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資金決済WG報告書の解説④

金融庁を事務局とする金融審議会の資金決済ワーキング・グループ(WG)が昨年12月28日に開催され、これまでのWGの議論をとりまとめた報告書が公表されました。この記事はWG報告書から読み取れる分散型金融の規制のゆくえと、デジタル金融の進展に伴い不可避となるマネロン・テロ資金供与対策(AML/CFT)の強化・高度化について、なるべく分かりやすく紹介していきます。

全体的には、起業家をはじめとする新しいサービスを創る皆さんを主な読者と想定していますが、第4回以降は既存の事業者のビジネスにどのように影響を及ぼしていくか、という観点からの説明もしていきたいと思います。銀行ビジネス、電子マネービジネスに携わっておられる皆さんにも、お役に立てていただきたいと思います。

第1回 報告書をめぐる金融規制の全体の流れ
第2回 国内ステーブルコイン法制のゆくえ
第3回 海外ステーブルコインの日本持込ルールとメタバース世界
第4回 銀行デジタル通貨のこれから(ペイ競争への影響)(今回の記事)
第5回 プリペイド型電子マネーとAML/CFT
第6回 AML/CFTのRegTech


WG報告書はAML/CFTの強化・高度化を通奏低音に、ステーブルコインを中心にデジタル・分散金融への法制対応を図るものでした。第4回は、ステーブルコインの法制対応が伝統的金融の世界にとってどのような意味を持つかについてご説明したいと思います。

銀行デジタル通貨の議論は、ステーブルコイン法制の伝統的な電子通貨である預金の世界への応用についての議論なので、まずは第2回「国内ステーブルコイン法制のゆくえ」を読んでいただいた方が分かりやすいだろうと思います。

銀行デジタル通貨構想

2021年11月、DeCurret社を事務局として74の企業・銀行・自治体等が参加するデジタル通貨フォーラムは、銀行預金を基礎としつつ様々な事業者がスマートコントラクトを用いて取引を効率化することができるデジタル通貨「DCJPY(仮称)」のホワイトペーパーを公表しました。

DCJPY(仮称)ホワイトペーパー


DCJPYは、デジタル通貨を銀行預金(決済性預金)と構成しています。利用者は預金口座を開設する銀行に新たにDCJPYアカウントを開設し、預金口座から日本円をDCJPYアカウントに移転することでDCJPYの発行を受けます(逆にDCJPYアカウントから預金口座への残高の移転をもってDCJPYを償還することができることになります)。DCJPYのプラットフォームは、アプリ経由でDCJPYをアカウント保有者間で移転することができる「共通領域」と、事業者が行う財やサービスの取引を管理する「付加領域」を持ち、付加領域用のDCJPY台帳と共通領域のDCJPY台帳がミラーリングされる仕組みを持っています。このような仕組みとすることで、付加領域におけるスマートコントラクトを用いた取引によって、共通領域におけるDCJPYが自動的に移動することになります。デジタル通貨フォーラムでは、このような仕組みを「二層構造デジタル通貨プラットフォーム」と呼んでいます。

DCJPYの全体像

二層になっている点でステーブルコインに似ていますが、個々のエンドユーザのアカウントはあくまで銀行が発行しており、実ビジネスの取引用スマートコントラクトを実装する付加領域での利用を予定するDCJPY台帳は共通領域のDCJPY台帳と同期されて、銀行が管理する共通領域のDCJPY台帳に残高の移転が反映されて初めて、資金の移動が行われたことになる点で、発行者が発行総額のみを管理し、仲介者がエンドユーザにアカウント(ウォレット)を提供してエンドユーザの残高の移転帳簿を管理するステーブルコインとは異なる実装となっています。

DCJPYの実装モデル

デジタル通貨フォーラムの構想するDCJPYでは、銀行が管理する共通領域のDCJPY台帳と、スマートコントラクトを実装する実取引管理のための付加領域用DCJPY台帳を同期する仕組みが肝になります。この同期は、DCJPYという決済性預金口座帳簿の更新を指図するという構成をとることで、現行の電子決済等代行業(更新型)のライセンスの保有者が行うことができることになります。

