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【実践編】200人以上にインタビューをしてきた私が考える、企業のインタビューコンテンツ制作のポイント|広報Tips

前回に続き、企業のコンテンツとしてのインタビュー記事作成について。今回は実際に原稿を書くプロセスに沿って考えていきます。

コンテンツ制作の下準備は「とにかくよく考えること」

インタビューコンテンツは、ほとんどの場合テキストと写真によって表現されます。
私の得意領域はテキスト作成。写真もがんばっていますが、うーん、まだまだ。。。そのうち「プロじゃなくてもそれっぽい写真を撮るためのTips」でも公開するとして、今回はテキスト制作に集中して考えます。

さて、テキスト制作という言葉から多くの人がパソコンに座ってキーボードを打つ姿を連想すると思いますが、これは誤り。

文章が書けないと悩んでいる人も多いと思いますが、多くの「書けない原因」は、以下のどれかです。

・コンテンツを作成する目的が定まっていない
伝えたい内容が定まっていない
読者が定まっていない
・そもそもリサーチ不足。情報量が足りていない

要は、パソコンに向かう前の準備段階で、よく考えて、情報(素材)を集めておくことが重要なのです。
最初にこれらの内容を丁寧に考えておくことで、目的を達成できる文章は作成できます。一つずつ見ていきましょう。

①コンテンツの目的を決める

インタビューコンテンツに関して一般的な企業で多いオーダーを見てみると、そのほとんどが

採用候補者向けのコンテンツ
ブランディング目的のコンテンツ

このどちらかに分けられます。あと、マーケティング目的のもの(顧客インタビューなど)とインターナルコミュニケーションを目的としたもの(社内報など)もあります。共通して言えるポイントも多いのですが、これらに特化した内容を網羅しようとすると情報量が多くなりすぎるので、またの機会に取り上げましょう。

まずは採用候補者向けのコンテンツについて考えていきましょう。
新卒・第二新卒等の若手向けと、経験者採用などの中途採用者向けの発信では伝えるべき内容は異なりますが、共通する目的としては、第一に「会社に興味を持ってもらうこと」あるいは「候補者が自然に自分に合う会社かをフィルタリングすること」そして「入社を後押しすること」。
一般的に
・事業の内容、やりがい
・一緒に働く仲間
・企業の社風など

に比重を置いて構成することが多いです。
制度や福利厚生にフォーカスするのも良いのですが、充実したサポートに魅力を感じて集まってくる人より、事業や人に興味を持ってくれる人を採用した方がその後の定着率は高められると思っているので、あまりそれだけに偏らないようにしようと(個人的には)心がけています。
比率的には8:2くらいで事業のことを多く書くようなイメージですね。

一方ブランディングを目的としたコンテンツの場合は、
・創業・サービス開発ストーリー
・創業者(or現経営者)の想い、哲学

など、「この人にもっと話を聞いてみたい」「取材する価値があるな」と感じさせられそうなネタを意識して取り入れることが多いです。

ちなみに、アメリカのPR業界ではナラティブ(「文脈」と訳されます)やストーリーテリングの手法が多く用いられており、ブランドストーリーの開発に特化した専門家がいます。日本でも、ここ数年でかなり増えてきましたよね。私が最終的に目指しているポジションはここです。興味がある人、一緒に研究しましょう。

②伝えたい内容を決める

目的が決まったら、伝えたい内容をあらかじめなんとなく決めます。
私の場合は実際のインタビューで得た情報をもとに構成し直すので、あまりきっちりと考えすぎない(決めすぎない)ようにしています。「読者にこんな感想を持ってもらえるといいな」位のざっくりした感じで考えることが多いかな。

例えば採用コンテンツであれば、

「今までBtoBは敬遠してきたけど自分のキャリアで必要なものが得られそうだな」
「子育てをしながらでも受け入れてもらえる&成長できる土壌がありそうな会社だな」
「他の企業ではできない特別な体験ができそうな会社だな」

など。

ブランディング目的のコンテンツであれば

「この社長にインタビューしたら今までとは違う面白いネタ・視点を引き出せそうだな」
「この業界の専門誌を名乗るからには、この会社にインタビューしておかないとだめだな」
「この会社と付き合っておくと、いろいろなつながりや、最先端の情報を得ることができそうだな」

