レビュー

前作同様笑いが多く、時に怖いシーンやサプライズもあり、エンタメ映画として純粋に優れている。エンドゲーム後の作品でスケールのでかさでは勝負できない中、ストーリーとメタ的な構造が完璧に機能していた。

オープニングの追悼は感動するけどそのクオリティに笑ってしまうという絶妙なバランス。その後の消えた五年問題の説明もだけど、ジョン・ワッツは良い意味でMCUを客観的に俯瞰して見ている。だからこそ毎作映画としてバランスの良い作品に仕上がっている。

ドローンが登場するシーンがとても現実感強いというか、ニール・ブロムカンプ監督作品を観ているような生々しさがあった。それがファンタジー的なトリックの場面と対比されているのも見事。

個人的に1番テンションが上がったのが、機内でのスーツ製造からのハッピーの選曲！
作成してるピーターをトニーに重ねるハッピーの表情がグッとくるし、あれは観客の目線と同じという意味でも感動する。そしてハッピーの選曲でAC/DC！　からのピーターのコメント、「ツェッペリン最高！」に爆笑した。
自分は作中のピーターではなくトムホと同じ年代だけど、周りで全く同じ勘違いしてる人見かけるので、あるあるという意味でも笑える。

ミステリオの完璧な配役

今作は何より、ジェイクギレンホール＝ミステリオの配役が完璧。

原作を少しでもかじっていれば、絶対途中で裏切るやつやん！とわかっているので、そこをどう見せるのかの問題になってくる。ただその見せ方がこれ以上なく上手い。

今作の白眉、正体が分かるバーの場面。楽勝だったろ？と言いニヤリと笑う変貌ぶり。演技・演出が噛み合い素晴らしい場面に仕上がっていた。
逆に原作を全く知らない人からしたら、きちんと先輩ヒーローにも見えるという絶妙なバランス感も良かった。

個人的には、ナイトクローラーの時くらい振り切ってサイコ感出してくれても良かったけど、さすがにMCUにはキツすぎる。笑

ミステリオによるトリックの場面が、観客までクラクラさせられる映像で本当に素晴らしい。ニックに助けられたと思いきやそうでなくて、という展開もテンポが良くてつい騙されてしまう。その後に列車に轢かれて車内で気を失うまでの流れが、光の使い方もあって若干のホラー感あり。

問題の(？)ラストシーン

脚本家が、とにかくリスクのある展開にしろ！と言われて見切り発車でピーターの正体をバラした、というエピソードが面白い。その後の展開はこれから考えます！という脚本家泣かせな状況。

実際最初この場面を見た時も、これ今後どうなるの？と全く予想もつかず。というかむしろ今後の展開に不安しかなかった。笑

ただノーウェイホームを見た後、よくここまでまとめたなと感心。正体がバレたことを皮切りに、それ以上にとんでもない展開が続いていくという方向に。

こうやって観客の感情を手のひらで転がし続けるMCU、悔しいと思いながらもつい追ってしまう。