体の「モノとしての価値」はお金にすると数百万円ですが、車が不要な人にとっては、それだけのお金を払う価値は無いですよね?

車という物体は、価値を構成する要素の一つであり、車に関する知識とスキル(運転免許、運転技術、構造的知識、楽しみ方、遊び方など)が作用しなければ、価値は生まれない、ということは、「車は運転技術や楽しみ方があって初めて価値が生まれる」、つまり「価値はモノと使用者が共創する」。

これこそが「価値共創」の考え方です。

消費者の存在は、サービスにおいてはモノと同等の価値があるとみなされ、「消費」者ではなく「価値共創」者と定義されます。

つまり、モノを提供するメーカー企業と消費者に上下関係は無く、モノの価値の一部を担い協働する同列の存在であるということです。

この感覚を持てるかどうかが、S-Dロジックをちゃんと理解できるかどうかの分岐点となります。


人によって違う「文脈価値」

上記で「価値は共創される」とありますが、その価値は一定ではありません。

例えば車でいうと、通勤の足として利用している人における車の価値と、こだわって改造して家族のように大切にしている人の車の価値は全く違います。
このような使用・体験を経て得た思い出や経験がモノに加わって生まれる価値を「文脈価値」といい、人によってその価値は違います。

この文脈価値こそが、「モノからコトへ」のコト消費の根幹にあたる部分です。

文脈価値はユーザーによってのみ生まれ「価値共創プラットフォーム」によって発掘され、育ちます。そのプラットフォームはネットのコミュニティであり、「2ちゃんねる」「ニコニコ動画」、近年では「Twitterのトレンド」などで生み出されています。

僕の大好きなオタク文化はこの文脈価値の塊で、ひとつのコンテンツをキーにして、ファンによって様々な「文脈価値」が創造されています。


「初音ミク」を例に説明します。

初音ミクはもともと、ヤマハが開発した音声合成システム「VOCALOID」の一つで、歌声を合成することのできるソフトウェア音源でした。

その製品が、単なる音声合成ではなく「キャラクターボーカルシリーズ」として歌声ごとキャラが設定されビジュアライズされたことで、DTMを趣味とし「曲は作れれどボーカルが入れれない」ボカロPたちを中心に人気となりました。
音声合成自体は初音ミク以前にもあったので、ここまでは古来からあったクリエイターさんの活動なのですが、そのキャラクター性に加え「ニコニコ動画」というプラットフォームがあったことで、その価値は大きく飛躍します。


ニコニコ動画という曲を披露する「ステージ」ができたことで、ボカロPたちはこぞって曲を作り、ニコニコ動画に曲をアップします。
今度はその曲にファンがつき、曲のイメージに合ったイラストを書く「絵師」や、その曲を「歌ってみた」「踊ってみた」「弾いてみた」など、
他ジャンルのクリエイターさんたちによって二次創作され「ボカロ文化圏」が作られ、グッズやフィギュア、カラオケ、マジカルミライという世界規模の音楽ライブが開催されるなど、初音ミクが中心となって「文脈価値」が拡大していきました。

初音ミクのライブ、マジカルミライは6年間で16万人を動員、ボカロ市場は、2017年に100億円市場に成長しました。

大洗(ガールズアンドパンツァー)沼津(ラブライブサンシャイン)といった「聖地」も、ある意味リアル価値共創の場としてファンを集め、国際的な人気を生み、コンテンツをグロースさせ、実質的な経済効果を生み出しています。

このように、共創された価値はそれ単体では「宝石の原石」や「原油」のようなものであまり価値を生みませんが、プラットフォーム(共創の場)があることで、ユーザーたちがその価値を成長させていきます。

このエネルギーの源泉が、ファンによる「熱狂的な想い」なのです。


まとめ

・モノには、知識とスキルが適応されて初めて価値が生まれる
・価値は価値共創者と共創される
・その価値は文脈価値として人によって違う
・文脈価値は共創プラットフォームでファンの熱狂によって成長する

「ユーザーの声を聞く」というマーケティング手法は、このS-Dロジックの概念を正しく理解しているかどうかで、その質を大きく変えます。

僕がオタクコンテンツの真っ只中で、ライブいったりコミケ出たりグッズ買ったりしながら日々楽しんでいるのも、単に「好き」ということもありますが、マーケッターとして価値共創ムーブメントのど真ん中に身を置き勉強しているという理由もあったりします。

※ちなみにサービス・ドミナント・ロジックの本でも「オタクは最強の価値共創者」としてマジメに紹介されています。

僕一人ができることは限られていますが、仕事を通じて真の価値共創社会を作っていけたら良いな、と日々考えてちゃったりしてます。がんばろう…

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