鶴池柾叡, PhD, ATC

研究成果に基づいた投球障害肩・肘予防トレーニング専門パーソナルトレーナー。アメリカで1…

鶴池柾叡, PhD, ATC

研究成果に基づいた投球障害肩・肘予防トレーニング専門パーソナルトレーナー。アメリカで10年間の大学院教育と研究活動の経験をセミナー、コンサルティングで発信中 元大阪体育大学教授 昭和大学兼任講師 サンノゼ州立大学Emeritus https://water-holder.com

マガジン

  • MLBのトミー・ジョン術ー大谷選手の肘をエビデンスでひも解く

    野球肘で最も多い手術がトミー・ジョンと呼ばれている肘の内側側副靭帯の損傷による再建術です。1974年にFrank J. Jobe医師によって初めて執刀され、その時の患者がメジャーリーグ(MLB)のTommy John投手でした。彼は手術後にMLBで164勝を挙げ、このことからトミー・ジョン術と呼ばれるようになりました。肘の内側側副靭帯は前腕小指側の尺骨(ulna)に付いていることからアメリカではUCL(ulnar collateral ligament)と呼び、その損傷をUCL損傷、トミー・ジョン術あるいはUCL再建術と呼んでいます。 マガジンでは、MLBのトミー・ジョン術の現状、UCL再々建術(2回目のトミー・ジョン術)、復帰率をエビデンスから説明しています。 野球に興味ある方、トミー・ジョン術に関心ある臨床家、大谷翔平選手の肘の行方に興味ある方に一読していただければと思っています。

  • 筋肉の張り解消法ー上行路、脳内物質の仕組みからひも解く

    スポーツの試合の後、肩や腰、でん部などの筋肉が張り、動くどころか起き上がることもままならないことがあります。 シーズン中なら次の試合のスケジュールが決まっています。選手は筋肉の張りを解消しモチベーションを高める必要があります。 筋肉の張りの解消法をご紹介します。解消法と言っても、種目やスポーツ、日程などによって変わり、あくまでも汎用の考え方ですが、経験に基づいて応用していただければと思っています。 1)ゲートコントロール理論 2)下行性鎮痛システム 3)筋スパズム 4)網様体脊髄路パターン 5)水風呂でノルエピネフリン放出

  • 神経科学からみたエクササイズー下行路の仕組み

    エクササイズのパターンを神経学的な視点で理解することができるなら、さまざまなエクササイズも解釈でき、さらにエクササイズを創意工夫できるのではないかと思います。 マガジンでは6つパターンの下行路について説明しています。下行路とは大脳皮質から指令する随意運動と脳幹で随意運動を補助する対応型、さらに大脳皮質の指令を調節する小脳が組み合わさったものです。 脳幹あるいは小脳は運動中に送られてくる末梢、前庭系、視覚の感覚情報を処理し、身体のバランスを維持しながら、上肢あるいは下肢の随意運動(エクササイズ)の達成を補助、調整しています。 さまざまな運動をしている愛好家、さらにスポーツ選手のリハビリ、リコンディショニングに関わっている専門家に是非購入していただければと思っています。

最近の記事

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肩の可動域と機能

私たちの肩 肩は凄い。なぜなら鎖骨が付いているかである。肩は私たちが動かすことのできる関節の中で最も大きく円を描けるような可動域をもっている。ラジオ体操第一でお馴染みの「腕を前から上げて」から「腕を横に大きく振って」も普通にできる。さらに背中をかくために内側に回旋もできる。車に乗ればシートベルトを片手でも取れる。昔で言えば腰に差した刀を抜くこともできる。野球の投球動作となれば、肩関節は後ろに回旋するのだが、投手なら過剰なまでに外旋する。それではこの可動域はどこから生まれている

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    • 高校生投手の球速と肘障害

      時速90マイル(144.8 km)アメリカの高校生投手にとって時速90マイル(144.8 km)をスカウトの前で投げることが一つの目標になっているかもしれない。そんな球速ブームの昨今に警鐘を鳴らすかのような高校生投手の球速90マイルとトミー・ジョン術の関係を示した論文がある。 投手全体の27%がトミー・ジョン術 2010-2020年の間にメジャーリーグベースボール(MLB)の5巡までにドラフトされた投手845名の後ろ向き研究によると全体の27% にあたる229名がトミー・

