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気を使わせない気遣い。

昼間のファミレス、誰かの携帯電話がけたたましく鳴った。
あそこの男性二人組だ。上司と部下でランチ。上司の携帯電話が鳴っている。音量は最大か。ソワソワしている部下がたまらず

「部長、電話取らないんですか?」と尋ねる。

『あー、あとで折り返すよ』と部長。


(あちゃー、まっったくもう…)


電話はわりとすぐに鳴り止んだが、しばらくするとまた電話が鳴り響いた。
周りの視線が一気に男性へ。部下は、

「携帯の着信音って、耳障りじゃないですか?」

と顔色をみながら尋ねた。まるで電話なんか鳴ってないような平然とした調子を装って。その聞き方で二人のパワーバランスが分かった。部長はちょっとしたひと言で怒るタイプの短気な人で部下はいつも顔色を気にして話しかけているようだ。食べ続ける部長にこう足した。

「僕なんて着信音を聞くとドキッとするんですよね。だから着信音なんていつも最小ですよ、ハハハ」


『へー、俺は全然気にならないけどね』


と言って黙々と食べ続ける部長。


いや、いや、いやいや…そうじゃないのよ、部長。
あなたが着信音に鈍感であるかを聞いているんじゃないの彼は。

鳴り響く携帯電話。集まる視線。

気にとめない部長。苦笑いの部下。



同僚や友人だったとしたら「ちょっとうるさいよ、マナーモードにしなよ」の一言ぐらい言えたはず。でも今一緒にいるのは怒りっぽくて怖い部長。「迷惑ですよ、音切ってください」とは言えないのだ(その関係を作ったのも部長でしょう)。そこで精一杯彼が考えた結果「着信音って耳障りじゃないですか?」と言う聞き方。その気遣いに気づいてあげてくださいよ。

加えて彼はきっと、電話が鳴っている最中にこそ、部長が自分の手でマナーモードに切り替えて鳴り止ませる、というアクションを周りの人に見せたかったはず。そのアクションを見せないかぎり、周りはずっと落ち着かないでずっと横目で二人を気にするに違いない。


マナーモードにする理由は直接的に着信音がうるさいからではない。
ルールを守れない人よりもルールを守れる人のほうが嫌な気分で過ごすという状況にならないよう、事前回避するためのきまりごとがマナーモード。「オレは全然気にならないけどね」じゃないんですよ部長!(笑)

ユーザーに余計な気を使わせない、言いにくいことを言わせないために先回りして設計してあげることも、サービスデザインにおける重要な設計要素のひとつなんだよなと、あらためて思い出した会話でした。

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