仁科雅朋

経営コンサルタント&ビジネス書作家&エッセイスト。『グチ活会議』(日本…

仁科雅朋

経営コンサルタント&ビジネス書作家&エッセイスト。『グチ活会議』(日本経済新聞出版)『心理的安全性がつくりだす組織の未来』(産業能率大学出版部)『組織改革のプロ・コンサルが教える 会社が生まれ変わる5時間授業』(スタンダーズ)3冊を出版。電子書籍多数。

最近の記事

『出張先の背徳めし』

 出張先ではホテルで朝食を食べることが多い。大抵はビュッフェスタイルで、その土地の郷土料理を盛り込んだものもある。日常はわりと、食事には気を使いながら、なるべく偏らないように、カロリーを気にしながらの食生活を送っている。  しかし、いざ出張に出かけると、普段の節制気味な生活のタガが外れてしまうようだ。  先日も群馬県で朝から仕事があり、前橋駅前のビジネスホテルに宿泊した。朝4時に起きて仕事の準備をした後、最上階にある露天風呂に入り、眼下の街並みを一望した。その日はとても晴

    • 『まほろ成吾の町田めし』

       『おっさんのいぶくろ』の著者である、まほろ成吾はペンネームであり、3人の共著である。つまり3人のおっさんがひとつのテーマに対してそれぞれエッセイを書いている。この3人が久しぶりに故郷の町田で飯を喰うことになった。共通点は3人とも勤め人ではないので、比較的融通が利く身であるということだ。その日は平日の午後2時に「いくどん町田駅前店」に集合した。  店は平日の昼間にも関わらず満席で、そのまま2階の座敷に通された。靴を脱いで上っていくと、既に2人は席についていた。普段はリモート

      • 『私の特別な朝食』

         私はコメダ珈琲のモーニングが好きだ。朝7時から開店しているのも魅力の一つ。  出張先での朝のルーティンは、当日の仕事の予習をすることと、一日の段取りを頭の中でイメージすること。そして最後に心の中で「今日も実りのある一日になりますように。自分に関わるすべての人にとって価値ある一日となりますように」と唱えてから、仕事場へと向かう。  こんな具合に朝の時間を大切にしたいタイプなので、落ち着いてこのルーティンができる場所を選ぶようにしている。  もう30年前になるが、私はかつ

        • 『究極の弁当』

           私の友人に弁当にかなり詳しい人物がいる。彼は仕事の関係で弁当の差し入れをすることが多かったようで、やがて弁当の魅力にはまり、究極の一品を探し求めているという弁当オタクだ。今回のお題が「弁当」に決まったので、その友人に連絡を取り、飲みに誘った。  彼はスマートフォンの中の色とりどりの弁当を見せながら、熱心に弁当の魅力を語ってくれた。しばらく講釈が続いた後、少し考えた末にこう言った。 「そうだな。究極の弁当として俺が勧めるとしたら、銀座梅林のとんかつ弁当だな。梅林の弁当はね

        『出張先の背徳めし』

          『発作的に食べたくなるアレ』

             私の家にはテレビがないので、かわりにYouTubeをよく見る。お笑い系や、スピリチャル系も好きなのだが、気がつくと「大食い」やASMR(咀嚼音)の動画を見入っていることが多い。  大食い動画ではカレー、ラーメン、揚げ物など6、7kgもある巨大な山を、一人で平らげる猛者もいる。私も40代までは、ごはんも麺も常に大盛で、体重が90kg近くあった。  50歳を超えてからは、70kg前半まで体重を落とし、今では一日2食で胃袋が小さくなり、とても大盛など食べれない。  おか

          『発作的に食べたくなるアレ』

          私のソウルフードはあの「町田の老舗炭焼きホルモン屋」

           初めて焼肉屋に行ったのは、小学校4年生の頃。JR町田駅の商店街に『モランボン』ができて、家族で食べに行った。これが私の焼肉デビューの思い出だ。  店内は明るくキレイで、鉄板を下からバーナーで焼くタイプの店。なんだかとても高級なお店に来たようで、ちょっと誇らしく、ワクワクしたのを覚えている。その時、親父も初めてだったのか、メニューを一瞥すると「任せる」と母に注文を丸投げ。  母は一通りメニューを眺めると、カルビやタンなどを手際よく注文した。母はすでに焼肉屋の経験があるのか

          私のソウルフードはあの「町田の老舗炭焼きホルモン屋」

          『ラーメン』から学んだ私の人生哲学

           私は幼少の頃よりラーメンが好きだった。休日のデパートのレストランに入っても、家族で旅行にいった先でも、注文するのはいつも決まってラーメン。  母からは、「どこでもラーメンばかり食べてないで、たまにはその土地やお店の名物を食べてみなさい」と言われたこともあった。しかしそういわれても当時の私はラーメンにしか興味がなかった。  そのうち、他の物を食べない嗜好に不安を覚えたのか、ある日、母が勝手に天ぷらそばを注文したことがあった。しかし大好きなラーメンを食べれない事への反発から

          『ラーメン』から学んだ私の人生哲学

          12月19日発売 新刊「まえがき」を公開

          今年の年末にスタンダーズから上梓します 『組織改革のプロ・コンサルが教える会社が生まれ変わる5時間授業』のまえがきを投稿します。 コンサル現場のリアルを再現しました。 そして20年のコンサルノウハウの集大成として書き下ろしました。 ご興味を頂き、発売後に本編にお進み頂ければ幸いです。 ーまえがきー この本は、会社を変えたいと切に願う経営者や、もっと組織の生産性を上げたいと考えている管理職の方々、さらにはチームのやる気を高めて、やり甲斐のある職場に変えたいと願う全てのリ

