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ボーナスタイムに勘違い

多くの経営者は「経営上のボーナスタイム」を体験する。
ボーナスタイムに入ると、儲かる。
しかし、このボーナスタイムは扱い方を誤ると危ない。
今回はこの辺りについて書き綴っていく。

経営上のボーナスタイムとは?

一番分かりやすいのが「新規オープンした店」だ。
新規でオープンした時は「一度は行ってみよう」というマジックが掛かる。

新装開店も分かりやすい。
新装開店すれば目立つし、過去の客がもう一度来店する可能性も高い。
「どんな風に変わったか?」という好奇心を刺激するマジックが掛かる。

最近では「バズる」と言われる現象もある。
SNSなどで注目されることだ。
その結果、バズった商品の販売量が一気に増えることがある。

BtoB(企業間取引)でも、ボーナスタイムはある。
例えば、特定の商品、サービスを上場企業が使い始めると、一気に会社の信用が増し、取引件数が増えたりする。

ボーナスタイムの落とし穴

ボーナスタイムは、売上が上がる。
比例して、利益も増える。

ボーナスタイムは、上手く活用すると会社のステージを一つ、二つ上げる可能性がある。
ただ、上手く活用するのは意外と難しい。
目の前のボーナスタイム需要に対応することに手が一杯になり、それを生かして先に進む余裕がない。
感覚的には、上手く生かせるのは10社に1社くらい。

逆に、ボーナスタイムにも落とし穴がある。
「ボーナスタイムは一時的」ということを理解していない人は意外と多い。
そういった人は、そもそも「ボーナスタイム」だと思っていないのかもしれない。

ボーナスタイムに拡大した設備投資がマジックが解けた後、負担になる。
ボーナスタイムに人員拡大したが、マジックが解けたら過剰人員になる。
マジックが解けた後、減った売上を補填するために無謀な広告を打つ。

――― ボーナス期の黒字 < その後のオーナス期の赤字

こんなことが本当に起こり得る。

ボーナスタイムを頑なに拒む経営者もいる。
経営のペースを乱されるからだ。
ボーナスタイムを好んで生かすどうかは、経営者しだいといったところだ。

最悪の実例

ボーナスタイムのマジックに溺れる確率は、ボーナスタイムが長くなるほど上がる。
マジックが長く続くと「自社の実力」と勘違いしやすい。

ボーナスタイムが長い業種は、普段から商品、サービスのリピート周期が長いことが多い。
例えば、ヘアサロン。
一般的にリピートするのが1~2か月周期だろうか?
新規オープンした後、1年以上、マジックは続く。

実際、私の知人にマジックに溺れて、悲惨な目にあったヘアサロンのオーナーがいる。

彼は、新規オープンしたマジックに加えて、女性スタッフが連れて来る男性客のマジックにも溺れていた。
ダブルマジックに掛かった彼は、1年もしない内に2店舗目をオープンした。

――― 飛ぶ鳥を落とす勢い

周りの人から、そう思われていた。
しかし、私はそう思えなかった。

私は1号店に一度だけ行ったことがある。
挨拶とお祝いを兼ねて、サービスを受けた。
その時、正直、2回目の来店をするほどの魅力を感じなかった。

2店舗目の新規オープンしたマジックも加わり、彼は自信に満ちていた。

――― ホットペッパー以外の広告は要らない

と言っていた。

しかし、その後、1年程でマジックは解け、2号店を閉店。
おそらく、投資費用は2割も回収していないだろう。

なぜこのようなことが起きたのか?

まず、1号店、2号店のマジックが同時に掛かったこと。
そして、女性スタッフが連れて来る男性客のマジックが加わったこと。
さらに、ホットペッパーと言う「バーゲンハンター」が好むメディアに広告を出したこと。
これらがマジックを増上させて、実力を見誤った。

時間と共に新規マジックは解ける。
女性スタッフが辞めて、色恋マジックは解ける。
バーゲンハンターは、2度と来ない。

ボーナスタイムが終わった後も利益を出し続けるには「リピート率」が重要になってくる。
これが低いと、マジックが解けた後は「焼け野原」だ。

ボーナスタイムに最も重要なのは「リピート率」を上げるための投資をすること。
これが結果、評判となって「新規客の獲得」にもつながる。
ここまで生かして、成功と言える。

――― 目先の売上に騙されるな。

「リピート率」を確保する自信がないなら、ボーナスタイムはスルーした方が良い。
ボーナスタイムの扱いを間違えると、危ない。
最悪、悪評だけを広めることになる。


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