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「傷ついた!」と言われて傷ついたら

「傷つくからやめて」
と言われて傷ついたこと,
ありませんか?

こんにちは。豊かに学び豊かに暮らす【フリーランス心理士×SNS起業】臨床心理士/公認心理師/精神保健福祉士のまりぃです。

まだ若輩心理職で、【公認心理師試験・臨床心理士試験対策/心理学部生専用オンライン個別指導塾】や,【公認心理師・他専門職のための心理査定/カウンセリングはじめの一歩講座】を運営しています。
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 私のお仕事は臨床心理士なので,「こころ」や「気持ち」を丁寧に扱うことが専門です。
 特に,私は対象関係論と言って,早期の親子関係をもとに,人の心の世界を見ていく学派をメインに学んでいます。ですから,いつも「表面に起こっている事態」に対して,心の中では,さらに無意識では,どんなことが起こっているのだろう,と考えています。

最近,ある人に「傷つくからやめて」と言われて,なんだかとってもショックだったことがあります。私が本当に傷つけたのなら謝るのだけれど,なんだろうそう言われた,私がすごく傷ついたんですよね。
そして,私自身は「傷つく」と言う言葉をあまり使いませんし好きではありません。
自分に対して使うとしても「傷ついた治療者」くらいでしょうか。もともと慣用句的に入っているので,使いますが,こちらもなるべく英語で言うようにしています。
どうして私は「傷ついた」と言われると傷つくのだろう?と考えたら,昔のことを思い出しました。

大学院に入った当初,同級生だった女の子の想い出話です。(個人が特定されないよう,ある程度脚色しています)

院生は講義などでディスカッションをすることが多いのですが,彼女はよく「それは傷つくから言わんほうがいい」と言っていました。

「傷ついた!」

 実はこの子は,長年学校に行っておらず,社会との関わりもなかったためか,学力も語彙も,一般常識もあまりありませんでした。それでも,大学から通い始めて,大学院に合格した頑張り屋さんでもあります。(学校に行かないとこうなる,という意味ではありません。それぞれの環境で,社会性を身につけたりご家庭での教育の賜物であったりで,一般常識のしっかりある,語彙力も十分な元不登校の方は大勢いらっしゃいます。あくまで,この方個人のケースです)

 ただ,社会に慣れていないため,彼女の言動は院生としても,成人女性としても非常に幼いものでした。それでも,本人は大学に頑張って通って自負があり,また大学は楽しかったようで自分ではリーダーシップを取れるつもりでいるように見えました。つまり自分では,自分の状態を把握できていなかったんだと思います。

客観的に見て,自分がどんな存在か

 ですから,彼女がケースカンファレンスに出した資料などは,主語と述語がねじれていたり,冗長に文章が長かったり句読点が打たれていなかったり,語彙が少ないので「しんどい」「くっつく」などの曖昧な口語表現が多かったりで,先生方も読みながらどんどん困惑した顔になることが多くありました。

 それを指摘,例えば「この部分は誰の発言ですか?」「ここは誰がどういった気持ちで言いましたか?」など聞かれると「そんなん言われると傷つきます」という感じです。
 

院生の書いたものを読んで添削してくれる先生も大変

 おそらく本人は,自分の文章が文法上間違っていることが分からないので,事実を指摘されることがショックだったんだと思います。また,もっと議論が深まって内面に関わる話の時も,彼女にとって心地よくない方向に行くと「傷つきます」と言うんですね。

 例えば,「頑張って書いたのでそんな言い方をされると悲しいです」とか「嫌な気持ちになります」だったら,議論は止まらないと思います。その上で,「悲しい気持ちにさせて悪かったね。これはこういう意味で言ったんだよ」などお互い思ったことの解説ができ,議論が深まっていくと思うのです。

深める,深まる。

 でも,「傷つきます」だと議論が止まってしまう。なぜなら,それはその場にいる者を「加害者」と「被害者」に分ける言葉だからです。加害者にされてしまった人は,それ以上何をしても「攻撃した」ことになるので,「黙る」以外の方法がないわけですね。「傷ついた」という言葉には相手を封じ込める魔法がある。

 また,「傷ついた」には言外に「だから傷をケアしろ」という意味を含みます。なので,「謝れ」とセットであることが多い。 

傷ついた!謝れ!

 と言うことは,です。「私は傷ついた!」という言葉は実は最強の武器,攻撃ではないかとも思うのです。圧倒的に自分を被害者にして,相手を加害者にすることで,それ以上拳を振り上げられないように縛り付け,なおかつ加害者相手になら被害者はどんな反撃をしても許される,つまり攻撃です。

 もちろん,これはフラットな関係性に限ります。

実際にいじめなどで「傷ついた」場合,犯罪や虐待など圧倒的に加害者と被害者がいる場合には「傷ついた」と言う言葉を用いることが適切だと考えています。この場合の加害者は,自分のしたことを振り返り,反省して「謝る」必要があります。
本来「傷ついた」という言葉はそれくらいの力関係がある場面で用いるものではないでしょうか。

傷つきにはケアが必要


 一方,本来謝る必要のない関係性に「傷ついた」を持ち込むと,「謝罪の要求」という攻撃になるわけですね。そうすると,加害者認定された側は「突然の攻撃を受けた」ショックから反撃に出る可能性があります。反撃の方法としては,直接的に言い返す他に「必要以上に黙る」「傷つくと言われたそれ以上に削除・訂正する」「傷つくらしいからやめましょうねと周囲に言いふらすことで孤立させる」という方法がありますね。
 実際,私は「傷ついた」と言われると,そのような反撃に出たくなります。だからこそ,そうしないために工夫をしています。

 それは,(事故や事件,いじめなど本当に傷つけてしまって謝罪の必要がある時以外は)安易に謝るのではなくて「それは,どういう気持ち?」「どうして,そう思ったの?」と丁寧に聞いていくことです。
 そうすることで,「傷ついた」の向こう側に触れることができます。安易に反撃しないことです。もちろん,びっくりするし,加害者認定されることは悲しいことですが,だからと言って「仕返し」に出ると,自体は混乱していき,結局酷い傷つけ合いになるだけです。

読んでくださってありがとうございました。



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