お洒落デビュー

誰もがうらやむ大都会東京。
いつかは東京に出て一旗挙げたいと思うのが若者の常である。

それは我々品川区民も持っていた感情である。

はぁ!?品川区のクセに上京とかナメんなよ!長淵剛聴いて死にたいぐらい憧れてるんじゃねぇよ!と思うかもしれないが、我々の町から東京の象徴である渋谷、原宿までは狭くて深い川が流れていたのである。決して目黒川の事ではない。

何しろ、品川は栄えている。それなりに都会だ。ゆえに電車に乗ることなく大半のものが手に入ってしまう。少し背伸びしてお洒落する奴はプリモ大森のハゴロモか大井町のマルイに行けば事足りてしまう。

そんなわけで行動範囲の狭い中学生までは憧れのお洒落タウン渋谷、原宿まで足を伸ばす必要が無い、というか日本中からお洒落な奴が集まる異次元であり気軽に”渋谷行こうよ”なんて口に出せたものではない。

嵐の初主演映画「ピカ☆ンチ」というものを知っているだろうか。
あれこそ我々の当時の思いを体言している映画であり、品川区民と都会の隔たりを垣間見せてくれる稀有な作品である。

最近、地元の小中学が一緒だった友人に20年ぶりぐらいにあったが、やはり当時の都会への思いを同じように語りあった。
「港区の高校に行っちゃったから同級生とのお洒落ギャップに困った」
「初めての買い物は、まずアメ横。いきなり渋谷は危険」
「ダメージジーンズを親に洗われてダメージ部分を縫われた」
などはギャグではない。

月日は流れ、今やファストファッションやネット通販での流通が主流な時代になってしまった。あの頃のドキドキを今の若者は味わう事が出来ないのかと思うとちょっと可哀想である。

当時はまるでロールプレイングゲームのように
「渋谷でTシャツを買う」
「有名ショップに行ってみる」
「アメ横で靴を買う」
「雑誌に載っているアイテムを買う」
など、様々なミッションをクリアしていって、いつの間にかキョドらずに服を買う事が出来るようになっていくのだ。

そんな私も服なんかまっぴら買わなくなったが、年の瀬や年始のセールが目に入ってくると、一生懸命背伸びをしようとしていたあの頃をつい思い出してしまう。

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