【VRChat】たくさん使ってもらえるアバターのデザインとは?(販売数100体突破!)


初めに

販売数100体突破!ありがとうございます!

つい先日、私の作成したVRChat向けアバター「霊音-れいね」の販売数が100体を突破しました。
多くの人に手にとっていただき、本当ににありがとうございます。
 (Boothリンク:https://booth.pm/ja/items/5099950

販売数が100体突破!
  • アバター販売数100体ってどんなイメージ?

アバター販売数100体というとどのような感想を持つでしょうか?有名アバターの販売数から見たら全然少ない?趣味のアバター制作であれば多い?このくらいの数なら使っている人を全然見かけない?など色々な感想を持つかと思います。
私は各アバターの販売数に関する統計データなどは持っていないので、客観的なデータで示すことはできないですが、個人の感想としては、販売当時は想像もしていなかったほど多くの販売数になったと思っています。

オリジナルアバター「霊音-れいね-」のコンセプト

普段は自分の作りたいアバターを作って遊んでいるのですが、この霊音ちゃんは「たくさんの人に使ってもらえるアバター」「使っていて楽しいアバター」をコンセプトとしてデザイン面をかなり重視して作製をしました。
そして、このコンセプト通り(むしろそれ以上)に多くの人に使ってもらえることができました。
作りたいものを作ることはとても楽しいですが、せっかく作るのならたくさんの人に使ってもらいたいと思う人は多いと思います。
ただし、私としてはたくさんの人に使ってもらえるためにはクオリティも重要だと思っていますが、それ以上にデザインについても重要だと思っています。
このnoteではアバターのデザインに注目して、霊音ちゃんを作る上で意識したポイントについてまとめていきたいと思います。

ちょこっと自己紹介

本題に入る前に、そもそも筆者がどんな人か簡単に自己紹介しておきます。

  1. 3Dモデル制作歴:約1.5年(販売開始当初)

  2. VRChatプレイ時間は1000時間超え(どハマリしました)

  3. X(旧Twitter)のフォロワー数:300人くらい

はい、基本的には趣味でモデリングをやっている社会人です。(最近はこのモデリング活動は副業という形態に移行しましたが。)
本業は3DCGとか映像関連とはまったく無関係な業種のサラリーマンやっています。
プロの3Dモデラーやイラストレーターなど、多くのクリエイターがいるVRChatのアバター制作界隈では自分なんて特に有名でもないし、モデリングスキルもそれほど高くは無いと思っています。
そんな突出した能力もSNSでの拡散能力もない趣味モデラーでもアバター販売数100体いけますよ、という思いも込めて書いていこうと思います。

「使ってもらえるアバター」として意識したこと

ここから本題に入っていきます。あくまで素人の一つの意見として読んでもらえれば幸いです。

①モチーフをわかりやすくする

まずはアバターのモチーフをとことんわかりやすくすることを意識しました。

  • モチーフの重要性

アバターを使ってもらえるためには、目についた瞬間に「かわいい!」とか「かっこいい!」とか狙った感想を持ってもらう必要があると思っています。
毎月100体以上(多分)の新作アバターが出ているVRChat界隈で新しいアバターを探している人は、最初から一体一体のデザインを何十分もかけてじっくり眺めることはしないと思います。
もし、自分が「世界一の美少女」とか「宇宙一のイケメン」を作ることができるのであれば、モチーフをそれほど練らずにデザインをしてもいいと思いますが、そのレベルのものを作ることが難しいのであれば、「かわいい」とか「かっこいい」と思われやすいモチーフを取り入れることで、そのモチーフに助けてもらう形でプラスな感想を持ってもらいやすくなります。

そうやってモチーフに助けてもらうためには、アバターを目に入れてから3秒以内に取り入れたモチーフを分かってもらうことが必須になります。
小さな髪飾りにちょこっとだけモチーフを加えるくらいでは、そのモチーフはほとんどの人に伝わることはなく、スルーされてしまいます。
せっかくかわいいモチーフを選択して盛り込んでも、そのモチーフに助けてもらうことができなくなってしまうのです。
そこで、モチーフをとことん素早く伝えるための手段の一つとして、「モチーフをデフォルメする」ことが有効になります。

