masakishimada

毎日、暮らしているなかで出会うひとや出来事について、書いて残したいものの記録です。触れ…

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毎日、暮らしているなかで出会うひとや出来事について、書いて残したいものの記録です。触れ合いから感じたよろこびを言葉にできたら。ちいさなお菓子を味わうように、いちにちのどこかで読んでいただけましたら。

最近の記事

まだ、ぼくはしたことがない

大学生活と卒業後の2年間を暮した町の駅付近は、夜になると通りに男の人が点々と立ち、道行く人に声をかける、夜のお店がたくさん立ち並ぶところでした。 その頃のぼくは毎日、新しく作る舞台のことで頭がいっぱい。台本を書き、それを演出するのがぼくの役目でした。 深夜のファミリーレストランで朝まで書いていたことがよくあります。 お仕事の女の人とそのお客である男の人がやってきて、近くの席に座ると書くどころではなく、ふたりの会話に聞き耳を立てていました。 なぜそんな話題になったのか、突然、

    • 抱きつくちびちゃん、おかえりなさい

      今朝、お店の外を掃き掃除していると、2件隣の蕎麦屋さんが半袖シャツで通り過ぎました。 半袖? 暑くて、急にだよね。 本当に、急に暖かくなりました。 春休みのちいさな冒険に出かけたふたり。 ちびちゃんと妻がじいじとばあばの家に泊まっている間、ぼくはひとりで過ごしておりました。 静かな家、本を読んだり、文章を書いたり、食事の用意をしたり、洗濯した服をたたんだり、やることはまあ、ありました。退屈もしませんでしたが、いつもと違うことになかなか慣れないのでした。 いつもだったら布団

      • はじめての仙台からの帰り道

        新幹線に乗っています。 出張先の仙台から帰っているところ。 展示会ではお越しくださった沢山の方とお話しすることができました。 家具を前に、ほとんどの方があの震災のことを話されます。最近、地震が頻繁に起こっていることについても。 背の高いものは置かなくなったね。 倒れたときのことを考えるよね、これなら倒れても平気かなって。 家具のお取り扱い、お手入れについてお話しをすると、大丈夫よというように頷き、おっしゃる方もいました。 ひとが使うんだから、いいのよ、キズがついたって

        • 大切な時をつくりましょう

          年中のちびちゃんたちが卒園する年長の子たちへの贈り物として創った音楽劇を観るため、妻とふたり、幼稚園へ行ってきました。 それぞれの子のそれぞれの表現が見られて、幸せな気持ちでいっぱいになりました。 寄り添うように弾く先生のピアノの音がやさしくて、温かい毛布で包まれたような時間でした。 なんかいいなあ、こういうのがよかったなあ、とじぶんの子どもの頃を少しばかり思い返しました。 せっかくなのでいつもとは違うことを。 終わった後は歩いてすぐの美術館のカフェに3人で行きました。うれ

        まだ、ぼくはしたことがない

          質問に答えるということ

          木曜日の夜から降りはじめた雪は、翌朝ちびちゃんと家を出る頃にはやみました。 朝からせっせと雪かき、皆さんそれぞれの家の周りを手際よくやるので、どんな細い道もちゃんと歩きやすいようになっています。 本当に、雪が好きなちびちゃん。 ぱかーんとなにか蓋が開いたように弾けまわり、雪と戯れています。 さて、先日、静岡から中学生6名がお店に来てくれました。 伝統を受け継ぎ、仕事を続けている会社を訪問し、インタビューをする、というのが目的です。 ぼくがお相手することになり、会社のはじ

          質問に答えるということ

          今日も孫に思い出される

          はじめてコーヒー飲んだのって、いつ。 朝食のテーブルで妻から言われ、思い出したのはどこかの喫茶店、ちいさな四角いテーブルの向かいにはじいちゃんがいる。 運ばれてきた白いお皿には、目玉焼とベーコンとホットケーキ。おやつでしか食べたことのないものを朝食として食べるって、道を外れた行為、という感じがして、心が踊った。 生きてる限りは楽しまなくっちゃ、といった言葉を聞いたわけではないけれど、思い返すと、じいちゃんは自身の人生をそんなふうに彩ろうとしていた。 時に、その行動は目茶苦茶

          今日も孫に思い出される

          やわらかくて温かい、傍にあるもの

          「かえでがおか農場のなかまたち」 という1冊の絵本がある。 作ったのはアリスとマーティンという名のプロヴェンセン夫妻。 彼らには農場があり、そこで暮らす生き物たちについて書かれている。 たとえば、オスヤギのサムにはこわいものがなにひとつなく、ときどき柵を壊して人間を怒らせる。 なぜ、ひとがそれを嫌がるのかといえば、もう一度柵を作り直さなければいけないし、バラを食べられてしまうから、花もトゲも、ぜんぶ。 サムにはともだちがいて、それはヒツジのメエ。毛を刈られるときには恐怖で

          やわらかくて温かい、傍にあるもの

          きのうの公園

          先日、あがたの森公園の図書館でちびちゃんと絵本を借りてきました。 以前持っていたことがある本ですが、群馬から藤野へ引っ越す時に手放したものです。 ちびちゃんは読んだことがありませんでした。 トミー・ウンゲラー「ゼラルダと人喰い鬼」 料理好きのちびちゃんはゼラルダの作る料理を見るのも楽しいようだし、子どもを食べるのが好きな人喰い鬼という存在も興味深いみたい。 もちろん、ぼくは何度も読んでいるのでその本の良さを知っているつもりでしたが、ちびちゃんはどんな話か、はじまりから終わりま

