穀雨

今日、4月20日は二十四節気における「穀雨」。

躑躅(ツツジ)が咲く季節である。一番よく見かけるのは白や赤紫の平戸ツツジだが、なんといっても一番美しいのは、それよりも若干早く咲き始めて見頃を迎える霧島ツツジ。京都での名所は、どういうわけかほとんど知られていないのだが、日本建築史及び日本庭園史どちらにおいても最高傑作の一つとされる、あの桂離宮

桂離宮の霧島ツツジ(筆者撮影、2019年4月28日)

庭自体がどこから見ても美しいのだが、今の季節のみ、そのあちらこちらに霧島ツツジの情熱的な赤い花が点在し、それはもう、初めて見た時は涙が出そうになるくらい美しかった。

この桂離宮を作った智忠親王が、長岡天満宮の前に八条ヶ池という灌漑のための溜池を作り、そこは今では霧島ツツジの名所として、今の季節、観光客で賑わう。

長岡天神八条ヶ池の霧島ツツジ(筆者撮影、2021年4月15日)

だが、桂離宮と比べると、品がない気がする。しかも、今日訪れたら、2年前に撮ったこの写真に写っている鳥居の向こう側にタワーマンションが立ってしまっていた。

というわけで、私としては、霧島ツツジを愛でるなら、桂離宮をお薦めする。

それから、藤(フジ)も見頃を迎える。京都では、平等院鳳凰堂の脇に咲く藤がおそらく一番有名。

平等院の藤の花(筆者撮影、2021年4月26日)

しかし、藤ってこんなに綺麗だったんだ、と初めて思えたのは、今日訪れた長岡天満宮にある料亭「錦水亭」の前にある藤棚。

錦水亭の藤の花(筆者撮影、2023年4月20日)

普通の藤棚は棚の下に藤の花が垂れるのだが、ここの藤棚は、棚の上に枝が生い茂り、そのさらに上に藤が咲いているのを見上げる形になる。その結果、重力に逆らって上を目指す枝の生命力と、しなやかに垂れ下がる花のコントラストが、園芸用に飼い慣らされていない野性味を生み出していて、そこが美しい。風が吹くと香りも漂ってきた。

あと牡丹(ボタン)も見頃になる。京都での名所は本満寺。

本満寺の牡丹(筆者撮影、2019年5月5日)

牡丹が咲いて散ったら、春は終わり。蒸し暑い日本の夏の始まりである。

旬の食べ物としては、あえて、イチゴを推したい。日本ではクリスマスケーキの飾り付けに使われるせいで、冬の果物として認識されているが、以前住んでいたスウェーデンでは夏の果物。といっても、北欧の夏は涼しいので、日本の季節でいうと、ちょうど今頃、晩春から初夏にかけての暖かさ。この気温になってから収穫されたイチゴは良く熟れていて甘みがあり、美味しい。



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