【エッセイ】石垣島に住むドラゴン|柔術家/歌手/海人の独り言 |文:渡辺直由@石垣島
新年1発目のお題は
干支の辰すなわち龍=“ドラゴン”ということで
今回は《石垣島のドラゴン=グリーンイグアナ》のお話になります。
【石垣島のドラゴン】
皆さんは石垣島に「グリーンイグアナ」という外来種がいる事はご存知でしょうか。(下記写真は川平ファームさんのご提供です)
南米が原産であり、
最大2メートルにも達する、
まさに現実世界にいるドラゴン、
と呼ぶに相応しいサイズと外観をした怪物であります。
今から約30年前(もっと前かも?)
石垣島の北部で飼育されていた個体数匹が地面に穴を掘り脱走し大繁殖しまして、
現在は数千とも数万とも噂されるくらいまで膨れ上がり
成体になると天敵も殆どいない彼らの根絶はもは不可能ともいえる絶望的な状況です。
【イグアナとの出会い】
私が石垣島でイグアナを初めて見て触ったのは約10年前。
石垣島在住の友人から「環境省からの仕事でイグアナの駆除があるからやらないか」というお話がきまして
生物好きであり、特に爬虫類が大好きな私はすぐに飛び付きました。
現地に到着し調査に合流。
イグアナがあちこちにウヨウヨいるのを想像していたのですが
いざ調査隊に加わってみるとなかなか見つかりません。
1番最初に行った調査は見習いという事もあり短時間だったので
結局その日は10人近い調査員の誰もが1匹も見つけられずに終了。
その次の調査からは正式に調査員になりフルでの出勤になりました。
イグアナの調査は基本的には冬。
そして早朝から行われます。
理由としましては夏場は動きが活発で、どこにいるのかが特定しにくく
動きも素早いので捕獲できる確率が極めて低いからです。
南国の石垣島とはいえ、
冬場の朝からの作業はとても寒いです。
加えて高所作業車を使っての作業は、
樹木などの風を遮るものがない一切ない上空で北風を浴び続けるため、
本当に身体の芯まで冷え冷えになるので、
調査の時期は体調を崩す事も多く、本当に大変な仕事です。
私が初参加した調査の日はなかなかイグアナが見つからず、
午前中の調査は空振りで終了。
午後の調査も終盤に差し掛かりゼロで終了かと思われたその時
私の双眼鏡にイグアナの姿が!
すぐにリーダーの山口さんに場所を伝えると山口さんは私が気付かなかった隣にいるもう一匹のイグアナにも気付きました。
この山口さんは私が参加した頃からダントツで1番のイグアナハンターで、
特に初期に関してはもう99%くらいのイグアナを山口さんのみで見つけていましたので、
山口さん抜きでイグアナの駆除は不可能と言っても過言ではない絶対不可欠な人材です。
それから時は流れ、つい最近になっても山口さんの活躍は変わらずで
その他の4人くらいの主要メンバーで15%くらいのイグアナを探せるようにはなりましたが、残りの75%は山口さんが全て見つけています。
ちなみにイグアナは殆どの場合、
樹木の頂上付近に居るので調査/捕獲には高所作業車が欠かせないのですが
この高所作業車を動かせるのもメンバーでは山口さんだけで
時に高所作業車が入れない場所では木に登るのですが
1番木登りが上手いのも山口さんでした。
山口さんが木登りが上手いのはもちろんなのですが度胸も半端じゃなくて
私は10メートルちょっと登ると、もうそれ以上はよほど登りやすい枝がないとビビって行けないのですが、
山口さんはツルツルでまあまあ細い枝であっても、
20メートルくらいヒョイヒョイ登って行くのです。
落ちたら命は無いか、もしくは後遺症は間違いないですから
あれはちょっと真似できません(汗)
他には博士並に動植物に詳しい高木さんと言う方がいまして
こちらもメンバーには決して欠かせない方です。
何故かと言うとイグアナを遠くから双眼鏡で発見し、そこに車が入れない場合は徒歩で数百メートル〜何キロも歩くのですが、
イグアナがいる樹木やその周りの樹木の種類を判別し位置の割り出しが出来ない事には、目標のイグアナに近づいても正確な位置までは把握出来ないからです。
他にももちろん必要不可欠なメンバーはいるのですが
全員書いてるとメンバー紹介みたいになってしまうので
今回はこれくらいにして
次に進みますm(__)m
■よくある質問■
イグアナの調査/捕獲/駆除をしていて頻繁にされる質問とその答えを書きたいと思います。
□Q
イグアナをどのように捕獲するのか?
□A
見つけ方は前述したので割愛しますが
最後は①銛で突く②ワイヤーを首にひっかけて絞める(生捕り)③落ちてきたところを素手でキャッチ④たまたま地面にいるのを素手で捉える。
※①から確率が高い順になります。
□Q
イグアナは悪さををするの?イグアナが増えるとどんな害があるの?
□A
イグアナは必死に生きてるだけで悪さはしません、でも残念な事に増え過ぎれば私たちの生活には大変な影響が出る事が予想されます。
放っておけば天敵らしい天敵がいない石垣島で間違いなく、
近い将来この島はイグアナで埋め尽くされるでしょう。
プエルトリコというところではイグアナが人口をも越えて繁殖してしまい
空港の滑走路にイグアナが出て発着に影響が出たり
ホテルのプールで泳いでフンをしたり
農作物を荒らされたりと
かなりの被害が出ているようです。
今のところ
石垣島がこうならないようにする根本的な解決策は見つかっていませんが
少しでも早いうちに駆除を始めておく事で被害が出るのを遅らせたり、
殺処分は可哀想ですが、
増えてしまえば将来もっと多くのイグアナを処分しなければならなくなります。
最後になりますが
イグアナ等の外来種の調査や駆除を行っている団体を紹介させて下さい。
《八重山ネイチャーエージェンシー》
と言いまして
1〜2年前まで私が代表をしておりましたが体調不良などで今は二次的なサポートメンバーとしてのみ関わっております。
イグアナに限らず、ザリガニやプレコなど様々な外来種対策を行なっておりますので皆様応援をよろしくお願い致します。
イグアナもそうですが
今それ以上に大問題なのがアメリカザリガニを石垣島に放流している人がいるようで
これは本当に大、大、大問題であります。
世が世なら、また国が違えば
天下の大罪と言っても過言ではありません。
石垣島にアメリカザリガニが溢れたら多くの貴重な在来種が絶滅するでしょう。
そしてそれらは二度と戻って来ません。
これを読んだ方がザリガニを放っている方であれば今すぐにやめてください。
または放っている人を知っていたらすぐに教えてください。
石垣島の貴重な自然を後世に残しましょう。
さて、
今日はこれくらいにしておきます。
次回はもしかしたらイグアナに纏わるテレビ番組の話などもするかも知れません。
この記事を書いた人
渡辺直由(柔術家/歌手/海人)
1975年8月4日生まれ。東京都出身。19歳でメジャーレーベルから歌手デビュー。2004年に盟友早川光由と共にトライフォース柔術を創設。柔術世界選手権や欧州選手権、プロの舞台でも活躍。2011年に現役を退き憧れの八重山に移住。電灯潜り漁師(現在休業中)を経て2022年6月に美崎町にカラオケ&弾き語りバー《アームバー》をOPEN。現在も代表としてトライフォース石垣島支部で柔術クラスを持ち、後進の育成に努めている。
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