DCJPYは電代業者が預金口座帳簿の更新指図を行う


DCJPYを題材に仲介者ライセンスを他の為替仲介ライセンスと比較


DCJPYとステーブルコインの相違は、発行者と仲介者を分離させ仲介者にエンドユーザの残高帳簿を管理させる新たなライセンスと、電子決済等代行業、金融サービス仲介業者(預金等媒介業務)、さらに従来からの銀行代理業の業務上の違い(ライセンスによってできるようになること)を理解するのに役立つように思います。

電子決済等代行業(DCJPYのモデル)
銀行に対して送金指図を伝達する業務。伝達された送金指図を受けて預金口座(帳簿)を更新するのは銀行自身が行う点で、銀行を代理して預金帳簿を管理し更新するステーブルコイン法制の仲介者とは異なる。
電子決済等代行業者は犯収法上の特定事業者ではなく、AML/CFTの義務は課されない。

銀行代理業:
銀行のために、口座開設を含む預金契約の締結を代理・媒介したり、資金の貸付け等の銀行業務を幅広く代理・媒介する業務。所属銀行制がとられ、銀行の体制整備のもとで業務を行うため、犯収法上の特定事業者ではない。

ステーブルコインの仲介者:
WG報告書では、ステーブルコインのウォレット開設は銀行口座開設の媒介として整理され、ステーブルコインの移動は預金債権の発生・消滅の代理行為として整理される。銀行代理業者と異なり所属制はとられず、犯収法上の特定事業者としてAML/CFTの義務が課される。また、仲介者はステーブルコインを管理するものの、銀行代理業者とは異なり金銭を預かることはできない。

金融サービス仲介業者(預金等媒介業務):
上記のようにステーブルコインのウォレット開設を銀行口座開設の媒介として捉える場合には、銀行口座開設の媒介を行うことができる点で仲介者と金融サービス仲介業者は類似するが、金融サービス仲介業者は、ステーブルコインの仲介者と異なり、預金債権の発生・消滅の代理を行うことができない。
ステーブルコインの仲介者と異なり、金融サービス仲介業者は犯収法上の特定事業者ではない。

DCJPYは決済性預金なので、銀行以外の事業者がアプリ上でDCJPY口座の開設ができる機能を提供するためには、電子決済等代行業に加えて銀行代理業か金融サービス仲介業のライセンスが必要になるように思います。逆に、金融サービス仲介業のライセンスを持つのであれば、DCJPYの移転についても、あえて電代業として行わなくても為替取引の媒介として整理すればよいようにも思われるところです。

新たな仲介者ライセンスの規制は整合的か


また上記のように各ライセンスを比べると、ステーブルコインの仲介者にのみ課されるAML/CFTの義務がどこから出てくるのか少々分からなくなります。つまり、ステーブルコインの仲介者は、①エンドユーザに対してステーブルコインのウォレットを提供し、②ステーブルコインの移転帳簿の管理を行うわけですが、

①ステーブルコインのウォレットの開設を連名預金の口座開設の媒介として整理するのであれば、同様に銀行口座開設の媒介業務を行う金融サービス仲介業者にAML/CFTの義務が課されていないことと整合性が取れず

②ステーブルコインの移転帳簿の管理を預金債権の発生・消滅のための銀行業務の代理と整理するのであれば、同様に銀行を代理して預金債権の発生・消滅の代理業務を執り行っている銀行代理業者にAML/CFTの義務が課されていないこととの整合性が取れない

ように感じられます。

WG報告書が十分整理しきれていないのは、ステーブルコインを連名預金口座のエクイティ持分という独自の財産権であるということを正面から認められておらず、ステーブルコインの口座をその先にある連名預金口座の開設と混同して銀行口座の開設の媒介と整理したり、ステーブルコインの移動を連名預金債権と連動させて預金債権の発生・消滅の代理と混同して整理したりしている点にあると思います。連名預金口座方式のステーブルコインも、受益権方式のステーブルコインと同様にあくまで原資産である預金債権とは法的には異なるエクイティ持分であるということを正面から認めて初めて、ステーブルコイン口座の開設やステーブルコインの移転帳簿の更新行為につきAML/CFTの義務が課されることを正当化することができるのだと思います。

