穴を掘れ

小さなころに読み聞かされた物語は今でも印象に残っている。
その中でも「花咲爺さん」と「杜子春」。

どちらにも共通するのは何の努力もしないまま他力本願で一攫千金を得るというものだ。貧乏人の子にとっては危険思想を植えるけらる恰好の材料でしかなった。

僕は前述の作品の中でも一番悪いところを悪いように受け取ったまま育っていった。ようするに、とりあえず誰かがなんか知らせてくれて穴を掘れば金銀財宝がザックザクに近しいことがいつか起こるんだろうと考えていた。実にバカだ。
高校生にもなれば、パチンコにハマり散財。それでも夕方になれば洛陽の門の影のところを掘れば金銀財宝が…もしくはそれに近い何かがきっとあるんだろう、だって昔話にもなっているぐらいだから一攫千金という可能性も世の中にはあるのだと。

その後、なんとか軌道修正することができ、お天道様に顔向けできる人生を歩めるようになって久しいのだが、今でも考えてしまう。夕方になると仙人がお告げをくれ、ビル影の端を掘ると…。

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