見出し画像

ハードロマンチッカー、を観た!

制作:2011
監督:グ・スーヨン
撮影:無州英行
主演:松田翔太 柄本時生 永山絢斗 金子ノブアキ 渡部篤郎 真木よう子

■あらすじと感想
下関在住の在日朝鮮人・グーが気持ちいいぐらいに暴れる話。警察、やくざ、同じ在日の若者、日本人の若者など、お互いに知り合いではあるものの誰とも行動を共にしない「不良」という枠に収まらない孤高のグー。貸した金を回収するため、在日朝鮮人グループのリーダーの弟を痛めつけ、それをきっかけに手当たり次第に喧嘩に次ぐ喧嘩で下関の不良を全て敵に回してしまう物語。

■松田翔太の暴力シーンは本当に痛そうである。蹴っても殴っても本気にしか見えない。役になりきっている感が滲み出ている。暴力が激しい映画でもドラマでもプロレスでも、一瞬でも違和感があると興ざめるものだが、気持ちいいぐらいに暴力的である。暴力の振るい方が、正義とか欲望とか自身とは別の基準ではなく、自分の思いがその暴力の基準であると感じられる事が気持ちいい。松田翔太は、自己の表現者としては最適な配役であると感じた。

■この映画は監督の半自伝的な小説の映画化との事だが、在日という日本社会で差別と抑圧を受け、それが背景となって暴力の世界へ、という単純化された構図に収まりきらない映画である。この映画は、歴史的な背景はあるがグーの個性によるものが多いように感じた。かといって、何を訴えているのか、若さからの苛立ちなのか、上下関係への反発なのか、下関と言う狭い世界への怒りなのか、理屈で解釈するべきではない、との意見はあるかと思うが、表現というものは全て解釈されるべきものなので、敢えて解釈すると物理的な自分自身や自身を規定する全てを乗り越えるために全てに牙をむきながら自身の判断で自分の存在に挑戦している、という事ではないだろうか。なので、グーが朝鮮人でも日本人でもアメリカ人でも関係なくこの物語は作られたのだと思う。暴力という表現だったかどうかは別として、ではあるが。

ハードロマンチッカー2 (2)

■松田翔太の腹の座った演技、孤高の表現には感服しました。また、柄本時生は演技の空気がある。フレームに収まらない漂う空気。カット!の声が効かない空気。別の映画も観て感じてみたい気がした。

■好きなカットは、最後に暴れまくって倒れた不死身の松田翔太のカット。次に進むときはこういう場所でこういうカットで見せてくれてよかった、といカットである。あと、ラーメン屋かな。イイ感じである。ではでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?