          きのうの公園

          ほんのちょっとずつ違うわたしに

          アルプスの山々は白く、凍ったあがたの森公園の池を見ながら、ちびちゃんと歩く朝の道。 じぶんで歩くよりぼくに抱っこされている方が寒くないようで、抱っこ、と手を広げます。 ぼくの方もちびちゃんを抱っこした方が寒くないので抱っこします。 でも、重くなりました。 いつまでできるのかなあ。 昨日の朝、抱っこして歩いていると、しゃっくりをはじめたちびちゃん。 しゃっくりだ、と言うと、 しゃっくりんだよ、とちびちゃん。 しゃっくりん、ていうのかー、チャップリンみたいだね。 チャップリンて

          ほんのちょっとずつ違うわたしに

          眠ることよりしたいことって、ありますか

          朝、窓を開けると視界に白いちらちらしたものがいくつも見えたので、目が変になってると思ったら、それは雪でした。 あんまりゆっくり落ちてくるので、すぐに雪とは思わなかったのです。 さて、以前も書いたことのある87歳の設計士、Eさんについて。 お客さんからオーダー家具のご相談をいただく度、真っ先に本社にいるEさんのところへ向かいます。 サイズのこと、便利な仕様について、豊富な経験と深い知識から、鋭い答えをすぱっすぱっとくれるので、尊敬せずにはいられません。 物腰はやわらかく、決

          眠ることよりしたいことって、ありますか

          はじまりをみつけた日

          島根県にある10代続く鍛冶屋さんが、毎年ついた御餅をお店に送ってくれます。白くてぺったん丸いやつ。 それをお雑煮にして、3人でいただきました。 山の向こうから昇ってきたおひさまを初日の出だねと、見ました。 歩いてすぐの神社まで、散歩しようと話していたけれど風が冷たくてやめました。 荷造りをして妻の実家へ。 途中渋滞したところが藤野のあたりだったので、窓の向こうの日蓮大橋を見ながら、そこで暮らした日々を思い出しました。 みんなで囲む食事が楽しくて食べすぎちゃったり、じいじにまと

          はじまりをみつけた日

          扉の向こうにいるきみと

          それは、2歳でもなく4歳でもなく、3歳のある日のことでした。 その頃のぼくは家の前にある駐車場で、毎日小石を集めていました。すると、いつも決まった時間に向こうの方から、ひとりのおじいさんが歩いてきます。 優しい顔のひとでした。 鼠色のズボンに水色のポロシャツに紺色のベストを着て、髪は白く、眼鏡はかけていません。 ゆっくりと歩いてきて、ぼくのそばに来るとしゃがみ、 なにしてる? とやわらかな声で言います。 これはなにかな? ポケットからお菓子を取り出し、そっとぼくの手に握らせ

          扉の向こうにいるきみと

          ピアノ教室、ひとり

          1年が終わろうとしていますね。 家に帰り、妻とちびちゃんが寝静まってから、ぼくはこの1年を頭から振り返ろうと思うのですが、違うことばかりが頭に浮かんで全然振り返られません。 たとえば、小学6年生からピアノ教室へ通い始めたこととか。 学校の音楽の授業は音楽室と呼ばれる部屋へ移動しました。そこにピアノがあるからです。 クリバラ先生という女性がピアノを弾き、指揮をして、ぼくたちに音楽というものはなにか、教えてくれました。 まだ授業がはじまる前から、ぼくたちは音楽室へ移動します

          ピアノ教室、ひとり

          すれ違う廊下の彼女

          小学3年生から5年生までの間、毎週水曜日の夜、ぼくは空手の教室へ通っていたことがある。 近所のともだちについていったのがはじまりだった。白い道着、黒や茶色や緑色の帯を締めたひとたちが声を上げ、拳を突き出している。 新鮮な世界に惹かれ、ぼくも道着を着たくなった。 通い始めるとすぐに新鮮味はなくなり、広い市民体育館を駆け回ったり、物置に忍び込んだりするほうが楽しくなった。できることならやめたいのだけれど、許されなかった。 やりたいと言ったのはあなたなのだから、そう簡単にやめてはい

          すれ違う廊下の彼女

          本屋さんへ行く前に

          休みの日、家の窓拭きをしました。 網戸を洗い、水拭きで窓を拭き、新聞紙で磨くように仕上げる。 群馬に住んでいた頃、大きな公園のすぐ側に暮らしていたので、朝夕と散歩のひとが家の前を通るのですね。 窓拭きをしていると、まめだねーと言いながらおじいさんがやってきたり、今年も終わるねーと向かいの家のおじさんがやってきたり、名前は存じ上げないけれどよく見かけるひとが、きれいになったねと言ってくれたり。 顔を見れば言葉を交わす相手が家の周りにたくさんいたのです。 温かい人たちのことを思い

          本屋さんへ行く前に

          忘れないで賛美歌を

          お久しぶりです。 昨日はお休みでした。 妻とちびちゃんと3人でアルプス公園へ行き、たくさん遊びました。山の一部が公園になっているので沢山の木々の中を歩き回れるし、ちいさな動物園もあります。 クリスマスのリースを作ろうと、木に絡まる蔦や朱、黒、紫、橙の実を摘み、モミの枝や松ぼっくりと合わせて玄関に飾りました。 いいものないかなーと森の中を歩きながら、拾ったり摘んだりするって気持ちがいいですね。 すっかり元気になれました。 ところで、仕事を終えての帰り道、おなかが空いて堪りませ

          忘れないで賛美歌を