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【L'Arc-en-Ciel】30th L'Anniversary TOKYO DOME ライブレポート22/05/22

最初に記載しておきますが、これはただの1ファンの、記憶を残したい一心でメモをとり、記事に起こしたライブレポートです。
見逃している点も多いと思いますし、他の方の記憶と違う点があるかもしれませんが、損なう意図は全くありません。

私が参加できたのは2日目の日曜日のみでしたが、
「参加できて本当に良かった」と思うと同時に
「1日目にも参加したかった」
「参加したくても、参加できなかった人も多いだろう」という気持ちがこみ上げ、私の記憶、この記録が、参加した人にも、参加しなかった人にも、できなかった人にも、喜んでもらえるものであるよう祈ります。

あの場で、「何を見たのか」に徹するべきかとも考えましたが、
あの場で、「何を見て、何を感じて、何を思ったか、思い出したか」についても、自分のために忘れたくない気持ちがあり、個人的な回想や意見、記憶などを含めた記事となっております。

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開演時間の17時まであと20分。
物販で売られているツアーグッズのバット型の多色ライトをほとんどの来客が手に持って、様々な色の光がドーム全体にチラチラと明かりを灯している。

客電はまだ付いた状態で、自席を探す人が次々に入場を続けている中、下手側の客席でライトが一気に点くのが見えた。
下手側の花道の先には、数日前にネットで引退をほのめかされたラルクのキャラクター「シエルちゃん」。
花道の先に立って全方面に手を振り、客席を指さしながらその注目に手振りで応えている。
しばらくすると上手側の花道にも発表されたばかりのキャラクター「ルシエルちゃん」が登場。その背後のスクリーンで、「hyde主導の第二形態」と紹介文が流されている。

ツアーロゴと共に、Now Playingと表示されているのはCollective soulのOver Tokyo。
その次の曲は、Elise TrouwのHow to get what you want。
その次の曲は、Depeche ModeのCondamnation。
私が高校生の頃に見たラルクの会報で、hydeさんかtetsuさんがDepeche Modeが好きと言っていたことが思い出される。
そういえば、この日のSEはメンバー選曲によるものだとTwitterで見たことを思い出す。
注意深く画面を見ていると、曲が終わり、次の曲が始まる一瞬だけに「tetsuya selection」の文字が表示されるのを見て取ることができた。紹介されたのはFEVER333のBURN IT。
続いたのはhyde selectionでmy bloody valentineのonly shallow。イントロだけで聴き覚えのある曲が流されると予期していなかったので、嬉しい驚きがあった。hydeさん、マイブラ好きなんだなあと25年も見守っている中で初めて知ったような気がする。

17時ちょうどに、時計を見て息をひそめていた会場内にアナウンスが流れる。
発声禁止であること。終演後の規制退場のこと。カメラの映り込みの可能性があること。

アナウンスが終わり、再びメンバー選曲のSEに戻される。
次の曲はyukihiro selectionによるSaint AgnesのDaughter of Lucifer。
誰の選曲か見そびれたが、次の曲はCVLTEのhedonist。
曲が始まって数十秒の後、ふいに会場の照明が暗くなり、同時に前方のスクリーンに映像が映し出された。

1991.05.30からの1日ずつのカウントアップ。
催されてきたライブのタイトルが次々と重なる。それを合図としたかのように、客席で次々とライトに灯かりが点る。
アルバムジャケットのモチーフがザッピングされ、PV映像も重なっていき、1日ごとのカウントアップは続いていく。
客席は端から端までライトが点灯。55000人ほどのほとんどの人がライトを手に持ち、数秒の間にドームが光の花園に埋め尽くされる。

息を飲んで見守る中、スクリーンには「30th L‘Anniversary」の文字。
白いライトがステージを照らす。一斉に客席が立ち上がる。

1曲目は2021年発表の「ミライ」

ステージを包む檻のような囲いの向こうで演奏が始まる。
サビで青く染まる光。白く切り裂くライト。表示される「∞」のマーク。

今虹がかかり 一つに繋がる
君は頬をつねって「夢じゃない」

メンバーの姿は見えない。白い光はドームの中に無数に拡散していく。
耳栓なしで痛くない音量。
初めてラルクを見に東京ドームに来たのは、2005年のASIA LIVEだったと思うが、一階席だったその時よりも、二階席の端っこの今回の方が、ずっとずっと会場が小さく、メンバーが近く思えた。
虹がスクリーンに映される。切り裂く白い光。声を出せない客席から、さざめくような拍手が起きる。

2曲目はラルク再始動の象徴であり、代表曲の一つとも言える「Ready Steady Go」

視界を遮っていた檻が上がる。
メンバーの姿が、遠く小さく見える。スクリーンに映される彼らの姿を見て、「ラルクを見に来たんだ」という現実を確かめる。

イントロのフレーズで、銀テープが発射され、ステージ前の客席にきらきらと光を反射させながらゆっくりと降り注ぐ。
客席は緑一色の海原に。

うるさいくらいに張り裂けそうな鼓動の高鳴り

で胸が詰まるのを感じる。
一言一言を確かめ、意味を噛みしめるように耳を傾ける。
知っている歌詞の言葉。知っているフレーズ一つ一つの音の集まり。
そしてそれを確かめさせてくれる歌の力。演奏の力。
「Tokyo! Are you fucking ready?!」