      • 運動スキルから選手のパフォーマンス

        運動スキル習得人はボールを投げたり、野球ならバッドで投げられたボール打ち返したり、テニスのサーブさらに剣道や弓道など運動のスキル習得で競い合う。運動スキルとは目的のために各関節を動かす随意運動のことであり、パフォーマンスのことである。 スキル習得には段階があり、始めに頭で動かし方を理解し、運動達成までの一連の流れを学ぶ。次に一連の流れを実際に行い、頭で理解していたこととの違いを知る。習得したいスキルにもよるが簡単にまねができる動きもあれば、すぐにできないスキルもある。 タイ

        • 動体視力を高めるためには

          目から入ってくる情報は後頭部にある脳(後頭葉あるいは視覚野)に届けられ、そこから情報は側頭部にある脳(側頭葉)あるいは頭頂部にある脳(頭頂葉)で分析されます。側頭葉に送られる情報は文字やカラー、意味など静止した情報を処理し、頭頂部では動いている視界情報を処理します。 走っている車などの情報は動いているので頭頂部で処理されますが、自らも運転していて前方の車が同じスピードなら「静止」状態になり得ます。静止した視覚情報なら側頭葉から必要に応じ前頭部の脳(前頭葉)へと送られます。前頭

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        • MLBのトミー・ジョン術ー大谷選手の肘をエビデンスでひも解く
          7本
          ¥500
        • 筋肉の張り解消法ー上行路、脳内物質の仕組みからひも解く
          6本
          ¥300
        • 神経科学からみたエクササイズー下行路の仕組み
          6本
          ¥300

        記事

          投球障害肩予防トレーニング」セミナー

          3月27日から6月12日までの11回シリーズセミナー開催のご案内です。 開催趣旨 エビデンスに基づいた投球障害肩・肘予防の知識と神経科学視点のエクササイズスキル向上を目的に開催します。資格、免許取得後の自己研磨、リスキリングに役立つ理論と実技を提供します。 講師 鶴池柾叡、PhD, BOC-ATC, JSPO-AT(元米国カリフォルニア・サンノゼ州立大学大学院アスレティックトレーニング教育プログラム主任、元大阪体育大学教授、現昭和大学保健医療学部兼任講師、米国サンノゼ

          投球障害肩予防トレーニング」セミナー

          運動に関する神経科学・運動学習セミナー

          3月27日から6月12日までの11回シリーズセミナー開催のご案内です。 開催趣旨 エビデンスに基づいた投球障害肩・肘予防の知識と神経科学視点のエクササイズスキル向上を目的に開催します。資格、免許取得後の自己研磨、リスキリングに役立つ理論と実技を提供します。 講師 鶴池柾叡、PhD, BOC-ATC, JSPO-AT(元米国カリフォルニア・サンノゼ州立大学大学院アスレティックトレーニング教育プログラム主任、元大阪体育大学教授、現昭和大学保健医療学部兼任講師、米国サンノゼ

          運動に関する神経科学・運動学習セミナー

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          トレーニング・コンディショニング英語セミナー

          トレーニング・コンディショニング英語セミナー開催のご案内 <募集要項> 開催期間:3月22日から6月17日(計22回を予定) 開始曜日と時間:金曜日と月曜日、19:00-20:00時(各60分) 開催場所: 日本橋三井タワー6F 東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 開催方法:対面式 募集人数:8名(定員に達した時点で終了となります。) 受講料(各期固定) 1期:①3/22, ②3/25, ③3/29, ④4/1, ⑤4/5, ⑥4/8, ⑦4/12, ⑧4/15 2期:①4/19, ②4/22, ③5/10, ④513, ⑤5/17, ⑥5/20, ⑦5/24, ⑧5/27 3期:①5/31, ②6/3, ③6/7, ④6/10, ⑤6/14, ⑥6/17 1期、2期とも各8回分通し:24,000円(税込) 3期6回分通し:18,000円(税込) 講師:鶴池柾叡, アメリカで10年間大学専任教員 <トピックス> スポーツ外傷・障害予防トレーニング、コンディショニング、機能解剖学、運動学習、運動制御、運動に関する神経科学、リサーチなど セミナーでは最初の40分程度英語で説明、問題提起します。その後に受講生の皆さんと一緒に英語で質疑応答! 質疑応答や議論の深め方などの要領も高めていきます! セミナー中、英語での議論、質問に躊躇されたとしてもセミナー後に質問していただけます。(何よりも経験が大切!)セミナー後の確認や質問は英語、日本語どちらでも大丈夫です。 セミナーが金曜日、月曜日の開催なので週末の時間に英語の予習、復習ができます。英語は、慣れることから徐々に話し方のパターンを覚え、あとは発信するのみです。 受講してほしい方: トピックスに興味ある方!!! 英語は高校までで十分です。 今後、留学計画、海外出張、長期在外研究活動の計画ある方、外国人の選手、患者の需要がある臨床家、アスレティックトレーナーにお勧めです。 ホームページ: https://water-holder.com/english-session/ お申し込みこちら⇒https://forms.gle/LRjgtvLBSWUQvZha8

