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セルフカバーアルバム【Some Flowers制作日記 その3】

■Chapter2 Heart of Gold 
「Heart of Gold」という、今から20年ぐらい前にぼくが作った曲がある。
俳優の葛山信吾くんと組んでいた、Bricksというユニットのレパートリーだった曲だ。

この曲は作曲と編曲はぼくで、作詞は秋谷銀四郎さんにお願いした。
秋谷さんは数々のアーティストに詞を提供している作詞家の方で、徳永英明、チャゲ&飛鳥、BEGIN、織田裕二、柳ジョージ、中村雅俊等々、数え上げたら枚挙にいとまがない。

ある日ぼーっとテレビを観ていたら、ぼくがあまり興味の無いミュージシャンが出ていた。
そのミュージシャンが「次の曲は今度出る新曲です」と言って歌い出した。
ぼくは「ふ〜ん、新曲なんだ、どれどれ」と、ほとんど冷やかしの気分で観ていた。

おもむろにそのミュージシャンが新曲を歌い出した。ギターが奏でるイントロのフレーズが始まった。
「へぇ〜、なかなかセンス良いじゃん」ぼくはまだ物見遊山の気分で観ていた。

やがて曲がAメロの部分に差し掛かる。「おっ、いきなりキャッチーなメロじゃん!」ぼくは50センチ程身を乗り出し、テレビに近づいた。

曲はBメロからサビの部分に差し掛かろうとしていた。「なんだかスゲ〜良い曲の予感がしてきた」その曲は詞もとても素敵だった。
その曲の一番が終わって二番に差し掛かる頃、ぼくはテレビを消して仕事部屋に飛んでいった。

何か体からメロディが湧いてくる感覚に襲われて、慌ててパソコンを立ち上げて、ピアノの前に座ってメロディを紡ぎ始めた。その素敵な曲にインスパイアされたぼくは、ゾーンに入っている感覚になっていた。

1時間もするとほぼ骨格となるメロディが出来上がった。ぼくはそのメロディをProtoolsに打ち込んで、今度はすぐにアレンジを考え始めた。

いったい何時間没頭していたのだろう?気がつくともう外は暗くなっていた。
どうやらそのくらい作業に集中していたらしい。その日に予定していたことなど何処かに吹っ飛んでいた。

それから数日後、曲とアレンジが完成してデモを作り、それを秋谷銀四郎さんに送った。ぼくはタイトルだけは決めていて、秋谷さんに「Heart of Gold」というタイトルで詞を書いてください、とだけお伝えした。

数日後に詞が送られて来た。素晴らしい詞だった。まるでずっと前からこの曲と、このメロディを知っていたかのような詞だった。そうなんだよ!こんな胸がキュンとするような詞がこの曲には欲しかったんだ。
ぼくは秋谷さんに書いていただいた素晴らしい詞を口ずさみながら、一人で叫んていた。

この曲は自分でも会心の作だという自負があった。
もしかしたら今までに作った自分の曲の中でも、一二を争う出来ではないかと思っていた。
その思いは今でも変わらない。

いけね、またも前置きが長くなった(笑)さて、ここからが本題である。
その自分でも大好きな曲「Heart of Gold」のトラックの制作に取り掛かる。あ、トラックとはオケのような意味と思っていただければ。

「Heart of Gold」もゼロからの制作で、まずはBricksの時のテイクをProtoolsに取り込んで、それを聴きながらの作業となった。

Bricksの「Heart of Gold」はいかにも当時のサウンドで、ループや打ち込みを多用したトラックだ。
今の耳で聴くとちょっと古くさい気もする。でもアレンジ自体は今でもすごく気に入っているので、当時の雰囲気を残しつつ、アップデートさせたトラックにしようと思った。

早速ドラムのパターンを考える。ちょっとループっぽいポリリズムにすることにした。キックやスネア等を打ち込んでいく。
あ、その前にキーも決めなくてはいけない。試しにオジリナルのキーでちょっと歌ってみる。うん、大丈夫みたいだ、キーはオリジナルのままで行こう。

次はベース。やっぱりこの曲にはシンセベースが合っていると思い、ミニムーグのシンセベースの音色でガシガシと弾いていく。ぼくはシンベ(シンセベースのこと)を弾くのがすごく好きだ。

そして次はピアノ。これはまたしてもすぐに終了。ピアノは当時の雰囲気のままプレイしてみた。

ここまでトラックを作ってみて、一度最初から俯瞰して聴いてみる。ん〜、良いけどなんか今ひとつ欲しい気も。そうだ!ハープを入れよう。

ハープとはブルースハープのことではなくて、綺麗なヒラヒラのドレスを着た女の人が、頭に冠のようなものを被って(別に被ってなくてもいいけど)腕を露出させて(露出させなくてもいいけど)、柱みたいなものを股の間に挟んで(いるような気がする)何本もある弦を指で爪弾く楽器のことである。

要所要所にハープを入れたら、何だか気のせいかとてもきらびやかになった。まるで宮廷音楽のようである(んなワケは無い)。

あとこの曲にアコギとエレキギターも入れよう。そしてこれはぼくが弾こうじゃないか。
そう思ってモゾモゾとアコギとエレキを引っ張りだしてみた。うーん、オレのエレキはやっぱりキレイな色だなぁ、少し色褪せた感じもまた味があって良いわぁ〜。などと悦に入っていたら、おもむろにに眠気が襲ってきた。
容赦なく襲いくる眠気には勝てずに、敢えなく作業は強制終了と相成ったのであった。

続く。

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