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良品計画(東証プライム/7453) 株主総会メモ 2023/11/23

 東証プライム市場に上場している良品計画さんの株主総会に参加しましたので、当記事においてその様子を徒然なるままにご紹介してみようと思います。
 なお、従来の株主総会レポート記事と異なり、細かいQAの様子などは割愛し、雑感メインのメモとして記載していきます。公式サイト(以下サイト)上で動画が紹介されると思いますので、詳細はそちらを確認頂ければよいかなと考えるからです。

 それでは思いつつままに書いていこうと思います。長文かつ乱文になりますので、その点ご容赦下さい。


・開催日時について

 まず開催日時ですが、今年も祝日での開催です。これは良品計画さんが、真に個人株主との接点を大切にしているため、現役世代を含めた個人株主との対話をしやすいという配慮によるものです。このことは会の中でも何度か言及がありました。無印良品という屋号でB2C事業を主体にしており、このフォーマットは顧客と一緒に創っていくものだという考えが強く、個人株主との対話を通して、良品計画の歩みを共に感じてもらいたいという想いがあってのことです。祝日であるが故に参加がしにくいという方もおられるかもしれませんし、社員さんなどの運営サイドにも負担がかかる事もありますが、それを差し引いてもメリットが大きいという判断があってのことだと思います。多くの会社が参加がしにくい平日開催、かつ集中日を狙ったように設定されている事も多い中で、会社の意志がきちんと出ている運営であることをとても嬉しく感じました。

・株主ファンミーティング

 そして株主総会の後に、株主ファンミーティングなる催しもセットされていました。要するに株主総会というやや形式的な環境下での対話だけではなく、一段距離感を縮めてよりざっくばらんに対話を重ねる場として2部制にされているということです。
 最近では株主総会の後に会社説明会やQA等の時間を切り出して2部制にされる会社さんも散見されるようになりましたが、まだまだ少ないのが実情です。株主総会後に取締役会があるからとか、昼食の時間をとらないといけない、といった制約等が障壁になっているようです。
 しかし、同社は対話を重視される中で、株主総会でもみっちり質疑を受け(概ね20人位が質疑を投じましたが、質問を途中で切ることなく、希望者全員の質問を受けておられました)、既に開会から90分以上を要した後に、更にファンミーティングをされるという選択をされています。
 B2Cの企業さんでは、株主総会やそれに付随する会において細かなオペレーションや商品改善等の声が沸き起こることに忌避感を滲ますシーンも散見されますが、同社は逆にそういう意見をどんどん挙げて欲しいというスタンスです。それをポーズではなく真に思っているからこそ、その後14:30過ぎまで(途中20分程度の休憩時間を挟みますが開会から4時間超)ファンミーティングを運営されるような熱量があるのだと思います。
 確かに多くの参加者と経営陣の皆さんがおられる平場で、やや細かすぎるのではないかと、ちょっと心配になるシーンもありましたが、そういう一つ一つの意見や苦言にもきちんと耳を傾けておられた事が印象的でした。
 株主との関係性やとりわけ個人株主との距離感という所へ悩まれている会社さんもおられるのかなと、様々な株主総会に出ていると感じます。しかし、良品計画さんのようなそれなりの大きな会社さんが、こういう機会を真に価値あるものにしようとされている姿は、それに倣うかどうかはともかくとして、様々な企業の方にも感じてもらい、自社の運営としてあるべき姿を改めて検討頂きたいなと感じました。以下のポスト(ツイート)は特定のどこかの会社を想定したものではありませんが、とりわけ中小型の企業さんやB2Cを主体にされている会社さんであれば、個人投資家とよい関係構築を築いてもらえるひとつのイベントになればいいなと改めて感じました。

・株主の様子

 実は私は無印良品を利用はしますが、ライトユーザーでいわゆるムジラーではありません。そしてファンミーティングもセットされているようなこのような機会には、多くの生粋のムジラーの方々が熱量高く質問をされるのかなと想像していました。
 しかし、実際には確かに熱烈なファンの方もおられましたが、なんというか思っていたより皆さん普通でした(笑)。ちょっと自分が場違いかなと怖かったのですよね。そんなことはありませんでした。
 そして年齢層も祝日開催ということもあってか、現役世代やZ世代など若い方々も多くおられましたし、女性も大変多かったです。一般的な株主総会と比べると参加されている株主さんの様子もだいぶ印象が異なるものでした。
 そして関心事にもだいぶばらつきがあるようにも感じました。中計の定量的な評価の部分で数値的な部分を問う方もおられれば、商品やオペレーションの改善等の自身の感じている不満や要望を挙げる方もおられます。「良品計画」に対する質問と「無印良品」に対する質問が折り重なるようなイメージですね。
 会場での参加は事前の申し込みが必要という中で、概ね700-800席くらいの座席が用意されていたかと思います(すみませんちゃんと数えてませんが)。そのうち7割方が埋まっている感じでしたのでざっくり500人くらいが参加されていたのではないでしょうか。普段10人とかせいぜい100人くらいの株主総会しか経験がないので圧倒されました(三菱商事さん等の超大型の株主総会以来の経験でした)。