          トレーニング・コンディショニング英語セミナー

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          スポーツ選手のためのリハビリテーション研究会

          第41回研修会抄録集併載.アスレティック・リハビリテーション 20;2023:31. 投手のコンディショニング──投球障害肩の予測と予防背景 関節唇損傷で鏡視下修復術を受けた投手の復帰率は肘のトミー・ジョン術に比べ低く(Gilliam 2018)、これがプロ投手になればさらに低い(Fedoriw 2014)。同様に腱板損傷で鏡視下修復術を受けた投手の復帰率も40%以下である(Altintas 2020)。そこで投球障害肩の予測はできるのか、その表裏一体の予防を観点に投手

          スポーツ選手のためのリハビリテーション研究会

          投球肘・トミー・ジョン術の現状とその予後

          トミー・ジョン術2回目アメリカ・カリフォルニア時間の2023年8月19日に大谷翔平選手は2回目の尺側側副靭帯(UCL)(内側側副靭帯)再建術を受けました。MLB投手の26%、4人に1人以上は通称トミー・ジョン術と呼ばれる肘のUCL再建術を受けています。また再々建術(2回目)の割合は手術を受けたMLB投手の6%と言われていますがそれでも年に何億、何十億を稼ぎ出す投手にとって極めて深刻な問題です。しかも再々建術を要する選手は最初の再建術から3.8年とあくまでも平均ですが判明してい

          投球肘・トミー・ジョン術の現状とその予後

          投球障害肩予防トレーニング

          肩関節と投球動作身体の中で最も可動域のある肩はさまざまな運動を可能にしています。スポーツもその一つで特に投球やテニス、バトミントンのサーブ、バ`レーボールのアタックなどがそうです。 習慣性スポーツ活動は目的の運動に合わせて肩周辺の筋肉も発達させます。運動「スキル」が上達すれば最小限の筋力で運動の最大効果を発揮することができます。 運動学習 スキルを習得するには反復練習でフォームを確立することになります。特に投球やサーブのフォームは「クローズド・スキル」と呼ばれ、試合中

          投球障害肩予防トレーニング

          投球障害肘で前斜走靭帯(UCL)遠位部の損傷は致命的

          投球障害肘で前斜走靭帯(UCL)遠位部の損傷は致命的

          冷水vsお風呂

          冷水のエピネフリン冷水を浴びるのは2-3分で、水温は「冷たくて嫌だな、だけど2-3分ならなんとか浴びれそう」の温度です。人によってその感覚は異なります。また心筋梗塞の既往歴や恐れのある方にはお勧めできないです。冷水は水風呂に浸かってもシャワーで浴びても同様の効果が期待できます。 冷水の目的は脳内物質の活性です。皮膚、特に手や顔を通じての冷たさは脳内の中脳に位置する青斑核を刺激します。青斑核は「ノルエピネフリン」を放出します。ノルエピネフリン、ノルアドレナリンは呼び方は違いま

          最新UCL再建術ーハイブリッド術に迫る

          最新UCL再建術ーハイブリッド術に迫る

          アメリカ・プロ投手の尺側側副靭帯(UCL)再建術(トミージョン術)の現状

          アメリカ・プロ投手の尺側側副靭帯(UCL)再建術(トミージョン術)の現状

          神経科学からみたエクササイズ

          エクササイズエクササイズは、ある特定の目的を改善するための身体運動です。目的は、運動不足解消からプロポーション維持、アンチエイジングまでさまざまです。さらに怪我をして、痛みが解消したなら怪我の前のコンディションに戻すためにもエクササイズをします。 スポーツ選手なら怪我の予防のためにルーティンワークとしてエクササイズを行います。パフォーマンスに関するエクササイズなら筋力、瞬発力、跳躍力からパワー向上のために行い、個人のスポーツスキル向上に繋げます。パフォーマンスという全身か

          神経科学からみたエクササイズ

          神経科学からみたエクササイズー下行路の仕組みその6

          錐体外路補正運動は全く違えど姿勢制御のパターンは似ているなら運動間で応用が可能です。たとえばローラーブレーダーと一輪車は全く違う運動ですが、一方で前傾姿勢でバランスをとるところは良く似ています。このことから一つの運動が異なる運動のスキルに移すことが可能です。これを錐体外路の補正「Background correction」と言います。

          神経科学からみたエクササイズー下行路の仕組みその6