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地方衰退の構造



step1:人とお金が都会へ


参考:「我が国の通商・経済の変遷と構造変化」通商白書2012年版経済産業省

人が田舎から都会へ流れることで、その所得も移動し、その結果、田舎の経済成長3要素のうち労働寄与度と資本寄与度が低下。

潜在成長率とは、実質GDPの伸びを、3つの寄与度で分解する手法で、景気変動等の短期的な要因による影響を除けば、将来的にGDPはその数値に収斂されていくとされています[1]。
3つの寄与度の定義は次の通りで、企業競争力の構成要素を多く含む点が特徴です。
・労働寄与度とは、就業者数に就業時間を乗じたもの
・資本寄与度とは、企業や政府が保有する設備(資本ストック)の量
・TFP寄与度とは、労働や資本がGDPを生み出す生産効率で、技術革新(イノベーション)と同義されることも多い
出典:「世界的な潜在成長率の低下」通商白書2016年経済産業省



Step2:「産業再分配と所得再分配」の減退


参考:「我が国の通商・経済の変遷と構造変化」通商白書2012年版経済産業省

人とお金が都市に流れたことに対して、地方経済に与えられたのは「産業再分配」と「所得再分配」でした。
・生産性の高い都市企業が地方に支店や工場を設けることで地方経済の全要素生産性(イノベーションや労働生産性)が向上
・補助金や地方交付税等を通じて建築業や地方企業にお金が還元

参考:「我が国の通商・経済の変遷と構造変化」通商白書2012年版経済産業省

「産業再分配」と「所得再分配」は以下の理由で減退
・産業再分配は、80年代中盤以降の円高環境で日本企業の海外進出が増加して減退
・所得再分配は、97年以降の緊縮財政で減退。公共工事も4割減少





Step3:「地域の自立・内発的成長」の困難化


参考:「地域産業振興策の現状と課題」日本総研JR Iレビュー 2016 Vol.7, No.37

90年代半ばから00年代初頭にかけて、「産業再分配」と「所得再分配」代わりに地方経済に与えられた役割が「地域の自立・内発的成長」。
「地域の自立・内発的成長」をサポートするのが産業振興策です。


参考:「地域産業振興策の現状と課題」日本総研JR Iレビュー 2016 Vol.7, No.37

・産業振興策は、財務的独立性の弱さなどから来る、地域の実態と乖離した計画で期待通りの成果上がらず
・日本の産業自体、95年GDP世界シェアピークアウトし、世界一の債権国として、外需利益が国内に還元し難い構造に
・長期デフレ&少子高齢化で、給与から消費に回される金額が減少し貯蓄が増加したため、内需循環が低下。国内市場縮小に伴い資本が海外へ


このように、地方衰退は、都市への人口流出から始まりました。
これに対する「産業再分配」・「所得再分配」・「地域の自立・内発的成長」等の施策が、海外事情と国内事情が重なり、転換や期待通りの成果をあげていない状況が続いています。




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