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【スポーツ現場必須知識】本当に怖い脳震盪を探る

こんにちは!!

イクサポです!

まずセミナーのお知らせです^^
Physio365の購読者の方限定で5/29(土)にセミナー開催します!!

体幹トレーニングについて運動制御の視点から考えていきます。
スポーツ選手にも高齢者にも応用できる考え方なので、臨床でバンバン使ってくださいね!
背景となる理論とともにトレーニング例もたくさん紹介するので、ぜひ使ってもらえたらと思います!!

お楽しみに!!


それでは本題に移ります!!
今回は脳震盪についてです!

スポーツ現場では、よく生じるものですが臨床現場での遭遇はなかなかないんじゃないでしょうか?

しかし、タイトルにもあるように本当に怖いんです。

この記事をみてください。

脳震盪の後遺症から引退したラグビー選手の経過が綴られています。

また最近では、相撲界で脳震盪後に急性呼吸不全で亡くなった力士の方もいました。


このように一歩間違えれば死にも繋がる脳震盪について皆さんにも知ってほしいと思い、記事にしました!

それではいきましょう!!


脳震盪の定義

目の前で脳震盪と疑われる選手が出ました。
あなたは的確な対応ができるでしょうか?
また、脳震盪とは何か説明ができるでしょうか?

正直なかなか難しいですよね。

日本サッカー協会(JFA)の脳震盪の定義は以下になります。

「脳振盪(のうしんとう)とは、頭を強くぶつけたり、揺さぶられたりすると、脳にひずみが生じることによって意識がなくなったり、記憶を失ったりするもの」

なんとなくわかるようなわからないような内容ですね。

この定義を知った上で、もう少し具体的な内容に触れてもらいたいと思います。

世界では「スポーツおける脳震盪に関する国際会議」が2001年から開催されています。直近では2016年に開催され、脳震盪の特徴を定めています。以下一部抜粋です。

・「脳震盪は頭部、顔面、頸部への直接的な打撲もしくは頭部へ伝播する他部位への衝撃によって生じる」

・「急性期の臨床症状は解剖学的障害よりも機能的障害を反映しており、一般的な神経画像検査では異常は見られない。」

つまり脳震盪は頭部への接触だけで起こるものではないことや病院を受診し問題がないという判断だけで脳震盪を否定できない可能性が考えられます。

また脳震盪といえば頭痛や吐き気などを思い浮かべるかもしれませんが症状は多岐に及び、セカンドインパクト症候群として知られるように再発時の死亡率は非常に高率であり危険です。

脳震盪に対する常識というものは日々更新されるため選手を守るために学び続けなくてはなりません!

次に脳震盪後の対応について書いていきます!!


脳震盪の対応

何よりもまず

「プレーを一旦中止させる」

これが第1ステップです。

※その後脊髄損傷の評価をしましょう。特に倒れている選手には要注意し、安全を確保するために頭頚部固定から行いましょう。

安全を確保できたらプロコトルや診断ツールに沿って脳震盪かどうか判断をしましょう。

CRT5(現時点での最新版)を参照して進めましょう。
これは脳震盪の評価ツールになります!SCAT5とも言われますね!

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またこのような簡易版も今は作成されています。

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ここで重要なのは症状が多岐に及ぶことを理解しておくこと。
少し症状をまとめただけでもこのくらいあります。

・意識を失う
・頭痛
・めまい
・かすみ目(視界が霧がかかったようになる)
・バランスがとれない
・光(太陽や蛍光灯)を見ると気分が悪くなる
・騒音で気分が悪くなる
・何もかもがゆっくりに感じる
・首の痛み
・疲労感
・混乱
・眠気
・すぐ感情的になる
・怒りっぽい・短気
・不安・悲しみ・神経質になる
・吐き気や嘔吐
・手・腕・足などのマヒ
・耳鳴り
・集中できない

正直怒りっぽいとか集中できないとか見逃してしまいそうですよね。

また、「脳しんとう=意識を失うこと」と思っている人もいるかもしれませんが、意識を失う・失わないは、脳振盪の診断をする上で一切関係がありません。

調査によれば、脳振盪になった人で意識を失うのは10%以下と言われており、90%以上の人は、意識は失わずとも脳しんとうの診断を受けています。

頭を強く打ったけど意識がはっきりしてるから大丈夫、ではないのです。上に挙げた症状があらわれていないか、しっかりとチェックしましょう。

そして素早く医療機関を受診しましょう!
この時、脳神経外科など専門医がいる病院やクリニックにいくことをおすすめします。



そして、もう1つ基準を持ちましょう。

「疑わしきはプレー回避」

プレー継続が最低限許可できるのは脳震盪が疑われるが全く症状のない場合のみと考えていいと思います。
理由として脳の複雑な構造からどのような症状が出てもおかしくないためです。