・質問について

 質問については、前述の通り、後日公開されるであろう動画を見て頂ければよいと思いますが、いくつかピックアップしておこうと思います。株主総会とファンミーティングで区別なく書き連ねていきます。

 まず私が質問したのは、エンゲージメント創造を深めるためのPRの重要性についてです。単なるモノ売りという枠組みを超えた高い訴求力でもってエンゲージメントすることに優位性や収益性の根源を見出そうという中で、商品販促という枠組みを超えたエンゲージメント創造においてPRが重要ではないかという問題提起の趣旨です。顧客にとって商品の機能や価格といった所だけでなく、ムジの行う付加価値がより伝搬するPRも重要でしょうし、バイヤーや商品開発をされる社員さんにも光が当たり、彼らの織りなすストーリーがより拡がるPRという事も意味がある気がしました。
 回答として興味深かったのはそういう課題認識は当然として持っている中で、今はそういうPRに足る実績や雰囲気を醸成するプロセスを進めている所であり、そういう活動が間もなく具現化しそうであり、その先には商品販促に留まらないPRを訴求していきたいというニュアンスを得られたことです。店舗のコンセプトからこの第二創業と称して再定義をされようという中で、そういう姿が適切にPRされ訴求力を高めてくれる事を期待したいなと感じました。
 また、付随的に例のMUJIマイルの「リセット」についても問題提起をしてきました。優先度を上げてどういう設計にするか検討を進めてくれるとのことでした。すぐに変わるかはわかりませんが、意図はきちんと伝わったと思います。

 またファンミーティングでも私は発言をさせて頂きました。こちらでは人材の部分に言及しました。ファンミーティングの質疑の前に土着化プロジェクトに関してのプレゼンを拝聴しましたが、改めて無印良品が展開する店舗フォーマットが大きく変わる事を実感しました。地域コミュニティーの拠点になり地域に馴染んでいくという壮大な展望となるわけですが、一方で現実の店舗ではレジに忙殺されていたりと大きなギャップがあります。社員の皆さんが日々の活動の中で、第二創業として目指すフォーマットを共有して進めていくにはあまりに現実は過酷なわけです。テックでハード的なフォローは出来ても、人の気持ちやモチベーションというソフトな部分で、壮大なものを目指していくには素地がまだまだ整っていないわけです。こういう部分への課題対処への言及をいたしました。
 回答として印象的だったのは、ここ最近まで店舗の収益性という点から、売上動向に応じて人の数を決めていくような数値ドリブンの経営に向かっていた大きな反省の弁を述べられていたことです。数値(特にボトムライン)を守る意識が強すぎて、最も大事な人への対処がなおざりになり、オペレーションにまで影響をきたすようなミスを犯したという点を素直に認められていたわけです。こういう話は多くの会社が陥る悪循環の代表例のようなものですが、そこにメスを入れて、まずは人を大事にするという原点回帰をここ最近進めて営みへの説明がありました。毎月の店長会議でも、数値の管理よりまずはこの人の充足やオペレーションの所への牽制を事あるごとに経営がメッセージを出していく事を行われているようです。
 これは短期的にはコスト先行というジレンマにはなるかもしれませんが、同社にとっては大きな転機になるような気がします。既に対処を初めて一定程度の時間が過ぎ、相応に手応えや成果が出始めているようですから、単なるボトムラインの効率性という数値の凹凸はしっかりみつつも、その背景にある定性的な変化にもよく目を向けていたいなと感じました。
 カフェスペース併設の場などで、もう少し閑散時間帯に気軽に交流が持てるような(現在行われている試食会のようなものではなくもっとフットワーク軽くできそうなことから)活動を進めるなんてことも、現場の社員の皆さんがレジや在庫管理などの業務から切り離され、新フォーマットへの目線を養っていくために有用な取り組み例ではないかということも付言しておきました。真摯に回答下さりとても好印象でした。