大陸法系の日本は英米法と異なり権利義務関係をかっちり考える分、エクイティ持分に対する法的な整理が十分にできないきらいがありますが、これはデジタル資産の権利性を考えるうえで結構大きなディスアドバンテージだと思います。僕自身はホールセール型デジタル通貨の検討を通じて各国のデジタル通貨の私法上の整理の違いを見てきたのですが、ドイツもこの点に日本と同じ窮屈さを持っていましたので、これは日本独特の問題ではなく継受した法律の思想レベルの問題なのだろうと思います。信託法制も同根の問題を抱えていると思いますが、産業競争力に資する法体系・法理論であることは、法が社会に奉仕する道具であることを考えるととても重要です。

連名預金口座方式で構成したステーブルコインの法的性質に関する議論は、法制化が進む中で民事法の観点から学問的な研究が進んでいくことになるのではないでしょうか。この辺りの法的性質論は平常時には実務的にはどうでもよいことではありますが、破綻時等の危機時に備えて制度設計に当たってはきちんと整理しておく必要があると思われるところです。

既存の電子マネーのトークン化(ペイ競争への影響)


WG報告書ではステーブルコインを「電子的支払手段」と定義することにしています。この電子的支払手段は、「資金決済法の通貨建資産のうち不特定の者に対する送金・決済に利用することができるもの(電子的方法により記録され、ネットワークにより移転することができるものに限る)」と定義されることになっており、DCJPYのみならず既存の(資金移動型の)電子マネーを含む概念です。

したがって、DCJPYを含む従来型の電子マネー・デジタル通貨も、システムのアーキテクチャを変更することによって、ステーブルコインと同じように発行者と仲介者を分離したものとして運用することができることになります。

顧客接点の拡張

垂直統合型の既存の電子マネーと発行者と仲介者を分離したステーブルコイン型のデジタルマネーの相違は、第一に仲介者にウォレットの発行と移転を取り扱わせることができることによって、より顧客接点をとりやすい電子的支払手段を創出できることがあるように思われます。ペイメント手段のネットワークとしての側面を考えると、顧客インターフェースの獲得を他の事業者にも担ってもらうモデルの導入は、総流通額を拡大させる方向に働くはずです。また、顧客インターフェース獲得を他の事業者に委ねられるということは、顧客獲得コストの少なくとも一部は仲介者に持ってもらうことができることを意味するように思います。

現状のペイ競争の肝はマーケティング費用にあるように見えますので、マーケティング費用の構造をめぐる変化はペイ競争のギアをもう一段上げる効果があるかもしれません。特に、普及率で遅れを取ったペイ事業者のなかから、乾坤一擲の勝負としてシステムアーキテクチャを大改修して発行者と仲介者を分離したデジタルマネーに向かうプレイヤーが出てくるのではないでしょうか。

データ戦略への影響

第二に、データ収集の面でもこれまでとは異なる競争環境が生まれるように思います。ステーブルコイン型の発行者は一見、ダムパイプ化しそうに思えますが、発行者自身が仲介者を兼務することは禁じられていないはずです。また仲介者集団が管理するブロックチェーンのノードに発行者はアクセスできるようにするはずなので、データ収集の面では中央集権型のものよりも劣るということには必ずしもならないように思います。

この点は、ブロックチェーンをどう設計するかというアーキテクチャの問題が第一に関連します。技術的に、仲介者が自らのエンドユーザ内での支払いやり取りをRDBサーバで行うことができるという実装を許容するかどうかを決める必要があるわけですが、この点は単にコストの問題だけでなく、電子的支払手段のファイナリティをどのように決めるかという問題と関連してきます。

またデータの問題は、技術アーキテクチャの問題にとどまらず、加盟店システムの設計の問題、つまりオフチェーンの支払データを発行者と共有することを電子的支払手段のフランチャイジーとなることの条件とするかどうかということにも関わってくるでしょう。この点はもちろん、個人情報保護法対応の戦略の話と直結する話です。

ペイメントネットワークの開放は一方で、ネットワークを独占支配しないことを意味します。ネットワーク開放によって発生するスピルオーバー効果をきちんとフランチャイジーにも分配しつつ、その一部をうまく取り込むことによって、独占モデルよりも全体として自社にとってプラスの状態を作る、そのようなビジネスモデルをつくれるかどうかにかかってくるのでしょう。

