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長寿命商品

私が前職で関わっていたコンピュータ関連機器。
半年ごとに新製品を発売していました。
大した「改良」でもないのに、それをうたい文句にして「新製品」を出さなくてはなりませんでした。
その「改良」を大々的に打ち出すためにたくさんの人が頭を悩ませ、何度も会議をし、そのための広告や販売促進材を作る。
正直なところ、「そんなのどうでもいいんじゃないの?」「それで新製品?」と思えるような「改良」が少なくありませんでした。

何故そんなことをするかというと、いわゆる「家電量販店」で売ってもらうためには半年ごとに店頭を賑わせなくてはならないのだと聞いたことがあります。
日本では3月から4月にかけての入学や入社時期と年末商戦。
ここで一気に売上を稼ぐのだそうです。

話変わって、私は5年前に買ったiPadを持っています。
すでにスマートフォンが普及していましたが、電話はガラケーのままでiPadを購入しました。
電子書籍を読むのが一番の理由でした。
家の中で場所を取らない、持ち運びに便利な電子書籍。
それに加えて、インターネットやSNSも見られる。
今も使っているのですが、ときどき強制的におこなわれる「アップデート」がされるたびに速度が遅くなります。
しかも、どこがどう「アップデート」されたのかぜんぜん分かりません。
また、ちょっと面白そうかな、と思うアプリを使おうとすると「このiPadには対応していません」というつれないメッセージ。
まあ、本を読めればいいんですけどね。
あ、でも、本を読むためのリーダーとかいうやつもそのうちに使えなくなるのでしょうか?
そしたら、これまでに買った本はどうなるの?

さて、今、「長寿命商品」「ロングセラー商品」というものはあるのでしょうか?
ここで私が「長寿命」と言っているのは、「長持ち」ということではなく、長く「売り続けられている」一つの商品のことです。
う~ん…
私の好物、明治の板チョコとか?
森永のミルクキャラメルはまだ売ってるのかな?
ラムネやカルピスはときどき目にします。
味の素ってまだあるのかな?
食べ物には長寿命商品はあるけど、日用品ではどうでしょう?

灯油ストーブが使われていたころ、「アラジン」というストーブがありました。
ずっと同じ形。
部品が必要になればだいたい手に入りました。

コクヨのCampusノート。
糸とじではないノートとして長く使われています。
(糸とじのノートをご存知の方々のほうが多いかもしれませんね)

車のフォルクスワーゲン。
「でんでんむし」と呼ばれていたあの車、しばらく目にしませんが、もうなくなっちゃったんですかね。
今、あの車に乗るのは勇気がいるかもしれませんが。

作る側にも使う側にも一つ一つのモノへの思い入れが薄くなってきている中、それに拍車をかけているのがコンピュータではないでしょうか?
ほとんどのモノにコンピュータが使われている現代。
私のiPadのように、まったく不自由なく使えていても、環境がそれを許さない。

過去にもそのようなことがありました。
フイルムカメラ、レコード、VHS、カセット、などなど。
しかし、フィルムカメラは100年、レコードにいたってはエジソンですからね。
VHSビデオは私が初めて買ったのが1980年ですから、カメラやレコードには及ばないにしても40年近く使い続けられてきたわけです。
CDももう先が見えてきています。
しかし、いずれも数十年以上使うことができたわけです。

今はせいぜい5年くらいでしょうか?
このような環境では長く売り続けられる長寿命商品は生まれにくいですね。
いや、コンピュータと縁がない食品以外にはもう生まれないかもしれません。
私たちも無意識のうちに新たな機能を求めているのではないでしょうか?

長く売り続けられているモノを見たり、買ったりするとなんとなく安心した気持ちになるのですが、私の場合は明治の板チョコくらいかな。