何も変わっていないけれど、明日もなんとか生きていける
人間の悩みというのはほとんどすべて人間関係の悩みである、というようなことを、アドラー先生が言っていたような気がするけれど、たしかにそうだよなあと思うことがある。
そして、その人間の悩みのほとんどすべてを占める人間関係の悩みというのは、ほとんどの場合、解決することはない。
上司が嫌なやつだったとして、その上司をいいやつにすることなんてできない。
隣の席の先輩の声の周波数が、どうしても耐えられないとして、その先輩の声の周波数を変えることなんてできない。
犬猿の仲の先輩同士の言い争いを見ているだけで不快だったとして、自分がその先輩たちの間を取り持って、仲睦まじくさせることなんてできない。
カウンセリングで聞く悩みも、そんな、人間関係の悩みがほとんどを占めているように思う。
話を聞いていると、カウンセラーとしてもなんとかしてあげたいという気持ちが湧き起こることもあって、まだ経験が浅いときなんかには偉そうに助言をしちゃったりしたこともあったけれど、それで上手くいった試しなんてない。
基本的に、他者を変えることなんてできない。
それゆえに、人間関係の悩みというのは、ほとんどの場合、解決することはないのである。
他者を変えられないという点においては、カウンセラーも同じで。
カウンセラーは超人ではないから。
一般の人間だから。
カウンセラーだけが、他者を変える能力を持つなんて、そんなことはありえない。
洗脳したり、他者をコントロールしたりして、不自然な形で他者を変えることはできなくはないのかもしれない。
でもそれは、クライエントの幸せとか、自己実現みたいなところからは最も遠くかけ離れたものであるから、そんなのは論外である。
だとすると、カウンセラーにできることは、クライエントの痛みに共感して、クライエントが何に傷ついているかを理解して、勇気づけることであろうと思う。
「自分のことを理解してくれる人が目の前にいる」ということをクライエントが感じ、今ここの場で充実感を感じ、明日も生きていけるという希望が持てること。
嫌味な上司とも、
声の周波数がバグってる先輩とも、
喧嘩ばかりしてる先輩たちとも、
変わらず明日顔を合わせる。
環境は何も変わっていないのだけれど、
それでもなんとか明日もやれそうだという、
そういうエネルギーを与えるのが、カウンセリングだと思う。
元気があれば、なんでもできる。
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