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140字で映画はどこまでかたれるか。

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タイトルの通り、筆者が観た映画の回想録です。鑑賞環境は映画館の新作を中心にしていますが、基本的にはあまり拘りません。字数制限の都合上、警告なしでネタバレとなる場合もあるので注意。
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「アイアンクロー」(2023)は、実在したアメリカのプロレスラーとその家族が辿った栄光と挫折を描く映画である。専横的な父親に振り回される家族、特に息子たちを見舞う悲劇を現代の視点で指弾しない、抑制の効いた演出が非常に好ましい。ブレンバスターはコンクリートの上でやってはいけません。

山本倫生
3日前
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「オッペンハイマー」(2023年)は、原子爆弾開発の責任を負わされた理論物理学者の挫折と少しの成功を描く映画である。「原爆開発者の名前なんて誰が覚えているんだ!」と時の大統領に一喝される中間管理職の悲哀を滲ませるオッペンハイマー氏の境遇に寄り添う演出が印象的であったが少し長いよ。

山本倫生
10日前
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「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション〜前章」(2024年)は同名マンガを原作とした全2部作アニメ映画の前段に当たる。突如出現した非日常に「慣れてしまった」世界に忍び寄る危機を盛り上げる段取り感は気になるものの、キャラクターの魅力を前面に出す演出でまずは及第点か。

山本倫生
2週間前
2

「デューン砂の惑星part2」(2024年)は、2021年公開の第1部の続きを描くSF映画。前後編あわせて6時間弱を費やしながらまだ「序章」に過ぎない肩透かしな物語に腰と特にお尻のダメージは最高潮に達するのであった。完成しなかったホドロフスキーのDUNEも見たかったな……

山本倫生
3週間前
2

「アメリカン・フィクション」(2023年)は、意に沿わぬ作品で有名人になった黒人小説家の気苦労を描くコメディ映画。大衆が求めるのは「分かりやすい物語」だとするアメリカ社会に笑ってばかりもいられない秀作なのだが日本では劇場未公開。入れ子式のオチも決まるゴキゲンな映画なのだが……。

山本倫生
1か月前
2

「落下の解剖学」(2022年)は、不可解な転落死を遂げた男の殺害容疑をかけられた妻の裁判の行方を描くサスペンス映画。唯一の“目撃者”である盲目の息子の証言などで盛り上げるミステリと見せかけて必ずしも“無実”とは言い切れない妻の事情を詳らかにしていく骨太な物語はとにかく疲れるの一言

山本倫生
1か月前
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「ボーはおそれている」(2023年)は、母親の訃報に動揺する神経症気味な男の騒動を描くギャグコメディ映画。信頼できない主人公が垣間見る悪夢のような世界の行き着く涯はまたしても屋根裏部屋!トンデモないラスボス?との対峙は笑っていいのか泣いていいのか。投げ出し感満載のラストに呆然…

アメリカンコミックとディズニー・ピクサー映画はしばらく必要ないと割り切ると、映画を気楽に見られると気がついたので、しばらくはいい気分でいられそうな予感。個人的にはスターウォーズももう要らない。

山本倫生
1か月前

「カラーパープル」(2023年)は、同名小説のミュージカル版を元にしたリメイク作品で映画化は2度目。黒人の心を理解していない黒人映画と評された前作?の評価を踏まえたかどうか、全てを神の思し召しで片付けてしまう主人公の受動的態度が全然煮え切らなくて困った。全然面白くない映画だ。

山本倫生
1か月前
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製作者の方には心から祝福したい気持ちはあるのだけれども、アメリカ映画業界のお祭りで「外国映画」が賞を獲得するのはいかがなものかと思うのは、自分がたぶんにハリウッド映画に感化されてきたからなのだろう。アメリカ映画、特に娯楽映画はなお一層奮闘努力せよ。

山本倫生
1か月前

「僕らの世界が交わるまで」(2022年)は、広いセカイに自分の意見をがなり立てずいられないイタい親子の日常を描くホームコメディ映画。ワタシやボクの“意見”を押し付けられる身にもなれと思いつつも、顧みて自分は…となると途端に何も言えなくなるという小癪な映画。一人で見ることを推奨する

山本倫生
1か月前

「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」(2024年)は同名テレビシリーズ悲願のオリジナル長編アニメ映画である。泣く子も黙る巨大ロボットの代名詞にして「21世紀のファーストガンダム」の冠を戴く同作の劇場版をまさか生きて目にするとは。懐かしきサンライズロボットアニメの復活に泣く

山本倫生
2か月前

「哀れなるものたち」(2023年)は、胎児の脳を移植されたある女性の非喜劇を描くファンタジーコメディ映画。「身体は大人、心はこども(というか生まれてもいない)」というどこかの名(迷)探偵みたいな主人公キャラのジェンダー論だの政治的主張だのが鬱陶しいが、撮影と美術は一見の価値あり。

山本倫生
2か月前
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「宇宙戦艦ヤマト」(1977)「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」(1978)の4Kリマスター版を立て続けに鑑賞して、オリジナル企画の紛れもない力強さを再確認できたことは全き僥倖であった。特に“完結編”と銘打った2作目には迂闊にも涙腺が緩んだりしたものの、現実はというと……。