などです。

③読者を決める

ほとんどの場合、目的とセットで考えますが、読者のバックグラウンドや知識の範囲を想像します。いわゆるペルソナを考える、ってやつです。

読者ペルソナが「大衆」に近づけば近づくほど、表現は簡単な言い回しで、ダイレクトに伝えるように心がけています。
ダイレクトに伝える、というと、感動的なキャッチコピーを作りたくなるのですが、盛りすぎないように注意。どちらかというと「配慮をする」というイメージです。
業界用語を分かりやすく言い直したり、箇条書きでポイントを整理して書く、といった配慮。これは文章の上手・下手以前の問題です。
同じことはプレスリリースを書くときなどにも言えますね。

また、その対象者の興味関心がどんなところにあるのかをさらに詳細にイメージしてみます。

採用候補者なら、会社の良い所だけでなく、今の課題や以前の担当者が辞めた理由などにも興味があるでしょう。経験者採用なら同業者であるゆえ、業界全体が抱えるボトルネックにも詳しいと思うので、それに対する自社の考え方を明示します。他にも、福利厚生や各種の制度を採用ページに掲載している企業はとても多いですが、実際にそれがどのように運用されているのか、どれくらい活用されているのかにも興味があるのではないでしょうか。

ブランディング目的のコンテンツの場合、直接的な顧客はもちろん、メディアや、投資家層を読者として想定します。
ブランディングをどう定義するかには諸説ありますが、超〜〜〜〜ざっくり「特定の分野における自社の存在感と想起性を高め、共感や信頼を促す」ことを目的とする活動とするならば、現在提供しているサービスの開発プロセスや、設計思想競合他社との違いにつながっている企業トップの考え方、そしてその思想を実現するための高い技術力や深い知見等をコンテンツによって可視化させていくことが重要になっていきます。

④情報を集める・インタビューする

ここまで準備して初めて、インタビューに取り掛かります。

前回も書きましたが、インタビューの前には相手のことをわかる範囲でリサーチしておいてくださいね。

そしていよいよインタビューです。
ほとんどの場合、インタビュー相手から聞いた内容だけで原稿を書こうとすると、あとから悩みます。
そうではなく、「相手がモヤモヤと考えていたことを言語化するのを手伝う」という姿勢でインタビューに臨むと、コンテンツ制作で使える(いわゆる「トレダカ」の高い)インタビューができます。

【Tips 1】インタビューのポイント

インタビューのポイントはたくさんあるのですが、ひとつだけ皆さんに今シェアするとしたら、一問一答形式ではなく、相手の回答をきちんと掘り下げていくという視点を持つことです。

これまで私は編集者としても、広報担当者としてもいろいろなインタビューに同席してきました。ほとんどの人が、1時間の取材の場合、ざっくり3〜4つ位の大きな質問を準備していました。

なかでも記事が面白かったり、その場にいる誰も知らなかったようなエピソードを引き出してくださった記者さん(ライターさん)は、実際のインタビューの中ではインタビュー相手の話を聞きながら、次のようなキーワードを多用して話を掘り下げていくことが多かったように思います。

・例えば?
・その時どんなお気持ちだったんですか?
・実際にはどんなことをしたんですか?
・他のサービスや業界に置き換えて考えると、どんなことでしょう?
・その前後でどんなことが変わりましたか?
・きっかけになったことって何かあったんですか?

など。

他にも自分自身のエピソードを紹介しながら、

こんな時、〇〇さんだったらどんなふうに考えますか?

