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カラフル住宅

三半規管が弱いのだろうか。
新幹線に乗ると、大概、耳がつまる。

子どものころは飛行機に乗ると、耳が痛くて、静かに泣いていた。
あめ玉とか唾を飲み込むとか、そんなもんじゃ効かないんだ、あれは。

東京駅を出発し、しばらくすると、だんだんと耳に圧を感じ始める。
ちょうど、そのあたりで、右手にカラフルな家が並ぶ様子が見えてくるんだ。

知ってる人もいるかな。
パステルカラーの黄色や水色の壁に、赤や緑色の屋根。高台にならぶ、色とりどりの家。

あの住宅街はいつ、どんな理由でできたのだろう。

そう言えば、同じような家が立ち並ぶ様子をテレビで見たことがある。

あれはベネツィアだったか?いや北欧だったかな。

その町は昔から漁業が盛んで、男たちは海に出ると、寒さしのぎに強い酒を飲んだそうだ。
そうなると、港に帰ってくるころには、自分の家がどれかすら分からないほど酩酊している。

そこで、皆んな思い思いの色で家を塗り、わが家を判別できるようになった、めでたし、めでたし。

といった話しだったような。
他のストーリーとごっちゃになってるかもしれないけれど。

こちらは、日本の郊外の住宅街だ。まさか、そんな理由で塗られてはいないだろう。

とにかく、その、新幹線の車内から見えるカラフルな家群は、目を引くんだ。

青い家に住んでる人は、どんな人なんだろう。
爽やかな、でも、ちょっと真面目な人かな。
じゃあ、ペールピンクの家はどうだろう。
お母さんが、かわいいものが好きで、家中すてきな小物で溢れてるのかも。

近くの小学校の教室では、
僕はオレンジのうちの子です。皆んな遊びに来てね、などと自己紹介しているのだろうか。

それはいいね。
レッド、とか、ブルーとかカッコいいニックネームができたりして。
羨ましいや。

ちなみに、そのカラフルなエリアが見えるのは、ものの数秒のことだ。

でも、新幹線に乗るたびに見るから、私の記憶に、深くしっかりと刻みこまれていってる。
だから、新幹線に乗っていないときでも、あの景色を結構はっきりと思い出すことができるんだ。

こういうの、正確には、残像とは言わないんだろうけど、記憶の残像みたいなものかな。
人は、印象に残ったものを割りと簡単に再生できるんだ、と感心してしまう。

気に入ってるんだ、あの景色を。

いつか、あのカラフル住宅の住人に会ってみたい。
私、グリーンの家出身なんですよ、などと言われてみたい。

いつもありがとうございます。
お宅の可愛らしさに、いつも癒されているんですよ、とお礼が言いたいな。