 この他の質問としては、まず中計の定量目標についての言及がありました。その後の様々な外部環境の変化等も相まって、とりわけ利益面で遅れがありそうだという指摘がありましたが、まずは目先の目標を確実にクリアして生きつつ2030年ビジョンを目指していきたいという趣旨の説明がありました。私は同社に対して、細かい財務モデルシミュレーションをしていない(さぼってます)ので、細かい所のフィージビリティまでを論じられませんが、後に出てくる数値より人を優先するという原点回帰という話や、貢献と利益の狭間でバランスを取るという言い訳をせず徹底した貢献と適正利益を共に追及するといった様々な発言もあり細かい財務をトレースすることが難しいなとも感じました。ただ、やはり市場からの評価はどうしてもEPSベースになることは当然でもありますから、質問者さんの懸念はよくわかる気もしました。堂前社長もそのことは当然認識されていたかと思いますね。

 中国市場のことについても質問がありましたが、まず現在生じている海水放出の件を発端とした不買行動の影響は軽微であるという報告がありましたが、中国の経済や競合の台頭など様々な不確実性がある点にも言及がありました。利益を海外で多く挙げる現状下ではリスク要因ですからね。

 この他、株主構成への想い、店舗巡回の状況、株式分割、役員の選任理由、ダイバシティ・女性登用、国内の利益率対処(価格戦略)、個別商品群への細部の要望(通年販売希望、家具サイズ、在庫管理などなど)、本社移転や池袋西武関連、インドの展開戦略、無印週間を含めた販促、貢献と利益のバランス論等とにかく多岐に渡りました。

・質疑の答弁について

 運営で印象的だったのは、各質疑に対する答弁です。株主総会では取締役はもちろん、執行役員の皆さんも登壇されていました。ですので役員席は20人強の方々が登壇されていたことになります。もちろん、細かく地域や商材毎に担当があるわけですが、そういった方々へ積極的に議長である堂前さんが答弁を振られていました。
 各役員に答弁を振るというはまぁたまにはあるのですが、その堂前さんの仕切りが物凄くスムーズなのですよね。質問者が質問を終えると、速やかに〇〇については、執行役員の●●さん、▽▽については、取締役の■■さんにそれぞれ答弁頂きます、みたいな感じで一瞬の淀みもなく采配されており、明らかにキレ者なのですよね。そりゃ、マッキンゼー出身でヘッドハントされるわけです、と心に思いましたよ。
 そして、さくっと振られても、どの役員も的確に答弁されていました。そしてちょっと説明が足りないかなと思えば、すかさず堂前さんが補足を入れるということで、完璧な対応でした。執行役員の方々は特にですが、若い方々も多い中でしっかりしているな、と感じました。
 株主ファンミーティングでは経企の堀口さんが司会進行を務めてました(広報、IRを含めた所掌)。株主総会でも堀口さんの答弁ご指名が圧倒的に多かったのですが、ファンミーティングの司会進行も含めてしっかりした対応でした。脳みそぐるぐるして疲れないのかなと思いました(笑)。

・貢献と利益について

 質疑の中で貢献と利益についての議論がありました。この部分は少しメモを残しておきたいと思います。実は私の投資先のひとつであるeBASEという会社さんがありますが、その企業理念にも「貢献」と「利益」という言葉が躍っています。個人的にはとても関心を持ってこのやり取りを拝聴していました。

 そもそも貢献と利益の文脈ですが、良品計画さんが第二創業として店舗を地域コミュニティの拠点となっていく土着化という発想を出されているわけですね。地域への貢献はとてもよいことだが、一方で事業化という意味では利益創出をしていかねばならない中で、この「貢献」と「利益」のバランスをどう整理していくのかという趣旨の質問者さんの問いかけがきっかけでした。
 貢献をしていけばあとから利益はついてくる、なんてよく言われるわけですが、しかし株主としてはやはり利益作用は気になる所ですから、ある程度バランスを取りながら進めていって欲しいと思うのが一般的だと思います。そしてそういう流れを汲んで、バランスをもった運営についての考えを経営陣が披露するというのがよくある光景です。
 しかし、堂前さんはここで、バランスを取るという表現を否定されていました。つまりバランスを取るなんて考えたことはない、ということです。バランスを取るなんて表現をしているうちは、(利益を出せない)言い訳をしていることになるわけで、徹底的な(本気な)貢献があれば必ず利益は出るものと、自分達が信じて運営せねばならないし、そう思って真剣にやっていくものなんだという解釈をされているように感じました。この表現は他の株主さんも後か心に響いたという趣旨の発言をされていましたが、私もとても感激しました。
 地域の貢献とかいうと、なんかLove&Peace的な世界観でもって上場会社として利益成長をしていく事をどこかでなおざりにするような様相にもとられがちで、トレードオフ的に捉えられかねないとも思うのですが、そういう発想ではないということですね。

