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The White Lounge #3

さていよいよ開演の時間がやってきた。
すでに期待値はマックスだ。
会場右上の電子時計が消える。
もちろん演出だ。
ステージ後方で白い服の人が数人横切るのが見える。
そして
二人の男性がラウンジ左サイドの扉から入ってくる。
彼等も仮面を着けているが、
間違いない、
藤澤涼架(key)と若井滉斗(gt)である。
会場内にどよめきと拍手が起こる。
なんという登場なんだ。
一瞬だれか分からないような登場。
サポートメンバーではない。
Mrs.GREEN APPLEの二人なのにだ。
ゆったりと動く二人は、
左側にキーボードがあり、
その後方に涼ちゃんが腰掛け、
右に5mほど離れた場所にひろぱがギターを構える。



そして、
誘導灯を含むホール内のあらゆる光が消える。
BGMも消え、
会場内は静寂に包まれる。
ラウンジ中央にある扉を開く音と共に、
白いスーツ・白い中折れ帽を身に纏い、
白いトランクケースを持った男性が、
外の斜光を浴びながらラウンジ内へ足を踏み入れる。
大森元貴(Vo)の登場である。
そこで大きな拍手が湧く。
そして1曲目が始まった。
会場内がどよめく。
私の隣席の若い男性は思わず「えっ?」と声を漏らす。
声こそ出さなかったがわたしも隣に同じ。
この曲、
知らない。
まさかの新曲?
いや、
それにしてはMrs.の曲らしくない。
それはまるで「序曲」。
これから始まるステージを表すと思われる曲を、
もっくんはステージ上を動き回りながら踊りながら声高らかに歌う姿があった。



ストーリー仕立てに始まった「Folktail」。
昔話という設定なのだろうか。
残念ながら細かい演出は覚えていないのだが、
正直に言おう。
涙が溢れてしまった。
何に感情が動いたのか。
曲?
いや、
もちろんそれもあるけれど、
何より見たかった姿が、
声が、
今目の前にいるという事実が、
とても嬉しかった。
曲が終わり、
執務室に置かれたタイプライターで手紙を書く。
離れた恋人への手紙のようだ。
言葉を心で読み上げながら入る曲は「君を知らない」。
なんと!!
まさか生でこの曲を聞けるとは!!
すでに嬉しさでいっぱいだった。
恋人を思いながらも、
今ここにいないという寂しさを表現されていた。
あの頃を振り返り懐かしむ。
二人でダンスを楽しんでいたようだ。
また二人で踊りたいと願い、
アカペラで始まる「ダンスホール」。
アカペラだと!?
そんなしっとり謳うとは…
出だしをアカペラで願いを込めて歌い上げると、
演奏が始まる。
すると
サービスマンに扮した涼ちゃんとひろぱが登場。
もっくんの座る席の前にテーブルクロスを広げワインを注ぐ。
ワゴンに載せた料理の提供をしようとする。
テーブルの上に立ち踊るもっくん。
その様子を
困ったように演技する涼ちゃん・ひろぱ。
次第に二人も一緒に踊りだす。
思わずクスッと笑えるシーンだった。
そしてもっくんは外へ出掛け、
雷のなる雨降る中苛立つ様子で戻って来る。
赤いライトに照らされ、
外の荒天と相まって激しい感情が表れる。
「ツキマシテハ」。
おそらく酒を浴びるように飲み、
暴れながら歌うその姿がとても印象的だ。
誰かの言葉に傷付いたのか、
自分の何気ない言葉で相手を傷つけたのか。
ここで後ろの窓にモザイクがかかり、
ブラウン管テレビの電源を落とすようにプツンと暗くなる。


再び明るくなった時、
もっくんは舞台右上にあるテーブル席へ移動。
彼は眼鏡を掛け穏やかな表情をしている。
机に置かれたラジヲのスイッチを入れる。
流れる曲は「They are」。
コーヒーを2つカップに入れて現れた恋人。
外の穏やかな日差しを浴びながら、
二人でコーヒーを飲む。
ミルクを切らしていて、
苦手な苦いコーヒーを飲む彼女に、
『準備しておけばよかったね』と言葉をかける。
その後お喋りをする彼女の話半分に思いを巡らす。「Coffee」
恋人とのその先の未来を考える。
あなたは自分の一部であって、
自分もあなたの一部で有りたいと願う。
そして最愛の人へのプロポーズ。
喜ぶ彼女。
受け入れてくれたことを喜ぶもっくんは、「PARTY」を開く。
自分が死ぬまで寄り添って生きると決意する。
人生に訪れるだろう出会いを、
たくさんの扉に擬え、
出会いを積み重ねていくシーン。
1列に重なり並ぶ扉を次々に開け進む演出が印象的だった。
そして電話をかける。
誰に掛けたんだろうか…
「ニュー・マイ・ノーマル」
立ち止まることなく、
周りの変化や自分の変化を楽しんで生きていきたい。
そんな決意表明を誰かに伝えたのかもしれない。
そしてステージ全体にモザイクがかかり、
プツンとテレビの電源が落ちる。


ここで15分の休憩が入る。
またしても隣の男性の「えっ?」と漏れる声。
わかる。
わかるよ。
同じくビックリした。
時計を見るとスタートから1時間が経っていた。
ここまで披露された8曲。
その間もっくんはずっと歌い踊っている。
相当しんどいはずである。
ライブとしては驚きはあったが、
休憩は妥当だろう。
だってこれはミュージカルなのだ。
そうミュージカルなのだ。


休憩中、
隣の男性二人の声に耳を傾けるキモいおばさん。
『おれCoffee聞けただけでもう満足だ』
『あれだけ踊って歌ってるってすごくない?』
『ってかセトリのネタバレしても意味ないよね』
『みないと意味がわからないよね』
おばさんは心の中で(それな~)と同意。


#4に続きます。
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。

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