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商標調査を無料から有料に変更してみた感想


はじめに

こんにちは!商標登録サービス Toreru の宮崎です。
今日は商標調査を無料から有料に変更した経緯と、その後の感想についてお話しします。商標の無料調査は、特にインターネットで集客を行っている特許事務所でよく見られるビジネスモデルです。Toreruも、初めは無料調査を採用していました。

商標の無料調査とその背景

商標の無料調査は、調査を無料でする代わりに出願手数料や登録手数料で収益化する方法です。特に個人や中小企業にとっては、初めてのステップとしてお金をかけずに商標調査ができるのは魅力的ですよね。無料調査はマーケティング的には一定の効果があるため、5〜10年前には無料調査を活用して急速に拡大した事務所も少なくありません。

商標の無料調査の問題点を詳しく

無料の商標調査サービスは一見、魅力的に見えますが、実はいくつかの問題点があります。

クライアントに起こる問題点

まず、調査が無料だといっても、途中で出願をやめると調査手数料を取られるケースがあります。このような料金体系は、クライアントとトラブルを引き起こしやすいです。さらに、商標調査は商標登録の成功の90%を占めると思いますが、調査報告書が作成されないなど、その質が担保されていない可能性があります。
また、クライアントのブランディングに関する問題もあります。例えば、無料の調査では登録可能性の高い商標だけをおすすめされる可能性が高く、これがクライアントが本気でブランディングしたい場合には向いていません。加えて、登録手数料が不必要に高額に設定されることがあります。
また、調査だけをお願いしたい場合も頼みにくいこともあります。

弁理士に起こる問題点

弁理士にも問題があります。調査が無料だと、商標調査など質を高めるインセンティブが働きにくくなります。また、調査で収益を上げられないと、弁理士はその仕事に対するモチベーションが下がり、結果的に疲弊してしまうことがあります。

総合的な問題点

以上のような問題から、弁理士の最も価値のあるスキルである調査が無料化されると、本質的に弁理士の価値を高めることが難しくなります。

なぜ有料調査に変えたか:その背景と理由

Toreru が商標調査を有料に変更したのには3つの理由があります。

商標調査の質に自信があるから

まず一つ目は、自分達が提供する商標調査の質に自信があったためです。有料化でも十分な価値を提供できると思っていました。

価値と費用の一致

二つ目の理由は、サービスの価値と費用請求のポイントを合わせたかったからです。特に、登録手数料など価値の低い手続きは無料にしたかったのです。そのような手続きは、情報非対称性を利用したビジネスや文化に陥りがちです。また、有料化によって商標調査の質をさらに高める余地が生まれました。

弁理士の人数問題

最後に、依頼数の増加により、弁理士の人数が足りなくなってきたという実際の問題もあります。有料化によって、より質の高いサービスを提供するためのリソースを確保できるようになりました。
このような理由から、商標調査を有料にしました。これにより、クライアントにはより高品質なサービスを、そして弁理士にはより良い環境を提供できるようになりました。

良かった点と課題

有料調査に切り替えてから、顧客層が変わり、本気で商標登録を考えているクライアントが増えました。
売上も向上しています。
有料調査を途中でキャンセルする場合があるので、その返金対応が増えた点は課題です。(無料調査の場合は、途中でキャンセルしても返金作業はありませんでした。)

意外と変わらなかった点

一方で、集客数や顧客満足度に大きな変動はありませんでした。一部の顧客は離れましたが、新しい顧客が増えたのでバランスが取れています。

今後の予測

今後、無料調査のビジネスモデルは厳しくなると予測しています。
特に、特許庁の電子出願のAPIが完成すれば、誰でも簡単に出願手続きや登録手続きがウェブから申し込むことができるようになる可能性が高いためです。

さいごに

商標調査を有料化して、より良いサービスを提供することで、業界全体の品質を高める方向に進んでいけば良いなあと感じています。
最後までお読みいただきありがとうございました!


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