ネットワークガバナンスへの影響

第三に、スピルオーバー効果をどのようにフランチャイジーやエンドユーザに還元していくかという点にも大いに関連しますが、ネットワーク開放によってエコシステムのガバナンスが大きく変わるだろうと思います。

スピルオーバー効果の分配は、ポジティブなネットワーク効果をどのようにエコシステムの構成員に還元するとネットワーク価値が高まるかを考えるものであるという点で、ガバナンスそのものといえるわけですが、同時に考えなければならないのはネガティブなネットワーク効果をどのように制御するかという点です。端的にはAML/CFT対策コストをはじめとする不正利用の制御コストを誰がどのように負担するか、を考え直す必要があります。

WG報告書は、ステーブルコイン法制の規律を大きく、発行者の規律、仲介者の規律、発行者と仲介者が協働して確保しなければならない規律の3つに分けて論じていますが、監督当局は、分散型の電子的支払手段がガバナンス面で従来型の電子マネーよりも劣る(ネガティブなネットワーク効果によってもたらされる弊害がより大きい)という状態を許さないはずです(そのような規制アービトラージ効果を許容してしまうとペイメント競争の秩序がゆがんでしまいます)。すなわち、分散型の電子的支払手段への移行は、発行者にとってガバナンスコストもまた上昇させるだろうということです。

ネットワーク開放に伴う正と負のネットワーク効果をどのようにバランスを取って、全体として発行者にポジティブとなるペイメントエコシステムを作ることができるかが重要になるでしょう。おそらくは、ペイメントネットワークの拡大によって、ペイメント以外の収益を増やすビジネスモデルをうまく描いた事業者が、この試みに成功するはずです。

なお、日本の金融行政はネガティブなネットワーク効果の抑え込みの要請が非常に強く、執拗に事業者にこの点を求めてくると予測されますので、発行者は分散型の採用により生じるネガティブなネットワーク効果の負担を回避するフリーライド行為を許容されず、permissioned blockchainを採用する動機付けが強くなるのではないかという気がします。

銀行ビジネスへの影響


CBDCの発行を巡っては「CBDCという中央銀行に対する直接の負債にエンドユーザが電子的にアクセスすることができてしまうと、市中銀行の中抜きが生じるのではないか」という論点が一つの重要論点になっていました。市中銀行の中抜きは、単に市中銀行がディスラプトされて困るという業界保護の目線ではなく、市中に資金を循環させる力が弱体化し、市中銀行が社会的使命として担ってきた資金仲介機能を果たせなくなってしまうという観点から語られてきたものです。

これに対して、ステーブルコインを含む電子的支払手段の登場は、銀行を発行者とするよう求めることによって、銀行の資金仲介機能への影響に関する議論は回避できているように思います。信託受益権モデルを採用する場合には、信託会社は資金を100%銀行に預託しますので、預託された資金を用いて銀行は資金仲介機能を発揮することができることになるはずです。

WG報告書では、分散型為替制度の導入が銀行モデルの及ぼす影響について、いくつか指摘が出ています。

第一に、発行者である銀行が預託を受ける資金を決済性預金で受け入れるのか普通預金(一般預金等)として受け入れるのかによって、預金保険法による保護が異なることについて、何か考えなければならないのではないかという指摘です。特に、決済性預金を全額保護する仕組みは他の主要国の預金保険制度は採用していないこともあり、ステーブルコインの発行によって、エンドユーザーがより簡単に決済性預金にアクセスすることができるようになると、モラルハザードを拡大することにつながるのではないかという議論は重要であるように思います。

預金保険制度は、創設から約20年が経過していますが、制度についての抜本的な見直しは行われていません。ここ7年ほどの間に生じたデジタル金融の進展により、金融の世界は抜本的な変化を遂げつつあります。デジタル金融によるアンバンドリングが銀行ビジネスの本丸である為替取引にも押し寄せている現在、預金保険システムの見直しが必要なタイミングに来ているのではないかという指摘は重いものがあります。

