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葛飾応為「吉原格子先之図」-肉筆画の魅力 at 太田記念美術館

葛飾応為のことを詳しく知ったのは、六年前に大阪あべのハルカスで葛飾北斎の展覧会が開催された際にNHKが放送していた番組を見たからだった。応為は北斎の娘で、自身も絵師であり、北斎の仕事を手伝ったりもしていた。現存している応為の作品はそれほど多くはない。テレビで見た応為の絵は、光と闇の表現が巧みで、時に鮮烈な赤が強く印象に残る。

応為の名は、お栄さんという。父北斎が「おーい!」と呼ぶので、それを雅号としたらしい。

六年間、いつかは観に行こうと思っていた応為の「吉原格子先之図」は、太田記念美術館の所蔵品。一ヶ月ごとくらいに展示内容が変わるので、常設されてはいない。今回は三年ぶりの公開らしい。

太田美術館は原宿・表参道にある。午前中の業務を早めに切り上げ、中抜けして職場から山手線に乗り、原宿へ。原宿から徒歩数分で到着。ちょうど西洋人の小規模な団体が入るところだったので、少し混雑している。平日昼でもこんなに集客力があるのかと意外に思う。

順路通りに観て行くと、北斎、応為、喜多川歌麿の作品が並べられている。ここがメインかもしれない。

【展示室一階】

◆羅漢図(葛飾北斎)
北斎らしい描写と色彩。北斎は、年代によって画風を変えている。後期(晩年に近い)の作品だろうか。(86歳ごろの作だった)
羅漢が鉢を持ち上げ、鉢から暗雲がもくもくと立ち昇っている。

◆吉原

格子先之図(葛飾応為)

クリアファイルを撮影したので今ひとつ。

ようやく夢に見た絵画と対面する。思いのほか小さい。A4サイズくらいだろうか?
とても綺麗な絵。格子の先は、遊女たちが客待ちをする待機所でもある。格子が掛けられていて、待機所の様子は外から窺うことができる。格子の内から煌々とした光が漏れて、路上に影を映し出す。路上には提灯を持った見物人(ひやかしか)も多数居て、彼らの持つ提灯も光源となっている。格子の内には遊女たちが赤い彩色の着物をまとって、それぞれに過ごしている。ひやかしの持っている提灯には「栄」「為」「應」の文字が隠し落款として配されている。店先の灯りには「千客万来」とあるのだろうか? 「~~屋」の文字はよくわからない。応為は光と影の魔術師だなと思う。バロック期のイタリア人画家カラバッジオにも通じるものがあると思う。

応為の作品で、これまた素晴らしい光と影の色彩を表現している「夜桜美人図」という作品が存在する。これはメナード美術館に収蔵されているらしい。メナード美術館は愛知県の小牧にある。国宝犬山城の近く。名古屋から電車で行けそう。機会があったら行ってみよう。

【展示室二階】

歌川広重の風景画なども展示している。

◆日興華厳ノ滝/日光霧降ノ滝/日光裏見ノ滝
◆上野榛名山雪中/上野妙儀山雨中/上野中ノ嶽霧晴
◆待乳山(まつちやま)雪中月夜之景
(歌川広重)

◆開花之東京両国橋之図(小林清親)
橋の上に人影、橋の下に舟を漕ぐ人。シルエットでそれを表現している。構図も巧みで、これは「おお!」と思わせる作品。明治九年から十四年ころの作らしい。明治期だとこういう画風も当たり前に登場してくるんだな。

北斎の絵も再び展示されている。

◆神功皇后図(二代葛飾泰斗)
泰斗は北斎の弟子。神功皇后と生まれたばかりの赤子を抱く家臣の武内宿禰の二幅の絵。いかにも北斎の弟子らしい画風。

◆源氏物語図(葛飾北斎)
一階で観た作風とは異なる作品。四十代から五十代の頃の作品。

◆雪中常盤御前図(月岡芳年)
源義朝が平清盛に討たれたのち、側室の常盤御前は今若、乙若、牛若の三人の子を連れて雪中を落ち延びていく。そんな姿を描いた作品。この作品にも魅力を感じた。これも明治期の作品らしい。

最後にもう一度、北斎の「羅漢図」と応為の「吉原格子先之図」を目に焼きつけて撤収することにした。所要時間は最大二時間程度と見込んでいたが、展示スペースはそれほど広くはないので、一時間十分程度の滞在となった。

エントランスでポスターとクリアファイルを二つ(「神奈川沖浪裏」「吉原格子先之図」)と北斎漫画の動物たちのステッカーを購入した。

※神奈川沖浪裏は展示作品ではない

表参道から代々木八幡駅まで歩き、小田急線で帰った。帰宅してから午後の業務に着手した。

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