きのうの公園

先日、あがたの森公園の図書館でちびちゃんと絵本を借りてきました。
以前持っていたことがある本ですが、群馬から藤野へ引っ越す時に手放したものです。
ちびちゃんは読んだことがありませんでした。
トミー・ウンゲラー「ゼラルダと人喰い鬼」
料理好きのちびちゃんはゼラルダの作る料理を見るのも楽しいようだし、子どもを食べるのが好きな人喰い鬼という存在も興味深いみたい。
もちろん、ぼくは何度も読んでいるのでその本の良さを知っているつもりでしたが、ちびちゃんはどんな話か、はじまりから終わりまでを話してくれました。

すえながく、しあわせに、くらしました、っていうんだよ、すえながくって、なあに?

ずっと、ってことかな。

それを聞いたちびちゃんはうれしそうにぼくを見上げ、ちびちゃんもすえながくしあわせにくらすよー、
と言うのでした。

お話の最後の1行として、これほど安心できるものはありませんね。

あがたの森公園の凍った池のその上に鴨たちが点々と丸くなっています。
毎朝池の縁を歩いてぼくたちは幼稚園へ向かいます。

あ、あった、とうれしそうに駆け出すのでなにかなと思ったら、一本の枝を拾いました。
前日、妻との帰り道、ちびちゃんはその枝で凍った池を突いて、靴を片方濡らしながら遊んだのでした。
これをさがしてたんだよー、と言いながら、またつんつんをはじめました。
それを目にした時、ぼくも味わったことのある気持ちを思い出しました。

住んでいた家から歩いて1分とかからない場所に小さな公園がありました。半分は砂のグランド、もう半分は草地にすべり台等の遊具があります。
毎日毎日、日が暮れるまで遊びました。
近所のともだちが集まってきて、その日その日の思いついた遊びをします。
なにも決まったことなんてなかったし、誰が来てもよかったし、誰のものでもないけれど、みんなそれぞれのための居場所でした。

4つ吊り下がったブランコのいちばん右には誰も座りません、それを漕ぐと怖い夢を見るから。
大声を上げて遊んでいると、向かいの市営団地からHさんと呼ばれるおばさんがやってきて、警察に連れていくぞと怒鳴ります。
お菓子を食べるときは大きなカツラの木の下で、風が強い日には近くのスーパーマーケットの裏からダンボール箱を拾ってきて、小屋を作りました。

あの頃、公園で過ごした時間はみんなと一緒のときもあれば、ひとりのときもありました。

誰もいない公園はいつもより広く感じました。
長い間ただただブランコを漕いだ日もあり、拾った木の枝でグランドに絵を描いた日もありました。
翌日、行ってみるとぼくの描いた絵に誰かが新たに描き加えていることがありました。
すごく、うれしかったことを覚えています。
宛もなく書いた手紙に返事が届いたようで。

ちびちゃんがうれしそうに枝を掴んだとき、公園にあるきのうのことを見つけた時の気持ちを思い出しました。

これから、ちびちゃんはこの公園でいろんなことを感じて大きくなっていくのかなあ。


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