・将来に向けて感じたこと

 今回の株主総会に参加してみて感じたことは、同社が大きな転機に差し掛かり、そしてそこから一歩を歩み始められたのかな、という兆しです。まだよくわかりません。それが本当に一歩を踏み出したのか、あるいはそれはまだ迷走中なのか。
 良品計画さんの事業環境としては、コロナ禍で巣籠り等で需要の波が大きく凹凸する中で読む事の難易度が上がったり、商品にプラスをしていく発想の中で原点がぼやけてしまったり、そのプロセスで数値を守るために大事な人への対処が遅れたりと課題山積な環境下に置かれました。
 そして議論をして第二創業を志向していくと宣言されたわけです。店舗フォーマットも大きく変えて、2030年ビジョンに向けて従来の戦略を大きく変えた営みを進める事に舵を切りました。
 国内では手に取りやすい価格という事を大事にするがばかりに粗利を削る我慢大会のような状況を一定程度打破するために値上げを行い、その中で人への投資をきちんと再定義していく事をなされています。郊外へのチャレンジを試行錯誤する中で、地域毎の成果を少しずつ出してきている中で、今後を見据えられるようなスタートラインにようやく立てた雰囲気があります。
 海外では中国などのリスク対処はもちろんですが、現地企画・生産の商品ラインナップを地域間で相互に還流させていく事の取り組みがいよいよ出てきそうです。台湾の商品などで具体的な説明がなされていました。
 人材という面でも20代の若い店長が多く活躍され、また海外でも還流を含めて現地の方を率いるリーダーを担いチームで事にあたるという体制が小さな輪となり拡がってきている様相が伝わってきました。各国・地域の不可避な状況下に晒されることで、ちゃぶ台がひっくり返るということはあるかもしれませんが、同社がなすべき事を粛々と進める姿は朧気ながら見えてきた気がします。
 定量面でみるとよくわからないことばかりではありますが、長期的な目線でこの第二創業が立ち上がるとすると、2030年にはだいぶ違った無印良品になっているのではないか、その兆しを感じました。
 人、商品、地域コミュニティとしての機能の拡大等の軸でどういう変化がみていけるのか、ワクワクするような心持ちです。今の株価形成は、こういう兆しに敏感に反応している、しかしまだまだ疑心暗鬼な中で高値更新までには相応のGAPもある、そんな感じに映りました。なるほど、株価形成はとても合理的だなとも改めて気が付かされました。

・さいごに

 良品計画さんが、真に株主との対話を求められ、株主側も様々な視座の下で真剣に熱量を込めて思いを投じるやり取りの場にいた身として素敵な株主総会を運営されているなと感じました。ある意味熱烈なファンがおられる会社さんなので、その温度感をある程度抑えつつも適度な温度感で、対話が重ねられる環境が創られている事は素晴らしいなと感じました。質問を切るわけでもなく、皆がお腹を空かせても、多くの意見に耳を傾けるし、株主側も熱を込めて投じるという事がなされていたように思います。
 この株主総会の様子は昨年同様動画でUPされ、どなたでもみられるようになると思います。ぜひIRや経営者の方にもみて頂き、株主との対話や株主をファンとして取り込むやり方のひとつのやり方として参考にして頂きたいなと思いました。
 なお、昨年は株主優待の新設に向けた布石があったわけですが、今年は、その還元を5%にするか、10%にするのか、あるいは7%程度にするのかみたいな議論があり、今後の設計については検討の意向が示されていました。現在、セルフレジが使えないことや偽造対応やオークション等への出品対策などについても言及もありました。いずれにせよ、特に株価に作用するようなやり取りはあまりなかったように思います。明日以降も平穏な株価形成を期待しております(笑)。

 今後こういったファンミーティングを全国各地で企画されたりということもあるようです。またMUJI BASE KAMOGAWAの紹介や各種イベントなどについてもご案内がありました。私もムジラーではないライトユーザーですが、一度経験してみたいなと思う事も多かったです。今後の動向もチェックしてみようと思います。以上、簡単ですが、メモとして残しておこうと雑然とした纏まりのない内容で恐縮です。

 頑張れ、良品計画!

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