ギターソロ。これまでの人生で、何百回も耳にしたフレーズと違うことなく、さらに存在感と魅力を増した音で、一つ一つの音まで丁寧に目の前で奏でられる音。

心は走る あの空の下
空回りする気持ちが叫び出すのを止められない
君まで届け きっとあと少し
熱く日差しが照らす この道の向こう Ready Steady Go

涙腺が緩む。言葉が、意味が、演奏が、ぐいぐいと体内に染み込むのが分かる。
確かめるよりも速い速度で、ラルクを聞いて生きてきた今までの人生が培った私の体の中へ、ぐいぐいと浸透していく、圧倒的な音と、意味と、歌と、目の前の現実。

気持ちが言葉になるより前に、体を突き上げる衝動になるのを感じる。
手を差し伸べたい。
会場を埋め尽くすライトのひとつになって、この空間の一部になることで私の人生という身を捧ぎたい。
息をするのも忘れて、ライトを差し伸べる。
瞬きをするのも惜しい。
言葉を忘れ、理性を忘れ、気が遠くなるほどの高揚。

曲が終わった時、真っ赤に染まった空間を見て、我に返った。

3曲目は「New World」

ここにある確かなリアリティ

歌いだしの歌詞に、今の私を射抜かれる。
hydeさんはゆっくりと歩いて、上手の花道の先へ来て歌う。

覚醒の声
闇を裂いて あふれ出した光 掴み掲げろ

カメラを覗き込むhydeさん。
スクリーンにその背後の客席を埋め尽くす、赤い光の海原が映る。
赤いライトを手にして、スクリーンに映る光の一つである私が、「今ここにいること」を不意に実感して、鳥肌が立つ。
カメラに向かってキスをするhydeさん。
その顔が大写しでスクリーンに映る。

映る残像 のフレーズでうつむいてギターをかき鳴らしているKenちゃん。

終わらない上昇
闇を裂いて 

の瞬間の爆発的な解放感。

君がくれた 声を抱いて 
高く高く羽ばたく

のフレーズが、客席一人一人に向けられたものだとハッとする。
一人一人全員に届く声。祈り。

目の前にある、この景色がNew Worldで、それを肯定する言葉だ。
今日ここに来られたこと。
来られないかもしれなかった55,000人のそれぞれの人生と、今までの30年を見守ってきたそれぞれの人生が、一つの場所で結晶するこの今という現実の景色。

hyde mc

「全員いる?」
振り向いたhydeさんがおもむろに話始める。
「アニバーサリーへようこそ。ラルクアンシエルです。よくきたね。
30周年の最後を飾る場所へやってきました。
かわいい声が聞けなくて残念ですが、体中を使って楽しんでいってください。
 やれるか東京! 一緒に楽園へ行きましょう」

4曲目は「SEVENTH HEAVEN」

黄色と紫のライトが会場を切り裂く。

我に続け さあ行こう 体中の殻を破り 
さらけ出す愛を繋ごう 抱きしめあい 確かめあい

客席は七色に染まる。
白と黄色の交差する光。

Kenちゃんのコーラスが映える。
君に最終的なQuestion からの Minute 31 で息が止まりそうになる。

間奏で鳥肌が立つ。
音がというか、曲が体にぐいぐい染みこんでいくのが分かる。
腰に手を当てて、堂々とした手招きをするhydeさん。
(スクリーンばっか見てちゃだめだ、肉眼で見えるところに本人がいる)とハッとする。

Under your feet

声が出せないのがもどかしい。
いつもなら、「Under your feet」は客席全体での大きなコーラスになっていた。
反射的に叫びたくなる気持ちを飲み込む。

ピンクと白のライト。

我に続け さあ行こう

声が伸びるアウトロ。
いっぱいに声が張られて、その張り詰められた強さのまま遠くへ広がって、空間いっぱいすみずみまでに届くのが見える。
その光景を、ただ、息を飲んで見つめた。

5曲目は「Lies and Truth」

クラシカルにも思える初期の、私が思春期だった頃に何百回も繰り返して聴いた曲だ。
客席が真っ青に染まる。

知ってるベースのフレーズ。
ギターのフレーズを細部までひとつずつ確かめる。
この曲を繰り返し繰り返し聴いていた、当時の私に、今日の日のことを教えてあげたいと思う。生きていると、信じられないくらいに美しい現実を目にするよと。当時、地方の学生でライブに行くことも叶わず、テレビで見ながら生で聞いてみたいと切望したこの曲が、大人になった私にもこれほどに届くこと。知識も自信もない子供ながらに縋るように信じた歌は、大人になっても強く強く信じ続けられる本物だったこと。

かわらず続いてる のフレーズで下手に向かって歩くhydeさん。
抱きしめていても で下手の端っこに到着。

ギターソロが、息を飲むほど、空間に映える。
知っているフレーズを耳にして、体全体が耳になる錯覚でKenちゃんの姿を視線で追う。

出口のない のところの会場全体の密封具合。
これほど広い場所なのに、閉じ込められている閉鎖空間であることにハッとする。

hydeさん、カメラを覗き込みながらのサビ。

君が届かない

ゆっくりとステージ中央へ歩を進める。
Kenちゃんのギターの圧倒的な描画の強さ。
知ってたけど、本当に鮮やかで優しくて迷いのない良いギターを弾く。

終曲の後の青い光のマラカスライトが空間を埋め尽くす光景。
それを切り裂く一本のオレンジの光。ステージから天井へ。
見ているうちにオレンジの光の本数が増え、交響楽の音が重なる
導かれるように、客席は数万のオレンジ色の光に包まれていく。

