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毛の粉飾決算

 若い頃はあんなに手強い勢力を誇った我が頭頂部の毛髪が、最近あれ? あまり元気がない。あれ程大変だった寝癖の修正にもさほどの労力がかからない。これは笑い事ではないと思ったが、しばらくは『まっいいか』というダラけた年月を送った。しかしそのせいだろうか、私があまり望まないような状況が そこはかとなくやって来た。

 そんな私の前に颯爽と登場したのが、昔から必ず薬局の売れ筋商品である毛生え薬だった。そのジャンルの商品は、その歴史から見ても効果の程がわかりにくい、しかし であるにもかかわらず高い値段が付けられる代表的なものだ。
 しかし今回は違う(と、いつの時代にも言われていたが)。なんとなれば医学が認めた成分である『ミノキシジル』が5%も入っているのだから・・・。CMでもあんなに『これは生える』と繰り返しているではないか!

 いつの時代も毛生え薬が廃れない理由は、それだけ悩める人、そして藁にもすがる思いの人に必要とされているからだ。しかしコイツは安くない。1本60mlの小瓶で6千円近くするのだ。私はそれをせっせと少し薄くなりゆく箇所に振りかける。1回1mlを日に2回塗る。途中で情けないなぁと悲しくなってもそれを続けるのである。ボーボーに毛が生えた我が頭頂部を夢想しながら、もはや10ヶ月は続けたろうか。一体私の髪に期待する変化はあったのだろうか?

 私は考えた。これは話がハゲだから笑えるし可笑しいのだ。なぜなら不足するところを補填するという意味なら メイクも同じなのではないか? メイクアップを施すことそのものは、見る人の目の錯覚なんかを利用して、巧妙に足したり引いたりするではないか。ましてや整形などになるとハゲ隠しのヅラと何が違うというのだ?

 結論。ハゲを笑ってはいけない。

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