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【雑記】バラバラ大作戦の改編とTVerマイリスト登録者数

先日、テレ朝深夜のバラバラ大作戦の改編が発表された。

その内容が一部ファンの間で物議を醸しているらしい。
どうやら終了となる4番組はTVerのマイリスト登録者数だとバラバラ大作戦の全14番組の中では上位。
それを理由に「テレ朝の編成判断はおかしい!」となっているみたいだ。

ただ、個人的にはこの意見よくわからない点が少なくない。

そもそも論(前提)

まず大前提であるが

  • あなた個人がその番組を好きだということ

  • あなた以外の多くの人がその番組を好きだということ(その番組が人気コンテンツであること)

  • その番組がビジネスとして成果を上げていること

この3つは本質的には全く別物です。
あなた個人がその番組を好きだという気持ちは番組の大衆的人気やビジネス的成功とは無関係です。
好きなものは好きなのですから。
そして他者の好きもまたあなたの好きとは本質的には無関係です。

つまり本来は「好きな番組の終了が決まった。とても残念だ」という気持ちの吐露で終わるはず。
それがテレビ局への怒りや不信感に転じてしまうのは

  1. テレビ番組はビジネスなので存続のためには自分だけでなく多くの人に見てもらう必要があることを理解している。

  2. TVerのマイリスト登録者数という指標や自分のSNS観測範囲を見渡す限り、私の好きなこの番組は人気だ。

  3. それなのにテレ朝がこの番組の終了を決定したのは不可解かつ理不尽な仕打ちだ。

という論理なんじゃないかと思います。
しかし、そうなると次の疑問が湧いてきます。

マイリスト登録者数で番組存続が決まると誰が言い出したのか?

さすがにテレ朝は公式にこんな危ういことは言わないでしょう。
ハック可能な脆弱性を自ら明かすようなものですから。
仮に公式に言っていたら今回の改編内容よりそこが真っ先に批判されるべきな気がw

となると「番組が人気なら続く」という思考の末にどこからともなく出てきた仮説なのではないかと。
確かにTVerマイリスト登録者数は重要なKPIの1つではあると思います。
ただし必要条件であって十分条件ではない。

アクティブ率と成長率

番組の人気を測る上で外せない指標はこの2つではないでしょうか。

  • 再生数:そのままです。TVerをはじめとする見逃し配信サービスで毎週どれくらい見られているか。

  • 成長率:マイリスト登録と再生数がどれくらいのペースで伸びているか。

ところで皆さんもたまに

  • チャンネル登録者数の割に再生回数が少ないYouTube動画

  • フォロワー数の割にRTやいいねが少ないツイッターやインスタのアカウント

を見たことはありませんか?
あれがアクティブ率の低い例です。
つまり「マイリスト登録してくれた人の内、実際に見てくれている人がどれくらい存在するか?」
スマホのアプリ事業でよく使われる指標ですね。
ダウンロード数だけ見ていてもダメだよねと。
ダウンロードしたユーザーが全員毎日アプリを起動して使ってくれていたらアクティブ率は高くなります。
(アプリの性質によっては毎日じゃなくて毎月とかで計測する場合もあります)

TVerならマイリスト登録者数と再生回数を比較できれば算出可能です。
(マイリストに登録せず見る人もいるので厳密には「アクティブ率に準ずる数値」という感じですが)

この数字が低いのは黄色信号です。
最初は出演者のファンや見て面白いと感じた人がマイリスト登録したけど離れてしまっていると推察されるからです。
いわゆる下落傾向です。

成長率は定期観測で測れます。
マイリスト登録者数や再生回数をグラフ化したときに右肩上がりになっているかということですね。
営利企業の事業である限り成長は常に求められます。
あのNetflixでさえ成長が鈍化した途端に株価が暴落しました。

動画配信サービスの米ネットフリックスが20日発表した1-3月(第1四半期)の新規有料会員数は398万人と、市場予想と自社見通しをともに大きく下回った。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要を受けた急成長が突然止まった格好だ。株価は時間外取引で一時13%安と急落した。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-20/QRVPJCT1UM0W01

念のため補足すると上記の記事時点ではまだ会員数は増えています。
(この数ヶ月後の決算発表で会員数も減少に転じて更なる大暴落が待っていました)
事業を成長させ続けることがいかに重要視されているかが恐ろしいほどよく分かるエピソードです。

つまり、マイリスト登録者数は今ある14番組の中での相対的ランキング指標に使われるだけでなく「1年間やってきてこのぐらいか。まだ伸びしろがありそうだな/もう頭打ちだな」という形で継続・打ち切り・昇格の判断基準になるわけです。

ここまで読んで「でもTVerの再生回数なんて公開されてないのでは?」と思われた方、正解です。
つまり視聴者は再生回数という重要な指標を知ることが出来ません。
私が言いたいのは「再生回数を知れない以上、番組打ち切りが妥当なのか理不尽なのかを外から判断するのは困難」ということです。
もちろん「そんなことは百も承知だ。だから外から唯一知れるマイリスト登録者数の数字で議論をしているんだ」というのであれば私から言うことはありません。
無駄な議論だとは思いますが。

バラバラ大作戦はオーディション?

じゃあ数字を正解に知れないならバラバラ大作戦に文句を言っちゃいけないのか?と聞かれると、そんなことはありません。
ただし、個別の番組の存続・終了よりはこの枠全体の位置付けに着目した方が筋は良いかなと思います。
改編結果全体という客観的事実を基にできるためです。

今回の改編は「1年やってみてスーパーバラバラ大作戦に昇格できた番組以外は基本打ち切り」という非情な結果になっています。
(今回生き残ったのは『トゲアリトゲナシトゲトゲ』)
仮にそうだとすればかなり厳しいオーディションといえます。

ビジネス的には打席を増やして早期撤退していけばチャレンジの回数は増やせます。
で、金の卵が見つかったら上の時間帯に持っていく。
ここに対しては視聴者やファン目線、さらにはビジネス目線でも批判されるべき要素はあると考えます。
突くならここでしょう。

私個人は好きな芸人や好きな番組はあまり無くて「終わったらそれはその時だ」ぐらいのテンションではあるのですが、それでも半年スパンで視聴習慣を変えないといけないのには不満あります。
放送日がコロコロ変わるのは正直不便で定着させづらい。

曜日感覚って強いんですよね。
だからこそ『水曜日のダウンタウン』という命名は実に見事だと思います。

以上、批判する際は根拠や論点を整理しないと陰謀論と大差ない思い込みになってしまい、ひいてはファンダムの成熟を妨げる要因になりかねないと思うのでありました。

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