6曲目は「瞳の住人」

ギターの美しい静かなフレーズから始まる曲。
マイクスタンドを使いながら中央に立つhydeさん。
メンバーたちの背後のスクリーンには、霧の中の木漏れ日の景色。

スクリーンに映る歌うhydeさんの顔。
正面のマイクスタンドに向かいながら、その視線が、会場を端から端まで見渡していることに気付く。

どんな時も照らしてる
あの太陽のようになれたなら

このフレーズが、この会場にいる客一人一人の人生においての意味だと、そうに違いないと聞こえた。
既にそれぞれの人生の中で、ここにいる人は、ラルクの曲を杖にして、それぞれの長い人生を信じて生きてきたんだよと思う。
既にあなたたちは太陽であるし、ラルクアンシエルというバンドを太陽のように絶対的なものとして信じてきたんだよと強く思う。

時を止めてほしい 永遠に

差し込む一筋の光のような柔らかく美しいギターソロ。
その音に誘われるように、涙腺が緩むのを感じる。

hydeさんが、声で、歌で、祈りを捧げている姿を真剣に見守る。
この場にいることを、実感する。

終曲後の拍手。数万の数のマラカスが揺れて、さざめきが会場に静かに満ちる。

hyde mc

hydeさん「三十路になりました、ラルクアンシエルです。
もうすぐ31ですね。ずいぶん大人になってしまいました。」
「東京ドーム、近いね。全部見えるよ。」
「まだ外は明るいのかな。だんだん大人の時間になってくるよ」
「たくさんの人に来てもらって、55,000人?
 その人数が来るだけでもすごいんですけど、不思議なことに、みんなラルクが好きなんです。
 感謝しています。ありがとうね」

7曲目は「XXX」

「感謝を体で返したい」と言いながら始まった曲。
客席は紫一色に染まる。ステージは真っ赤。
1.2.3夢中へ の声の伸び。

Feel 愛おしいほどに
ねえ感じる so dizzy
Feel 切ない 息を忘れるほど
ねえ醒めない夢へと沈めてmy wish
ねえいつか羽化して蝶になったら
Darling もう帰れない

ステージで歌い、演奏する彼らの姿から目が離せない。
歌詞の通りで息をするのも忘れて、口を開けたまま見入ってしまう。
酸欠みたいな感覚になる。
赤いライトに照らされて染まるメンバー。

Everybody の絶対的な響き。
この場にいるすべての人が含まれている人としての原罪(Original Sin)。

ねえ願いを聞いて 
Dream 時間よ止まれ
ねえ瞳閉じたら きっとこれが
Darling 最後のキスなのね

アウトロのOriginal Sin のところの「ドーン」という音で、一回ごとに心臓をつかまれている実感。
最後の「ドーン」と同時に、スクリーン中央に曲名の「XXX」が大きく表示された。
息を飲む。夢中で飲み込まれていた一曲の幻が終わってしまったことに気付く。

8曲目はfate

冷たい空気を切り裂くようなギターの入り。
耳慣れたこの音階。薄暗い景色を思わせる冷たさ。

背景のスクリーンには青暗い針葉樹の林がシルエットで映り、今演奏されている曲が懐かしく良く知っている曲fateだという現実をやっと自覚する。
緑一色の客席。青に染まるステージ。

ああ 遠ざかる光

青に染まって、hydeさんが、ステージのどこにいるのかわからない。
ただ、その声と。その祈りにも似た存在感の強さが、東京ドームの空間いっぱいに満ちる。

切ない程に君を想って
この腕が この胸が

何が愛なのか? 何が嘘なのか?
解らない 無情な時間が迫る

ギターソロが美しい。息を飲むほどに。「やばい」とメモに残してある。
運命を運命づける、神様の手のような旋律。
その裏側で鳴り続けている鼓動のようなベース。
淡々と世界を構築する端正な仕事をするドラム。

春が来れば 夜が明ければ
あの空へ あの場所で

フレーズごとの言葉が胸の奥まで刺さるように届く。
映画を見ている時のようだ、とぼんやりと思う。

本当に結ばれるだろうか の歌い方が、一音ごとに区切るような強さで
その歌の、音の、言葉の意味が、えぐい程の強さで存在したこと目に焼き付ける。
耐えていないと、歌の、音の、世界に飲み込まれて息ができずに溺れてしまいそうだ。
考えるよりも先に涙が出てきてしまう。

脈動のような曲の静かな終わり。
音もなくステージの上に、1曲目に下ろされていた柵が降下する。

9曲目はfinale

印象的な第一音に続き、にじむオルガンの音が空気を染める。
ラルクの曲の中でも指折りで好きで、ずっと聴きたいと思っていたfinaleだ。

ぼんやりしてしまっているうちに曲も演奏もどんどん進んでいってしまう。
私はもっとこの時間を、ずっと待っていたこの曲の演奏を、生で聴いている現実を、もっと大切にしないといけないのに。一秒すら見逃したくはないのに。

下から上に舞い上がる光の映像が柵に映る。
赤が水彩みたいに滲んでゆっくりと広がっていく。
客席は真っ赤に染まっている。我に返って、焦って自分のライトを赤に切り替える。

この愛は誰にも触れさせない
それが神に背くことであろうと

歌う姿が見えない。
なのに、声が強く張られると、寒くもないのに鳥肌が立つ。
目を離せない。
白い水の飛沫が下から上に上がり最後のサビが入る。

終幕へ向かう日差しの中 
まぶしすぎて明日が見えない
振り向いた君は時を止めて 
見つめているあどけない少女のまま

個人的な話で恐縮だが
もう十年以上も前になるが、ラルクの曲をお題とした小説募集があり
当時大学生だった私は、この曲を題材に選んで短編小説を書いた。
誰にも気を許さず孤独に暮らす月夜の絵ばかり描いている画家が、居候する大学生の「僕」に打ち明けた恋の話。
夢の中でしか会えない少女と、その少女に命すら捧げようとしている画家の恋。
その話を描いていた時期、本当にこの曲を1曲リピートで朝から晩まで聴き続けていた時の記憶。
小説を書き始めて間もない頃の私が、必死に書き上げたその短編は
結局賞を戴くことはなかったけれど、あの作品と向き合った時間は私にとって尊く大切なものだった。そんなことを思い出す。