WG報告書では、決済性預金へのアクセスが容易になることに伴って生じる、銀行ビジネス側のレジリエンシにも着目しつつ、実務の推移を見つつ預金保険制度を見直すかどうかを検討したい、という姿勢をにじませています。

第二には、専ら決済機能を提供するナローバンクという事業モデルと電子的支払手段の発行者の議論との関係が指摘されています。特に、預金保険が適用される銀行につき、預かり資産の運用機能を高流動性・安全資産等に限定することによって、銀行規制・監督の枠組みを変えるという構想と、デジタルマネー発行者の監督規律のありかたを関連付けた議論が提示されています。

個人的には、ナローバンクという発想そのものがデジタル金融のパラダイムが提示される以前の議論であることや、ペイ事業者のビジネスモデルをめぐする様々な実験を通じ、決済機能に限定した銀行という発想そのものがビジネス的に見てどうなのかという疑問があることが分かってきたことから、ナローバンクという古い中間項を持ち出して分散型為替サービスの議論をするのはやめた方がよいのではないかと思っています。

分散型為替サービスに銀行はどのように向き合うか


既存の銀行モデルとの関係では、為替機能のアンバンドリングという観点から分散型為替サービスがもたらす既存の銀行ビジネスへの影響を検討するのがよいのではないかと思います。

新法は、上記のように銀行の資金仲介機能を損なうような形での改正ではないので、この問題は業界としてどうこうというよりは、個々の銀行のビジネスモデルの問題に帰着するのでしょう。

銀行として、既存の垂直統合型のデジタル通貨である預金サービスを引き続き直接エンドユーザに提供していくことは当然です。他方で、エンドユーザの利便性はもちろん、仲介者やその先にいる事業者との接続という観点から、分散型為替サービスは新たな顧客接点であることは明らかです。

背を向けることによって失うものこそあれ新たに得られるものは何もない状況に置かれると思いますので、銀行経営者として、発行者機能を積極的に取りに行くという経営判断以外にとれる判断はないように思われます。もしとれないとすれば、分散型為替サービスのガバナンスを担うだけのコンピテンシーがないことが理由になりますが、これはデジタル金融、協調ネットワーク型の金融のプレイヤーになれないという自白を含む判断になりますので、銀行経営者としての適性を問われかねず、であるとすればやはりやれないとは言えないということになるのではないでしょうか。

なお、業務範囲規制との関係で、銀行本体が、または子会社を通じて、この仲介者の機能を担うことができるのかという点について、WG報告書は十分に触れていません。仲介者は本質的に、銀行の為替機能の一部を担う仕組みなので、銀行グループが仲介者の機能を担うことができないという結論にはならないはずです。

まとめ


以上、第4回はDCJPYのモデルを参照しながら、既存の為替関連業の規制と新たな仲介者の規制の異同を見てみました。全体的にはWG報告書もうまく整理しきれていない印象があり、法制化に当たってはもう一段の整理をしないと内閣法制局で苦労しそうに感じます(年末年始のタコ部屋でこの法令作業をされている担当官がいらっしゃることでしょう)。

ステーブルコインの導入という目線とは異なり、既存の電子マネー業者による分散型の電子的支払手段への移行、というテーマで電子的支払手段の法制を見ることで、既存のペイメント領域の競争環境に与える影響という観点から、分散型為替取引のモデルを検討することができると思います。

また銀行業界はステーブルコイン法制の議論を対岸の問題として見ていた可能性があります。しかし、ステーブルコイン法制を単に暗号資産領域のペイメント手段の要請に対応したものと捉えると動きを見誤ります。

銀行預金による為替サービスを含む、既存の垂直統合型の為替サービスに対するアンバンドリングを取り扱う法制であるという本質をよく理解する必要があるでしょう。銀行が最大の顧客接点として保持していた為替サービスの顧客接点側が浸食されかねない制度の提案であることを正面から理解し、どのように分散型為替取引サービスのモデルに向き合うか、真剣に検討する必要があると思います。

これまで見てきたとおり、既存のペイビジネス、銀行ビジネスへの影響も大きな改正になると思います。銀行の皆さまを含む既存のペイ事業者の皆さんとも、ぜひディスカッションさせていただきたいです。







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