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猫の話…死後の世界

猫はこの世で天命を全うした後、天国か地獄か、という選択肢はない。
猫は一匹残らずいい子だから、行き着く先は猫の死後の世界一つだけなのだ。

死後の世界に到着した猫は、いくつかの質問をされる。
「飼い主の名前は」
「幸せだったか」
「次生まれ変わるとしたら何になりたい」
ほぼ全ての猫が、はっきりと飼い主の名前を言えて、たとえ病気で死んだとしても、なんとか助けてくれようとした飼い主を思い浮かべ幸せだったと言い、次生まれ変わるとしたら、「また猫になりたい、でも飼い主はあの人じゃなきゃいやだ」と言った。

時たま次生まれ変わるとしたら人間になりたいとか、他の動物になりたいという猫もいるが、そいつらも、結局は猫好きになって、猫に好かれ、猫と生活し、猫と時を共にし、ぐるぐると永遠に回り続ける。

質問に答えた猫は、死後の世界で生きてた頃と同じ幻想を作ってもらい、なんら変わりない生活を送り続ける。
朝から飼い主を起こし、ご飯を食べ、留守番中は眠りこけ、飼い主が帰って来たら遊んでもらい、またご飯を食べ、甘えて、飼い主と共に眠りにつく。

飼い主が現実の世界を去り、また生まれ変わって一緒に暮らすまで、死後の世界で生き続ける。


現実の世界で、異様に懐いてくる猫がいる。
猫に懐かれる方ではあるが、何かを訴えるような鳴き方をされると、「おい!俺だよ!思い出せって!また一緒に暮らすんだよ!」と言われてるような気がする。
「…ああ、そうだな。また一緒に暮らそう」とぼそぼそ言うと、猫缶を持ったおばさんが現れ、「あらー、お兄さんに遊んでもらったのー?よかったねー」と言い、猫もおばさんの方へすたこら行ってしまう。

それが、猫だ。
僕はずっと、あいつを探してるのかもしれない。

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