この曲が聴けて良かった。
今日足を運べてよかった。
滲んだように頭が回らない意識の中で、そんなことを想ったことを憶えている。

10曲目はmy heart draws a dream

ギターが大きく強く響く。
水中、深海のようだと思う。
光みたいな。水みたいな。
ギターの高音は高く遠く伸びていくのに、全然耳に痛くない。
柔らかで優しい音。

雷雨の音と映像。雷鳴。
光が差して、my heartのイントロが始まったところで、会場に自然に拍手がさざめいた。

柵が上がり、光があふれるなかで演じられたイントロで胸が詰まる。
透き通りながら強く伸びていく光のようなリードギター。
客席は真っ青に染まる。

太陽を雲の先に感じる
たとえ逆風であろうと

夢を描いていくよ のところで揺らがない勇気と確信を覚える。

My heart~ のところで背後のスクリーンに大きな文字で
My heart draws a dream と示された。
曲のタイトルを掲示しているというよりは、それは宣誓の言葉に見えた。

前のめりで目を上げず、淡々とドラムをたたくyukihiroさん。

さあ 手を伸ばし 
今 解き放とう
心は誰にも縛れはしない 
視線は日差しをとらえてる
どんな醒めた世界でも

視線は のところで手を伸ばし、客席を指さして見回すhydeさん。

誰もみな夢を描くよ 
夢を描くよ 夢を描くよ
Our heart draws a dream

声を出せない規制の中、会場の中いっぱいに、ハミングが凪いだ海のように広がる。
イヤモニを外し、それに丁寧に耳を傾けるhydeさん。
無声のハミングが、祈りの青い光が、東京ドームを埋め尽くす。
しばらく続いたその時間、泣きそうになりながら無心に祈った。

ken mc

「mcでーす。
人間30年もバンドやってると、いろいろあるんです。
ハミングよりもマラカスのカチャカチャのほうが大きいこともある。
こないだ夜ね、目をつぶってお腹を揉んでたらおっぱいに思えるかなと思って
気分を出すためにお腹にブラしてみたんです。でも全然おっぱいだと思えなくて」

「みんな、自分のおなか揉んで。おっぱいだと思えた人は青。思えない人は赤。」
会場が概ね赤に染まる。
「思える人いるじゃん。思える人、コツ教えて」

「あとね、ネイルしてきてる人。この中に居るから、カメラさん客席映して見つけて」
「全カメラ、爪探して。ネイルの人。自分だと思う人、黄色のライト付けて合図。」
カメラが右往左往しながら客席を映す。
高く掲げられた一人の女性の綺麗な手がスクリーンに大写しになる。
hydeさん「ネイルって言うか、きれいな手ですね」
kenちゃん「メンバー映してたらええってもんじゃないよ!
 躍動感がある客を映して。カメラ」
hydeさん「Kenさんの言うことはぜったーい」

Kenちゃん「おれの力なんてこんなもんすよ!
 じゃあメンバーへの念力テスト。クイズは簡単すぎ。
 hydeさん、色想像して。ゆったあかん。何色でしょーうか?」
客席がそれぞれに色を選びライトを掲げる。
hydeさん「オレンジ」
Kenちゃん「hydeファンで、オレンジ以外の人、なーんもわかってない
……おれの言うことなんて、全部忘れてね。ふきぬける風のように。
 tetsuyaさん、何かの色」
客席は大半が黄色に染まる。
Kenちゃん「バナナだからって黄色って安易な」
tetsuyaさん「みどり」
Kenちゃん「昨日黄色ばっかだった。難しいですよ、ここから
 Yukihiroさん、……顔出してくれました」
客席がライトの色を選びなおす。
Yukihiroさん「白」
Kenちゃん「白あるっけ」
Hydeさん「白ない」
Kenちゃん「白、違うライト? 消せばいい?」
Hydeさん「すごい雑」

Kenちゃん「30年。みんなありがとう~」
Hydeさん「ひっくるめて雑や」
Kenちゃん「みんながいたから今日があるんだな。
 これからも、腰の曲がるまで歩もうじゃないか!」

11曲目はdriver’s high

さきほどまでのmcで、感動していた空気は一掃。
仕切り直すようなエンジン音に続き、ステージ中央辺りでは炎が吹き上げられて、中空に花火が上がる。

疾走する車の映像がスクリーンに映り、黄色と赤の色がステージを染める。
カメラに向かって歌うhydeさん。

街を追い越して この世の果てまで
ぶっ飛ばして心中しよう さあ手を伸ばして

Clash! Flash! のところで、思わず声を上げそうになる。
従来ならサビのここは客席が叫んで、タイミングを合わせて手を伸ばし、高く飛び上がる箇所だ。

空気を切り裂いていく鮮やかなギターソロ。
ギターがやばい。
赤一色に染まる、
hydeさんは下手に歩き、kenちゃんは上手の花道へ。

もうかぞえるくらい でtetsuyaさんの肩に手を置くhydeさん。

必死にステージを見つめながらメモを取っていた私も、最後のサビで居ても立っても居られなくなり、ノートを置いてライトを必死にステージに掲げた。
伸ばせるだけ手を伸ばして、光を振る。
この高揚に乗りきらなくて、ラルクのライブに来たなんて言えない。
私が確かめるべきは、この忘我の時間だと思う。それは毎回のこと。