などと話題を展開するような方も多かったです。

【Tips 2】気持ちのいい相槌に注意

逆に、出来上がった記事を見て、「あぁ…たぶん書きにくかったんだろうなぁ」と思うインタビューを振り返ると、「なるほど」「すごいですね」「へー」「それでそれで?」などと、インタビューされた側はとても気持ちよく聴ける相槌を打ってくださるパターンが非常に多く、、、いろいろな意味で勉強になりました。

インタビューは、立ち話とは違います。リラックスした雰囲気の中で気持ちよく話せるのは大切なことだと思うのですが、そこに終始してしまうと、いつもどこかで話している「鉄板ネタ」をもう一度話しただけで、新鮮な情報は特に得られなかった、ということになりがち。だからこそ、そのコンテンツを制作する目的と、読む人たちの顔をイメージしておくことが大切になります。

あと、これは個人的なアドバイスなのですが、インタビューが終わったら、自分なりにどう感じたかを簡単に振り返ってメモしておくといいと思います。
時間がたつと忘れてしまうので、その人とのインタビューの中でびっくりしたポイントや、面白いなと思ったことなど、いわゆる「自分の心が動いた瞬間」を書き留めておくのです。
そうすると、テキストに起こす際にも文章の構成がぐっと楽になります。よくわからなくなったら、自分が1番面白いと思った箇所から書き始めればいいのです。

⑤そしてやっと、書く

ここまで準備してやっと、パソコンの前に座って書きます。
文章のお作法やテクニックについては、言い始めるとキリがありませんが、とにかくまずは「書き終える」ことが大事です。

もう一度言います。書き終えることが大事。そのあと誰に何を言われようと、書き終えた人が偉いです。

自分1人の力で完成させようとすると、ゴールが見えなくなりがちです。前半でもお伝えしましたが、誰か別の人に編集(レビュー)をしてもらうことで100%に近づけていく、というスタンスで臨みましょう。まずは65%位のところまでがんばって自分で作る、というぐらいの心持ちでちょうど良いような気がします。

文章を書いていく中で、疑問が生じたらインタビュー相手に追加で聞くのもオススメです。
「時間をとらせてしまって申し訳ない」と遠慮してしまう人も多いと思いますが、インタビュー相手の思いや考えを正しく伝えたい、効果的に伝えたい、という思いを丁寧に伝えれば、相手にも必ず協力してもらえるはずです。もし心配な場合は、インタビュー時に「後から追加質問をお送りするかもしれません」などと断っておくと、相談しやすい空気を作れるでしょう。

【Tips 3】インタビュー相手本人が喜んで拡散してくれる方法

最後に、企業コンテンツならではの視点として、私は書き終わった後に自分に課している作業があります。
「その人が友達や恋人、家族などにドヤ顔で見せられるものになっているか」という視点で読み返すのです。
経営者、あるいは従業員が最も意識しているのはそうした身近な人たちからの視線です。大企業の経営者だって例外ではありません。そしてほとんどの場合、そのコンテンツの最初の読者は身近な人たちです。

もちろん、特定の個人を違和感があるくらいにおだてるのはコンテンツの品質として首をかしげざるをえませんが、その人がインタビュー相手として選ばれたということは、企業価値につながるような働きをしている証であるともいえます。ちょっとぐらいかっこよく書いてあげても、だれも傷つきませんよね。
距離の近い人たちに応援してもらえるコンテンツができれば、その人が自信を持って拡散してくれることにもつながりますし、その人自身のモチベーションや、周囲のメンバーの協力につなげていくことができます。

ですから、インタビュー相手のチェックなしに突然公開する、といったことは絶対に避けてくださいね。できれば、掲載する写真もチェックしてもらってください。報道の場面では「表現の自由」という断り文句がありますが、私たちが作っているのは何らかの目的を達成するための、企業のコンテンツなのですから。
その目的を達成するためにも、たくさんの人が共感し、応援してくれるコンテンツであることは、最低限クリアしなければいけない必要条件のひとつなのです。

イメージとしては、インタビュー相手と、読者への思いやりの気持ちを、スプーン1さじずつ加えるかんじです。
メリーポピンズの気分でいきましょう。

日々のタスクに追われているとなかなか難しいかもしれませんが、たとえ小さなことであっても、自分が「こだわれた」と胸を張れる仕事をしましょう。(自戒をこめて)

広報が扱うのは、究極的には人と人とのコミュニケーション。
そのこだわりが、誰かの笑顔や誇りにつながると実感できたとき、広報の仕事はもっともっとやりがいのあるものになるのではないかと思います。(良いこと言った!)

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それでは、今日も良い1日を。

Photo by Patrick Tomasso on Unsplash

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