静寂が切り殺すように柔らかく、温かい声を求めていた。
少しずつ少しずつ背丈の縮む蝋燭に愛おしさを感じながら妬ましい。
良い色で生きなさいというあなたの言葉は、今となっては僕のサバクタニでしかなく、牙を剥く気力すら湧かずに老いていく。
僕は短くない期間を生きながらえて、何を得て、何を失ったんだろうか。
全てが簡単にいったことはないが、全てが難しくもない、誰もが辿れる轍だからこそ振り返ることが何より恐ろしい。
そもそも安堵を求めて生きることは愚かで、惨めに慄き泥水をすする美学に倣うべきだろう。
例えば自殺した友人がやっていたバンドの歌詞。
「できるだけ染まらないでいようね」
なんて優しい言葉なんだと思った。
歌うのはパンツ一丁(実際にはポロリ防止のため重ね履きしてるので二丁なのかもしれない)のドラムボーカルでコミックバンドとして見られがちだったが、彼らはそれを嫌った。
下手な演奏でMCではフロアに笑いが起こる。
ただ一人、この中で涙しそうになっているのは僕だけだろう。
そんな気分で観ていた。
その後、当時所属していたバンドのボーカルに「泣きそうになった」と言われた。
「これを理解できるのは自分だけだ」と思わせる言葉を紡ぐのはそう容易くない。
何故か活動しなくなり、何故か友人は死に、そして何故か未だに僕はその言葉を大切にしまい込んでいる。
たまに自分の言葉に自信を失くす。
そんなときに他人の言葉に頼ることはずるい事だろうか。
悪い癖なのだろうか。
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