続いたのは12曲目Pretty girl

女の子のシルエットのグラフィティが七色に映し出される。
紫一色に染まる客席。
足を広げて覗く景色は のところでKenちゃんの足の間から覗いて歌うhydeさん。

Take it Take it がやたら胸に刺さる。
hydeさんは上手の花道の端っこで乗り出して、客席を見渡して、指をさして踊る。
必死に差し出すマラカスライトの中で、粒の重さがザラザラと転がって揺れるのを感じる。
カメラを覗き込み、舌なめずりをするhydeさんがスクリーンに映り、終曲。

13曲目はStay away

ベースソロ。緑に染まる客席。
黄色い光に誘われるように一気に曲が始まる。
コラボした不二家のペコちゃんに模したメンバーのアバターがスクリーンで踊る。

焼き増しの世界には惹かれないから
君の未来はあっち
さあtrying trying in yourself

Bother meでhydeさんがカメラを覗き込み、スクリーンにドアップになる。
ギターソロの疾走感。

この歌は、他人の介入を拒む歌なのかと思っていたけれど
間違っていたんだ、と感じる。
この歌は、勇気づけるための歌だ。
みんなそれぞれの自分の人生をがんばろう、という勇気づけが体に染みこんでくる。
一点を見つめて歌うhydeさん。
客席はテンションが高い。

14曲目はHONEY

発声禁止ながら歓声が漏れる。オレンジの光。
hydeさんはマイクスタンドに向かって立ち、ギターをかきならして歌う。

I want to fly の裏声の柔らかさ。
Yukihiroさんは、ずっとしっかり仕事をしている。
kenちゃんのコーラスの声が通る。

身体に広がる暖かさに気付く。これは感動だ、と実感する。
気付くと客席は真っ黄色のライトに包まれていた。

15曲目はいばらの涙。

炎。ピアノの音。紫に染まるステージ。
真っ赤に染まる客席。

焚かれている炎と、歌うhydeさんの姿が重ねられてスクリーンに映る。
サビでステージ中央に炎が燃え上がる。
私がいた二階席の端まで、その熱が伝わってくる。
赤いレーザー。客席は真っ赤に染まった海みたいだった。

天が舞い降りて 悪戯に楽しむのか
全てが平伏すまで
荊にまみれたこの血が枯れ果てても
貴方への心を抱いて

炎上していく青緑色の荊の城壁。
青いレーザー。
息を飲んで見守る、赤い景色。

燃えゆく身体は灰になって奪われても
汚れてなかったなら
その時は貴方が連れて行って
そしてそっと抱いて

アウトロのギター。
スカーフを手にし、それを高く掲げてたなびかせるhydeさん。

16曲目はShout at the devil

赤い景色のまま、旗を背負って歌っている横顔の一瞬が、綺麗で息を飲んだ。

願いよ今 この手を導け
偽りの輝き 吹き消して見せよう
その力が汚れて見えても
真実の旗 振りかざせ

旗を振りかざすhydeさん。
火花と炎。赤いレーザー。
目のマークのモチーフが画面に映し出される。
赤く染まる雲。

ステージ上空で上げられる金色の花火。
ドラムソロ。叩いている体の軸が一切ブレていないyukihiroさんの姿。
シンバルの数がすごく多い。ざっとみて15個くらいありそう。

うっすらとハウリングしていた音が止まり、終曲。
開演前に写されていた30th LIVEのロゴが映し出され、休憩だと理解する。
会場内は暗いまま。

「意外と2時間くらい経ってる」と近くの席から会話が聞こえてくる。
どこからともなく始まるアンコールを求めるまばらな拍手。

前方のスクリーンには、宇宙の映像が映し出されている。
闇の中の光。流れていく光。紫色の光が、場内の上空を回遊する。
まばゆさを感じて、自分のいる場所にライトが当たっていること、自分がこの場所の一部に含まれていることに気付く。

映像はこれまでのアルバムジャケットのモチーフだと、SMILEで気付く。

会場の暗さが保たれた中で、ざわっと客席から歓声が漏れた。
声のした方向へ顔を上げると、ステージ上手の上空に、ピーナツ型の飛行船が音もなく飛び始めたことが見て取れた。
1999年7月発売のアルバムarkのジャケットにある箱舟だ、と気付くのに時間はかからなかった。

闇の中、白く、青く、紫に照らされながら、ゆっくり箱舟は客席の頭上を回遊する。
客席の上をゆっくりした速度で、曲線をなぞるようにふんわりと進む。
それ越しの七色に光る客席がスクリーンに映る。
その光の一つである自分を自覚する。

箱舟は、客席後方にゆっくりと下降。
光が付いて、拍手が起きる。
陰になっていたその場所はドラムセットが置かれており、サブステージであることが分かった。

hydeさんが客席を見回して「うれしい?」と話し始める。
「飛行船に乗ってきました。着陸むつかしいみたいで。99年のアルバムarkのジャケットに出てくるやつなんだけど、当時、ノストラダムスの大予言でこの世が終わるかもしれないっていうので、あの飛行船に乗って脱出しようという計画がありました。ラルクに」
「20数年たって、やっと完成しました。死ななくてよかったね。じゃあなんで作ったんや、っていう。今日のためにか」
「ここで3曲やろうと思います。
 次の曲は何色、というかこれしかない。水色ある? 水色にしましょう」
ビニール傘を取り出して差す。
「雨が降ってきた」