          12月19日発売 新刊「まえがき」を公開

          『失恋レストラン』

          僕の失恋レストランは、勝浦の海沿いのカフェバーだ。学生の頃の甘く切ない思い出。サークルの合宿の時から、ひそかに思いを寄せていた1年先輩の彼女。ロックできっぷのいい姉御肌。 些細なことで友人と喧嘩をし、気持ちが落ち込んでいたあの日。「何を暗い顔をしてるんだい、君は!」と背中をポンっと叩かれ、振り返った瞬間から僕の彼女への恋は始まった。 その後は何度か飲みに行って、はしご酒をした夜もある。ある夜、彼女は道端で大の字に寝ころび、「おい、まだまだ飲むぞ~」と叫びながら寝てしまった

          『失恋レストラン』

          『立喰いそば』

          僕がまだ小学1年生くらいだったと思う。国鉄の原町田駅(現在のJR町田駅)前のバス停の横に「大関」という立喰いそば屋があった。当時はまだ背が低くて、立ちテーブルの下にある荷物棚に、鉢を置いて、背伸びしながら、そばをすすっていたのを覚えている。 小学生の高学年になるとゲームセンターに入り浸り、ゲームの合間に隣の「大関」の立喰いそばを食べていた。その頃、もっぱら注文していたのは「かけそば」だ。一杯が200円くらいだったと思う。その時はゲームにお金を投入することを最優先していた為、

          『立喰いそば』

          『人生最後の一食』

          もし死ぬ前になんでも好きな食事ができるとしたら、何が食べたいのだろうか。この問いについては、何度か考えたことがある。母のカレーも良し、父の田舎の郷土料理の「鯉こく」も懐かしい。 もし夏なら、学生の頃に良く通った町田駅前のホルモン屋「いくどん」もいい。真夏に七輪を囲み、額から滴り落ちる汗をTシャツで拭いながら、生ビールを片手にシロとハツ、ミノを網にドバっとのせて、焦げないように、せわしなく転がしながら焼く。ガツガツと食べ、ぐびぐびと飲む。   あの身体に悪そうなオレンジ色の

          『人生最後の一食』

           『調味料』

          「空腹が最大の調味料」であるといったのは、かの古代ギリシャ哲学者のソクラテスでした。この言葉はキケロの「至善至悪論」に引用されています。脳科学的にも、空腹時は、脳の血糖値が低下し、神経細胞が活性化することで味覚が敏感になるということが分かっています。 調味料というと、味の素を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。私は元々味の素に勤めていたこともあり、調味料に関しては多少知識があります。グルタミン酸ナトリウムをはじめ、中華系、塩、和風だし系など様々な調味料を研究していまし

           『調味料』

           『ひとり飯』

          仕事の出張の夜は、ひとりで飯を食うことになる。特に翌日に仕事を控え、前乗りした日は、ほぼ100%ひとり飯になる。僕はこの時間が好きだ。ひとりで、何を食べようと誰からも何も言われない。自分だけの時間、自分だけのわがままが許されるひととき。  先日、宮崎の都城へ出張にいった。もうかれこれ10年ぶりくらいの宮崎での仕事。当日は、お昼過ぎに宮崎空港に到着して、レンタカーで移動。青く広がる真夏の空に、もくもくと広がる白い雲の下、山間の高速道路を一時間ほど走り、都城のホテルに到着した。

           『ひとり飯』

          『なつかしの味』

          私の母方の田舎は福島県の須賀川にあった。子供の頃、夏休みになると毎年田舎に帰り、近所の友達とカブトムシを捕まえたり、公園のプールで水遊びを楽しんだり、かくれんぼをして遊びまくった。あの頃の夏は、今でも鮮明に覚えているくらいに猛暑だった。上半身裸で駆け回り、真っ黒に日焼けして、肌がひりひりした。時折、水風呂で涼を取ることもあった。 ある日、扇風機の前でドラえもんの第3巻を読んでいると、野菜売りのおばあちゃんが現れた。「ごめんなはんしょ」と言いながら、玄関に野菜を並べ始めた。う

          『なつかしの味』

           『最初の一品』

           飲食店が多い街、中目黒。私はかれこれ20年以上この街に通っている。仕事帰りの夜、自分だけのひと時を求めて馴染みの店ののれんをくぐる。お気に入りは線路沿いの「ごっつぁん」という炉端焼き屋。この店はいつも温かく出迎えてくれるおかみさんと、小柄で気さくな店主、そして「かなめ」という息子の3人で営んでいた。  一皿はどれも350円。この街にしては財布に優しく、いつも常連でにぎわっていた。炉端を囲むように丸椅子が並ぶ9席ほどのカウンターと、4人掛けの小さなテーブルが3つというこじん

           『最初の一品』

          ノンジャッジメントという生き方

          ジャッジをしないということは?私は幸福度は人間関係性の質で決まると思っている。しかし、そうはいってもこれが簡単なら誰でも幸せになれるのだが、心が介在する限り一筋縄でいかない。なぜなら、人は出会ったその瞬間から「第一印象」を持ってしまい、無意識に「決めつけ」というラベリングを始めるからだ。 ・好きか、嫌いか。 ・味方か、敵か。 ・上か下か。 ・良い人か、悪い人か。 ・出来るやつか、出来ないやつか。 心の性質を一言で述べるなら、それは共鳴するか、反発するかのどちらかだ。つまり相

          ノンジャッジメントという生き方