  • 【やったこと】猫+おばけを記号的にデフォルメ

今回作った霊音ちゃんでは、「猫+おばけ」というモチーフをとことんデフォルメしてデザインしています。このモチーフは誰でも知っていて「かわいい」と感じることができるものとして選択をしました。

おばけモードのデザイン

このアバターをVRChatで初対面の人にたくさん見せたのですが、「猫」と「おばけ」に関しては見間違われたことはなく、とてもわかり易いデザインになっていると思います。
しかし、よく見るとリアルな猫や幽霊の要素ってほとんどないデザインをしていて、その2つの要素はデフォルメされて取り込んでいるデザインになっています。

ところで、「デフォルメってどんなこと?」ってなる人もいるかも知れません。
ここでは、デフォルメの手法の一つとして「記号化」を駆使しています。
ここに霊音ちゃんのデザインのモチーフ要素だけを抜き取った絵を描いてみました。

霊音ちゃんを極限までデフォルメしたデザイン

これだけでも、「猫+おばけ」のモチーフは伝わるのでは無いでしょうか?
2本の耳と目、ωの口とヒゲがあれば猫とわかるし、足を消して人魂のような物体を足元につければおばけと認識できると思います。
こんな感じでモチーフをわかりやすくするためには、モチーフをデフォルメしてその部分を強調したデザインにすると伝わりやすくなり、結果として「かわいい」「かっこいい」と感じてもらえるデザインになりやすいと思います。
デフォルメや強調の手法は色々とあると思いますが、記号化という手法を使ってみると簡単に強くモチーフを印象付けることができると思います。

②デザインのオリジナリティを高める

次にデザインするうえで意識したポイントとしては、「オリジナリティを高める」ということです。

  • オリジナリティの重要性

私の持論としては「上位互換が存在すると、そのアバターは使ってもらえない」と思っています。
つまり、同じ属性&モチーフで更にハイクオリティなアバターが存在する場合は、使ってもらえる可能性は一気に低下すると考えています。
逆に、デザイン自体にオリジナリティがある場合、そのモチーフが好きな人にとって、そのアバターは数少ない選択肢となるため、使ってもらえる大きな理由となると思います。

  • オリジナリティの作り方(あくまで一例)

ここで、オリジナリティを高めるために使った考え方として、トレードオフとなるデザインを取り入れることを使いました。
「多くの人がやらないデザイン」をあえて取り込むことでオリジナリティを高めることができる、という考え方です。

一方で、「多くの人がやらないデザイン」というのは何かしらのデメリットがある、つまりトレードオフがあるということだと考えています。
簡単に思いつくトレードオフが存在するデザインの例だと、多くの人が嫌がるモチーフ(クモとかゴキブリなど)とか、作り込むのが異常に大変(ポンチョとかヒラヒラがたくさんあるデザイン)なんかが思いつきます。

重要なのが、ここで受け入れるべきデメリットは「使われない理由となるもの」ではなく「作られない理由となるもの」を選ぶべきだと思います
苦手な人が多く存在するモチーフを採用することでオリジナリティを高めても、それが原因で使う人が減ったら本末転倒ですよね?
(もちろん、あえてそういったモチーフを選択して、狭い性癖に深くぶっ刺すデザインにする方法も一つの戦略ではあります。)

  • 【やったこと】顔をほとんど隠してしまうデザイン

この「オリジナリティを高める」という点で霊音ちゃんのデザインにおいて採用したポイントとしては、「顔の大部分を隠すフード」になります。

表情も変わる猫フード、ほとんど顔は見えなくなる

このフードのデザインですが、アバター制作者としては一番作らないデザインだと思っています。
Boothのアバターサムネイルを見ていただくとすぐに分かると思うのですが、顔をアップにしてこっちを見ているサムネイルばっかりだと思います。
つまり、アバターの作り込みにおいて顔とその周辺(もっと言えば目の周りと前髪周り)がものすごい重要なポイントになるということです。
アバター制作者側もその点はよく理解していて、顔周りの作り込みには一段と力を入れて制作します。(多分)
そんな重要なポイントである顔周りを丸ごと隠すデザインというのは、クリエイターからしたら結構やりたくないデザインになっていると思います。
一方で、あえて顔を出さないデザインにすることで、引っ込み思案であったり、ザ・美少女アバターは使いにくいけど可愛い系のアバターを使いたい、というVRChatユーザーをターゲットとしてして、結果としてうまく刺さったのでは無いかと思っています。

③受け入れられやすいモチーフを取り入れる

そして、取り入れるモチーフを選定する際に考えたポイントとしては、受け入れられやすいモチーフを選定することを意識しました。

  • モチーフ、属性の選択を間違えると?