サブステージでの1曲目(通算17曲目)はsingin’ in the rain


紫のライトがサブステージを照らす。場内は水色一色に塗りつぶされる。
メンバーはその場に腰を掛け、演奏が始まった。

軽快な、はじける雨粒のようなジャズピアノ。
腰を掛けた姿勢のまま、Kenちゃんの弾くトリッキーなギターに思わず二度見する。
ギターソロも湿度と重みを含んだ音。
ビニール傘を肩に乗せたまま歌うhydeさん。
職人みたいに訥々と仕事をこなしてゆくyukihiroさん。
華やかさをまとわせるベースラインを生み出し続けているTetsuyaさん。

いつまでも降り続け 心へ
君の好きだった雨に優しく包まれて
素敵な歌は今でも流れてくるよ
I’m just singin’ in the rain with you

よく知っていた同曲と同じとは思えないほどの繊細できめ細やかな情報量。
空気感。
湿度も気温も変わっていないはずなのに、曲ひとつで会場の中は静かな雨の日を迎えた。

hydeさん「最近は雨が多いですよね。僕、好きなんです。
外に居るとウザいんですけど。家に居ると、空気が洗われていくみたいで。
嵐みたいなのもいいですね。
この曲で少しでも好きになってくれればと思います。」
「次の曲は、そうですね。
 席の番号が奇数の人は赤、偶数はオレンジで。」
「(客席の灯かりをぐるりと見まわして)すごいね、みんなの真ん中にいるみたい。きれいだね、眺めが。」
「この曲、僕作ったんだっけ? ……Kenさんです」
「歴史を感じるような歌詞の内容だったので。夢に向かっていくような」
「投票で、比較的上位だったんだよね?」

サブステージでの2曲目(通算18曲目)はLOST HEAVEN

手を伸ばし掴んだ夢はそっと 崩れゆく砂の城
ただ立ち尽くしてた別れ道 微笑みを残して
消えていった 君が描く楽園へと

座ったまま歌っているのに、声の伸びに鳥肌が立つ。
サビの最後のWe’re letting to of something we never had のところ。

二つ目の歌声としてのギターソロだ、と感じた。

Hydeさん「マラカス持ってくれてありがとうね。スマホのライト、点けてもらえる?」
会場全体に強く白く明るい光が海のように広がる。
「ね、きれいでしょ。ステージから見てるとロマンチックな。
 平和を願って、星空を」

サブステージでの3曲目(通算19曲目)は星空。

つまびかれるギターが、ウエットで重さのある音で美しく静かに響く。

小さな喜びは瓦礫の上
星を見る僕は ここで生まれた

ねえ 鮮やかな夢見る世界へと
目覚めたら変わっていると良いな

金色の光が、ドームの客席一面を埋め尽くして静かに揺れる。
対面側の半面はすごくきれいな光の海だけど、自分の側の光は見えない。
一面の光の海を見回せたのは、中央に立つメンバーたちだけなのだ。

窓辺に貼ってある君の街
そこはどれくらい遠くに在るの

Nobody knows, Nobody cares のフレーズで
今までの人生の中で見た情景がフラッシュバックする。
過去のライブで見た会場を埋め尽くす祈りの景色。
キャンプの夜に見た、信じられないような星空。
何百回も繰り返し見たheavenlyのライブビデオの、武道館の中央で回るミラーボールに反射する光と小さな閉鎖宇宙のような空間。
いつ見たのか分からないような、夜行バスの窓から見た遠くに光る夜景の灯かり。
ラルクを見るために、遠くの街に遠征する途中の夜だったかもしれない。

それに続く
I have lost everything to bombs
でこの曲が、戦争を歌ったものだったことを思い出す。

言葉にならない気持ちで、会場を埋め尽くす光の海を眺める。
ここには祈りしかない。
大切にしたい日常の、結晶とでも言うべき日が今日であると、この場にいる人は全員思っていると思う。
失われたくないもの。大切にしたいもの。
戦争というと、自分とは無関係だと思いながら日常を過ごしている私だけれど
失われるものの結晶をこんな風に見せられてしまうと、言葉を失ってしまった。

サブステージの中央で、正面だけではなく自分を取り巻く数万の光が点る四方へ向いて、語り掛けるように手を伸べて歌うhydeさん。

ねえ降り注ぐ夜空が綺麗だよ
いつの日にか君にも見せたいから
目覚めたら変わっていると良いな
争いの終わった世界へと

白く丸い光に見えていた数万の光が、ひとつひとつが星形に滲んでいる。
自分が涙ぐんでいることに気付く。
立ち尽くして見守ることしかできない。息をするのを忘れそうな密度。

終曲の後、hydeさんがyukihiroさんと肩を組んで客席を見回し、歓声が上がる。
Yukihiroさんがhydeさんの肩に顔を埋め、hydeさんが犬をなでるようにわしわしと頭を撫でまわしていた。

しばらくしてark号はゆっくりとメインステージへ近付き、下手の奥へ姿を消した。
スクリーンに「WAVE GAME」と示される。
上手端から、下手端までスタンドのみで一周。
下手端から、上手端までスタンドのみで一周。
下手端から、上手端までスタンドのみで一周。
上手端から、下手端までスタンドのみで一周。
両端からスタンド中央へ向かい、アリーナ後方からステージ前まで。
再度、両端からスタンド中央へ向かい、アリーナ後方からステージ前まで。
スクリーンに都度表示される色を見て、自分のいる場所の色へとライトを調整し、会場全体がひとつのレインボーカラーに包まれて波打っていくのを見守る時間。