脳震盪後の対応としてはプレー離脱後は24時間の間、一人にしないようにしましょう。
→脳出血で突然倒れることがあるため

また脳震盪が疑われた際には、病院受診を必ずさせるようにしましょう。
→脳出血(特に急性硬膜下出血)によって死に至るケースがあるため。

次にプレー復帰についてです!


脳震盪後のプレー復帰

プレー復帰に関しては

・Stageを6段階クリアすること(GRTPで検索)
・各ステージにて最低一日を費やす必要があること(1日にStageを2つこなすことは不可能)
・イニシャルレストと呼ばれる受傷後の完全休養は24~48時間程度取ることが有益とされることが多い(Stage1に該当)
・例えばラグビーではリハビリを医師が管理しない場合最低3週間は競技復帰は不可

以上になります。

細かくみていきましょう!!

まず、一番有名な復帰プロトコルとしてGRTPがあります。
これは、段階的競技復帰プロトコルと呼ばれており、ステージが1~6段階まで定められています。

❶運動活動なし:症状がなくなるまではここの段階
❷軽い有酸素運動:ウォーキング・ジョギング・エクササイズバイク・スイミングなどを10〜20分
❸スポーツ特有の運動:素振りや軽いベースランニング(野球), ドリブルやバス練習(サッカー・バスケなど)
❹3よりも複雑なドリル練習(コンタクトはなし):ドリブル・パスをしながらシュート(サッカー), サーキットトレーニングなど
❺フルコンタクト練習:すべての練習に参加
❻復帰


日本サッカー協会でもGRTPが設定されています。

【ステージ1】完全休息
脳振盪と診断されたら、お医者さんから「動き始めていいよ」と言われるまではステージ1となり、運動は禁止です。普通に日常生活を送りながら、脳と身体を休ませます。

【ステージ2】軽い有酸素運動
完全に脳振盪に関連した症状やサインがなくなり、お医者さんによって「動き始めていいよ」という許可が下りたら、まずは軽い有酸素運動から始めます。

「軽い」というのはどれくらいの強度かと言うと、「最大心拍数の70%以下の強度」と示されています。この強度は、米国アスレティックトレーナー協会が発表している脳振盪に関する論文でも同じように示されています。

その人の最大心拍数は「220-年齢」で求めます。もしその選手が18歳であれば、220から18を引くと202なので、その選手の最大心拍数は202である、と推測されます。

これの70%以下の強度でこのステージ2の運動は行われるべきなので、「202 × 0.7=141.4」となり、1分間の心拍数が141よりも多くならないような強度で有酸素運動を行いましょう、ということになります。

特に「何分」行うという表記はないのですが、「歩行(もしくは少し早歩き)」「水泳」「エアロバイク」などを10〜20分ほど行えば良いと思います。あまり長くやるのはやめましょう。

このステージ2の軽い有酸素運動をしている最中に脳振盪の症状(頭痛・吐き気・クラクラするなど)が現れたら、すぐに運動はストップしましょう。まだ脳や身体は脳振盪から完全に回復をしていない、というサインです。

お医者さんに「軽い有酸素運動をしたら頭が痛くなりました」などとちゃんと伝え、判断を仰ぎましょう。

基本的には、脳振盪の症状が出た場合は、最低24時間は休み、1つ前のステージに戻ります。つまり、ステージ2の軽い有酸素運動の最中、もしくは運動後に脳振盪の症状が現れたら、ステージ1に戻る=医者の許可が出るまで運動を開始してはいけない、ということになります。


【ステージ3】スポーツ特有の運動(他人との接触は避ける)
ステージ2の軽い有酸素運動を行ったら24時間休息の時間をとります。この間は運動を行ってはいけません。この24時間の休息中に脳振盪の症状がまったく現れなかったら、ステージ3に進みます。

ステージ3では、スポーツで行う動きをステージ2よりも少し強度を上げて行います。サッカーの場合は「軽いジョギング・ランニング」「自分一人でのドリブル練習(対人はNG)」「リフティング」など、一人で行える練習で、サッカー特有の軽い運動を行います。