オリジナリティを高めることがオフェンスであれば、こっちはディフェンスです。
オリジナリティのところでも少し触れましたが、苦手な人が多いモチーフを盛り込むと、「そのアバターを使わない理由」ができてしまい、使ってもらえる人は少なくなります。具体的にはリアルな虫のモチーフやエロ、グロ系なんかは結構苦手な人が多いのでは無いでしょうか?
もちろん、特定のニッチな性癖の人にぶっ刺すために、あえて賛否両論の多いモチーフを選ぶことでオリジナリティを確保する方法もありますが、特に大きな理由がない限りは、なるべく多くの人に受け入れられやすいモチーフを盛り込んだほうがいいと思います。VRChatのアバターだと、少女系や少年系、あとは猫や犬といったモチーフは受け入れられやすい気がします。

  • 【やったこと】少女&きぐるみのモチーフを盛り込む

霊音ちゃんの場合、アバターの基本属性としては「きぐるみを着た少女」となっています。

足つきモードのデザイン。肌の露出少なめできぐるみっぽくしました。

少女というモチーフは言わずもがなVRChatで最もポピュラーなモチーフ、属性にですし、きぐるみという要素もそれが原因で嫌われるようなモチーフではないと考え、こういったデザインにしました。
VRChat界隈ではデフォルメアバターに対して一定の人気がありますし、デフォルメ感を強めることも可愛さを強調するうえでプラスに働いたかな、と思っています。

④こだわりをたくさん盛り込む

デザインがある程度決まったら、あとは自分のこだわりを特盛にしました。

  • こだわりポイントが「使ってもらえる理由」になる

多くの人に「そのアバターを使っている理由はなんですか?」って質問すると、「対応衣装が多い」とか「顔が可愛い」、「フルトラ適性が高い」、「Quest対応していた」など、これまで書いてきたモチーフとは関係ないことが理由に挙がることが多いと思います。
つまり、そういった明確な「使ってもらえる理由」を多く持っているアバターほど、最終的に使ってもらえることが多いのです。
この「使ってもらえる理由」というのは、その多くが作者のこだわりポイントとなります。そのため、デザインを崩さないレベルであれば、こだわり特盛のアバターにするのがいいと思います。

  • 【やったこと】霊音ちゃんはここがかわいい!

霊音ちゃんでは、こんな感じでたくさんのこだわりポイントを詰め込んだアバターに仕上げました。

主張強めのポップ。ここらへんは全部こだわりポイント。

実際に購入していただいたユーザーから聞いても、「フードの表情変更」「袖のフワフワ感」「おばけモードと足つきモードの切り替え」なんかは結構好評な感じでした。
顔を出して使いたいユーザーと顔を隠して使いたいユーザーの両方がいて、そのあたりの要求にマッチした気がします。あとは、Quest対応のPrefabが入っているおかげか、Android単騎のユーザーにもちらほら使ってもらえているようです。
こういったポップを作ってみるのも、こだわりポイントをアピールする上で使ってみるのもいいかもしれません。

最後に

ここまで私が「使ってもらえるアバター」として意識したポイントについてまとめました。
「これができれば100%使ってもらえる」とは言えないですがちょっとでも参考になってもらえればありがたいです。


最後にデザインや制作以外の点を少し後書き的に残しておきます。

アバター販売でやったこと&やらなかったこと

私のショップでは、他のアバター制作者がやっているような発売時点でのキャンペーンなどはやっていなくて、宣伝に対してはあまり力を入れていないです。
具体的にやらなかったことは下記のとおりです。

  • RPによるプレゼントキャンペーン

  • 発売から期間限定での値引きセール

  • 対応衣装の募集

  • アバター試着会

ここらへんは私が面倒だとおもってやりませんでした。(やったら販売数がもう少し伸びたかもしれない、とか思うこともありますが。)