波が終わるとGREAT と表示され、メインステージに明かりが灯った。

メインステージに戻ってからの1曲目(通算では20曲目)は2021年リリースの新曲Forever。

暗闇の背景の星空の映像が、スクリーンに映し出される。
客席は、WAVE GAMEの名残で七色に染まったまま。
白い光が切り裂く。闇の中に舞い散る光。

言葉が傷を癒して 時が痛みを包んで
重ねた温もりで 目の前の霧が晴れるよ
温かい気持ちが澄み切った星空 天に紡いで
Forever

服装が変わっていることに気付く。
毛皮を着たKenちゃんのギターソロ。
hydeさんは白ジャケットと、クロスのピアス。
Tetsuyaさんはカラフルなシャツ。
yukihiroさんは白いシャツ。

サビの入りで、hydeさんがしたマイクスタンドを蹴り上げる仕草に目を惹かれた。
力強く、運命を意志の力で跳ね返すような。
そんなイメージが重ねて見えた。

大人になると、薄っぺらな「永遠」を信じなくなっていくけれど
その代わりに、どんな悲しみも乗り越えていけるということを知って
その上で「永遠」を願えるようになるのかと、ぼんやりと思った。

続いて始まった21曲目は予感。

インディーズ時代の曲で、メジャーリリース音源には採録されるまで含まれていなかったかつては幻だった曲だ。
今のラルクには用いられないアナログなギターの音。
イスラムタイルのようなオリエンタル模様がスクリーンに映される。
そういえば、昔の彼らは異国感のあるオリエンタルさが特色の一つだったことを思い出す。
髪が長くて、白い服を着たメンバーたち。
繊細な印象の昔のロゴに象徴される、遠い国の儚げな物語のような曲たち。
私も、当時ライブに足を運ぶことは叶わなかったけれど、そんな彼らの作る世界に焦がれた少女時代を送った一人ではある。

春の日 あなたは風に身を任せ
回り舞い この空にそっと消えていった

30年前のラルクアンシエルが、大阪の数百人キャパのライブハウスで、この曲を演奏していたことを思う。
今はもうない難波のロケッツしか、私は訪れたことがないけれど、最前列の柵が十人ちょいで埋まってしまう場所だったような気がする。
調べてみるとスタンディングのキャパは300人だったらしい。
当時のラルクの姿を思い描いて、目の前のドームで55000人を前に、同じ曲を演奏している30年の時を越えて、当時は想像していなかっただろうくらいに大きな存在になった現在の彼らのことを思う。

小さな箱で、ぎゅうぎゅうになったお客さんを熱狂させるための曲というのはある。
大きなホールで、または巨大なドームでこそ映える壮大な曲というものもある。
曲の作り方も、歌詞で書くべきことも、演出の仕方も全てが全く違う前提で、現在の55000人を前にした東京ドームで、当時の曲を忠実に再現することで、小さなライブハウスではなくドームを同じ密度で、説得力を持って染め切るということは、ちょっとすさまじいことなんじゃないかと思う。

同じことをやり続けていたら、きっと彼らは今の彼らではなかっただろう。
それが良いとか悪いとかではなくて、現在の彼らが、私たちの前に存在していることが本当に貴重なことに思えた。
それを離れたりもしながら見守り、同じ時間を彼らとともに人生として重ねてきた人はこの会場の中に、本当にたくさんいるだろうと思う。

当時の原曲に忠実で、レトロでストレートな音作り。ヴォーカリストとして当時とはくらべものにならないくらい強くなった現在のhydeさんが大切に歌う、当時の曲。
それを、見届けられて、よかったなあと、胸が熱くなるのを感じた。

続いて22曲目は、デビュー1枚目のシングルBlurry eyes。

耳慣れたイントロが始まった数秒後、ふいに演奏が止まる。
hydeさん「今、何かありましたか? ……なんかあったみたいですね」
普段あまり見かけない状況に、機材トラブルでも起きたのかとステージを注視すると、ドラムセットの奥でyukihiroさんが立ち上がり、両手を合わせて何度も頭を下げているのが見えた。
しばらくの後に、hydeさんは「じゃあ、行きます?」と仕切り直して、再度開始。

客席は一面の青。
イントロで吹いたホイッスルを、hydeさんが投げる。これも30年近く前の当時から、アンコールに用いられやすいこの歌のトレードマークとも言えるシーンだ。

メリーゴーランドの映像がスクリーンに映される。
(としまえんだと長く伝えられてきたPVのメリーゴーランドは、よみうりランドのものらしい、という話を思い出す)

耳慣れた音。耳慣れた曲。

めぐりくる季節に約束を奪われそう
この両手 差し伸べても心は離れて

耳慣れたギターソロの音階に続く、象徴的なTetsuyaさんのコーラス。

Why do you stare at the sky with your blurry eyes?