時間の長さは、ステージ2よりは長めに行っても良いですが、30分前後が良いでしょう。上記しましたが、運動中に脳振盪の症状が現れたらすぐに運動はストップ。ステージ3の運動後も、24時間は休息の時間です。


【ステージ4】接触なしの複雑な運動 & ウエイトトレーニング
ステージ3を行ってから24時間何も症状が出なかった場合に限り、ステージ4に進みます。ここでもまだ接触プレーは避けますが、相手をおいてのスポーツの練習を行います。サッカーで言うと「パス練習」「相手を前においてのシュート練習(接触はNG)」などですかね。

あとは、普段ウエイトトレーニング(筋トレ)などをしている選手・チームの場合は、このステージ4からウエイトトレーニングを開始しても大丈夫です。

いきなり高負荷で行うのはもちろん避けますが、軽い重量でその選手が慣れているトレーニングを数種目行わせましょう。


【ステージ5】接触プレーを含めた練習
何度も何度も言っていますが、ステージ間は必ず24時間以上の休息を挟み、脳振盪の症状が出ないかを確認します。出なかった場合のみ、次のステージに進みます。

ステージ5では、いよいよ通常のサッカー練習を行います。

トレーナーや指導者は、あらかじめチームメンバーにこの選手の状況について伝え、違う色のビブスなどをその選手に身につけさせて誰でも一目でわかるようにして、激しいタックルなどはその選手には行わないように指示します。ですが、軽い接触プレーはこのステージまで来たら問題ありません。

「ヘディング」などの頭を使ったプレーも始めます。もし練習中に脳振盪の症状が出てきたらすぐにやめて休みましょう。


【ステージ6】完全復帰
ステージ5での通常練習を無事に症状なしで終えて、その後の24時間でも症状がまったく出てこなければ、完全に復帰となります。お医者さんに経過を伝え、必要ならば診察を受けましょう。

ここまで段階的に強度を上げていき、症状がまったく出なければ、脳や身体は脳振盪から完全に回復したと考えられるため、試合への参加もオッケーとなります(医師の判断は必ず仰ぎます)。

このようにしっかりとした復帰段階を踏んだ上で、復帰まで持っていきます!!


また大切なこととして、

患者が若ければ若いほど、脳しんとうになってからの回復に時間がかかります。

そのため、中学生や高校生の方がより長い休息期間が必要となります。
早く練習に復帰したいと言うかもしれませんが、脳が完全に回復する前にまた衝撃を加えてしまうと取り返しのつかないことになる可能性もあるので、長い休息期間を与えるようつとめてください。


セカンドインパクトシンドローム


セカンド・インパクト・シンドロームとは、

最初の脳しんとうからまだ脳が完全に回復する前に(まだ症状が残っているのに)、2回目の衝撃を脳に与えて、再び脳しんとうになってしまうことをいいます。

これをしてしまうと、脳内の腫れが更にひろがってしまい、かなり悪化させることになります。

このセカンド・インパクト・シンドロームは、1回目に受けた衝撃と比べてはるかに弱い衝撃でも起こってしまいます。そして、1回目よりもはるかに症状がひどくなり、回復もかなり遅くなります。

そういう理由で、脳しんとうになってしまったらそれ以上脳に衝撃を与えないように、練習をやめて休む必要があるのです。

脳しんとうになって最初にできる、今考えられているベストなケアは「休むこと」です。身体的にも精神的にも休むことが大切で、疲労を与えるようなことや、頭に衝撃を与えるようなことは絶対に避けましょう。


まとめ

脳震盪は極めて繊細な怪我ですので慎重に対応していく必要があります。
基礎知識をもった上で、スポーツ現場で活動することが大切ですね。

また、スポーツに関わりのない方も最低限の情報は理解しておき、周りでなった方がいたときは迅速に対応できるようにしておくといいですね!

今回は以上になります!ありがとうございました!!


〜ライタープロフィール〜

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イクサポ
理学療法士・アスレティックトレーナー!!
日本一に輝いた大学サッカーチームの専属トレーナーとして、日本トップレベルの選手のトレーニングや治療を担当。その他、育成年代のトレーニングサポートを行うべく "イクサポ "を立ち上げ、情報発信中!!

公式Twitter : イクサポ 


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