逆にやって効果があったことは下記のとおりです。

  • VRChat内でのイベントへの参加(Avatar Museum9)

  • Publicやイベントで使って周る

  • 価格を下げる

特にVRChatでのイベント参加はSNSでの拡散能力が低い作者は必須だと思っています。(本当はVket 2023 Winterやメタフェスにも出したかったのですが、全部落選してAvatar Museumにしか出せませんでした。)
私のショップではアバターの販売数は発売当初よりもイベント後のほうが大きく伸びています。イベント開催者には頭が上がりません。

また、Publicや雑談イベントに参加するときに使っていると、「そのアバターかわいいですねー」「自作なんですよー」というやり取りから何体か購入してもらえました。意外と宣伝効果高くてびっくりです。
※イベントやインスタンスによっては露骨な宣伝はNGな場合がありますので注意しましょう。

あとは、霊音ちゃんは2000円という相場に対して結構安めな値段設定になっています。
ここらへんも販売数への影響は無いとは言い切れませんが、2000~3000円付近は値下げ効果はそんなになさそう、というのが私の周辺での意見です。(売れるアバターは高くても売れるし、売れないアバターは安くても売れない。)

VRChatのアバター界隈は多分特殊な界隈

このnoteを読んで、「3Dモデル販売ってそんなに売れるの!?」と思う人がいるかも知れません。
私は他のVRSNS向けや一般的な3Dモデル素材の販売をしたことが無いので他の界隈は知らないのですが、VRChat向けアバター界隈は結構特殊な界隈だと思っています。
まず、1次創作が受け入れられやすい界隈だと思っています。イラストや漫画など他の界隈だと1次創作って修羅の道のイメージがありますが、VRChat向けアバター界隈は(まだ)1次創作を受け入れてくれて、それに対してお金を払ってくれる人が多い印象です。
(みんな浪費しすぎないように気をつけてくださいね。)
あと、VRChatへログインして遊ぶことで、ユーザーや他のクリエイターと出会える機会も多く、双方向的なコミュニケーションを取れるのもいいポイントかと思っています。
クリエイターとしてはとても楽しい界隈だと思っています(個人の感想)。

結局は結果論

このnoteではデザインとかに対して結構偉そうに語っていますが、上記の条件をすべて満たしても100%の確率で「使ってもらえるアバター」になるとは限らないと思っています。(所詮は素人の戯言)
逆も然りで、モチーフとかデザインとかを一切工夫しなくても、クオリティに全振りしたアバターを作ったほうがたくさん使ってもらえるケースもあると思います。

 結局は結果論ですね。

霊音ちゃんが生まれた経緯も、フレンドが使っていたおばけのアバターが可愛いくて、
「おばけアバターが作りたい」→「猫+おばけって可愛くない!?」
という結構ゆるい流れでデザインを始めたので、最初は上記のポイントに対してガチガチに固めてデザインしたわけではなかったです。

また、霊音ちゃんのケースでは、使用してくれたユーザーが投稿した動画がたくさん視聴してもらえたり、Publicでたくさん使ってもらったことが宣伝効果を生んだり、自分だけではできなかったプラスの効果も働いてここまで伸びたと思っています。本当にありがとうございます。

最後は楽しんだ者勝ち(だと思う)

本当の理想を言えば、自分の作りたいものを作ってたくさんの人に使ってもらえることがいいですが、なかなかそういったことは難しいと思います。
ただ、たくさんの人に使ってもらえることを優先しすぎて、自分の作りたくないものを作るのも、あまりいい状態ではないと思っています。(生活費を稼ぐため、など理由があれば別ですが。)

私としては自分の作りたいものを作ってたくさんの人に使ってもらえることを目標にしてこれからも楽しんでいきたいと思っています。
長々とした文章でしたが、お読みいただきありがとうございました。

  • 【参考】デフォルメのはなし

今回のデザインの内容について下記の動画の内容を参考にしている点が多くありますので、URLを貼っておきます。とても参考になりました。オススメです。
https://www.youtube.com/watch?v=1IWhoIiQdmE

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