ギターソロの間に下手に進んでいたhydeさんが、このコーラスをするTetsuyaさんと肩を組んで、一つのマイクに向かって歌っていたことが印象深い。

演奏が止まる。

Tetsuya mc

「ヤッホー、お元気?」
「さっき、客席が虹っぽくなってた。昨日も。すごいねー!
 映像チーム、3日徹夜したみたいよ、ありがとう」
「見とれてたら演奏間違いました」
「こんな景色が見られるのは、バンド名があるからじゃない? 付けてよかったなって」
「あとね、ファンの子もそうかもだけど、カラフルなもの見ると『買わなきゃ』と思ってしまうよね」
「あと、東京のコロナ対策が、虹マークなんだよね。さっき車から見えたよね、hydeさん」

「30年も愛され続けるバンドになれてうれしいな。
 一度しか言わんから聴いて。ラルクを好きになってくれて、ありがとうー!」

「続き聴きたい?」からのホイッスル、ギターソロで、Blurry eyesの演奏再開。
この曲も、ライブハウスでやっていたような曲なんだなあ、とぼんやりと思う。

続いて、23曲目はGOOD LUCK MY WAY

hydeさんにスポット「最後にはじけようぜ東京! ジャンプジャンプ」
壮大で、現在の彼らの歌う希望と光に溢れた印象的な曲だ。

まっすぐに駆け出す 晴れ渡る青空がまぶしい
追い風に煽られ 新しい旅が始まる
いつかまた会えるよう 振り返らずに明日へ向かうよ
GOOD LUCK MY WAY 信じる道へ

この日、東京ドームに集まった55,000人の人々が、また再会できる未来を信じて
間もなく訪れるライブの終わった世界で、それぞれの日常へ帰っていく。
一緒に居られる時間の終わりが近づくタイミングでのこの曲は、言葉を選べずに言うと、涙腺に来た。

ほらもう怖くはない 明日何が起こっても
乗り越えられそう ここまで躓いても来れたから

このフレーズで上手の花道の端っこでTetsuyaさんと肩を組み、一つのカメラにおさまって歌うhydeさん。
平坦ではなかったこの三十年を乗り越えた初期メンバー二人の、互いへの信頼を形にして見せてくれたようなシーンだった。

移りゆく世界の片隅で君に会えて嬉しい
溢れそうな想いを言葉にできなかったよ
いつかまた会えたら もっと上手く伝えられるかな
GOOD LUCK MY WAY 微笑みかけて

この場所への祝福。この時間への祝福。この場所にいる一人一人への祝福。
もうすぐ終わってしまうこの愛に満ちた空間への祝福と感謝。

ギターソロが最高。全てを調和させて織り込んで祝福に昇華するような時間だった。

SMILE AT ME のワンフレーズの強さ。
祈りの結晶みたいな言葉だと思う。

hydeさん「ありがとう。すごい今、いい眺め。
 ただの光じゃなくて、ひとつひとつが、ここまで辿り着いてる。
 ここまで来てくれてうれしい。記憶に残る、感動的な、いい眺め。ありがとう」

「次の曲で最後なんだけど、声が出せなくても、伝わりました。
 ここまで来るのがなかなか奇跡的な、助けられたり、努力して
 みんながいたから、辿り着けていて。」

「こんな大きな会場でも、声が出なかったこともあるし。
 Tetsuyaはステージから落ちることもあったし
 Kenちゃんは銀テープに撃たれたこともあったね
 長いことやっていると、今日みたいにゆっきーが間違えることもあります
 30年、やってないと見れませんでしたからね、ゆきひろさんが間違うところ」

「そういうの見れてよかったね」
「つらい時に止めてたら、悔しい、悲しい記憶だけが残るでしょ
 乗り越えたら、こんな素敵な景色が見えるんです
 連れてきてくれて、ありがとうございます」

「30周年、大変な時期もあって。
 でも。虹は雨が止むときに出るんです。
 最後に、虹を聴いてください」

24曲目、最後の曲は、バンド名であり象徴である曲、虹

第一音の「ドーン」で真っ白な光が差し、それが虹色に。
両手でマイクを支えて、精いっぱいまで声を張って歌うhydeさん。

誰より高く 空へと近付く
輝きを集め 光を求める
燃え尽きても 構わないさ
全ては 真実と共にある

誰より高く のところでステージ奥に虹が架かる。
ギターソロがやばい。
高く高く伸びる音が、透明で柔らかい。

それでも思う あなたのことを
季節が流れていても
目を閉じて いつも見てた風景のように
何度目かの雨も上がった

切ない人よ 叶わぬ願いよ
なぜこの胸から愛は生まれていく?
咲き乱れた 花は揺れて
沈んだ大地に 降り注ぐ

歩き出したその瞳へ
終わらない未来を 捧げよう

ステージ前の客席に白い羽が降り注ぐ。
その影が下から光に写されて、ドームの天井に影を映す。

客席は自主的に先ほどのWAVE GAMEの色に自らのライトを点して
会場全体を大きな虹色に染めた。

その真ん中に立って、広く広く両手を広げるhydeさん。
客席の頭上へ、舞い落ちる羽を見ている。

終演後、スモークに包まれた会場の中、柔らかい音でEnyaのbook of daysが流れ始める。
これも昔から続いているラルクの定番だ。

hydeさんは、会場に向けて投げキスをしている。
「また会えるまで、みんな、元気で過ごしてください」
「次は一緒に歌おうや」

Tetsuyaさんは自撮り棒を掲げてスマホで写真を撮っている様子。
上手端から、下手の端まで歩き
「1回しか言わんから、よく聴いて。
 初めて言うけど、みんな! ラルクを好きになってくれて、ありがとうー!」
会場から、拍手とマラカスのさざめき、光が呼応するように揺れた。

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この記事を目にした貴方に、楽しんでいただけますように。

そして、素晴らしい日と、素晴らしいL’Arc-en -Cielというバンドの存在に、心から感謝を申し上げたいと思います。
素晴らしい日を、ありがとうございました。
30周年本当におめでとうございます。

■追記

終演後に、ラルク公式から上がっていた写真を引用させていただきます。

各メディアから上がっているライブレポートに、この日の素晴らしい写真が多く掲載されていますので、引用させていただきます。


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