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高浜原発4号機(37歳)の緊急停止:考えるべき3つのこと

2月1日の原子力規制委員会。議題「原子力施設等におけるトピックス(令和5年1月23日~1月30日)」で、運転中だった関西電力の高浜発電所4号機が自動で緊急停止したという事故報告があった。それだけ聞くと、そうなの?と思うだけだが、調べるうち、さまざまな面で重く受け止めた方が良いと思うに至った。

「問題なし」確認後2ヶ月強で緊急停止

高浜原発4号機は3号機と共に37歳。原則としては、あと3年で廃炉のはずだ。
しかし、関西電力は3、4号機のそれぞれ4200機器を点検し、「問題のないことを確認」。あと20年(60年まで)の延長を原子力規制委員会に申請すると昨年11月に発表したばかりだった。

関西電力「特別点検の結果および運転期間の延長認可申請の方針の決定」
(「高浜発電所3、4号機の40年以降の運転について」2022年11月25日より)

1.検証なしに「延長認可」権限を手放なすのか

繰り返しこれまで伝えてきたが、原子力規制委員会は「運転期間の延長認可」権限を手放なすつもりだ。代わりに、上記で言うところの「特別点検」「劣化状況評価」「施設管理方針」の手続を法律に格上げするからいいだろ?という理屈だ。

しかし、高浜原発4号機は2015年にこの手続をクリアし、2022年11月に再度、自主的に確認して(この2行の太字部分は今日の原子力規制委員長会見とその後のぶら下がり取材で確認した結果を反映して修正加筆2023年2月8日)、わずか2ヶ月強で「緊急停止」した。点検制度がずさんだったのか?それとも点検そのものがずさんだったのか?それらではどうしようもない老朽化なのか。検証が必要ではないか。

それもせずに、原子力規制委員会は「運転期間の延長認可」権限を手放そうとしている。そして、今日2023年2月8日の原子力規制委員会の議題「高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第8回)」で、「特別点検」「劣化状況評価」「施設管理方針」を少しばかり名前を変えて、法律に格上げする制度の最終案を話し合おうとしている。

それが法制化されれば、延長認可の手続はなく、ずさんな点検や評価だけで、60年を超えた運転延長が、推進官庁(経産省)の一存で可能になっていく。

2.原因は未だ調査中

緊急停止の原因は未だ不確であることはまた別の問題として存在する。緊急停止は、核分裂を制御するための制御棒駆動装置の重故障の警報が鳴って詳細点検を行っている時に起きた。時系列は次の通り。

○1月25日7時24分と1月29日16時46分に制御棒駆動装置の重故障(CRDM重故障)の警報が発信。異常は認められず警報はリセット。
○1月30日00時12分に制御棒駆動装置の重故障の警報が鳴り、詳細点検を行っていた。
○1月30日15時21分、「PR中性子束急減トリップ」の警報が鳴り、原子炉が自動停止。

「PR中性子束急減トリップ」というのは、中性子を測定する検出器が4つ設置されていて、2つ以上に異変があると、原子炉が緊急停止(トリップ)すること。原子力規制委員会の議事録(こちら)と関電の報告(こちら)を読み解いてやっとそうわかる。そして、「PR中性子束急減トリップ」の警報がなる可能性は数多く、原因は未だ調査中だ(2月8日の原子力規制委員会で、下図左から2列目の下4つの可能性は消えたと報告あり)。

原子力規制委員会「原子力施設等におけるトピックス(令和5年1月23日~1月30日)

3.製造者責任と耐久性問題は?

関西電力の報告に「CRDM重故障」という見慣れない言葉が出てきたので検索をすると、1981年に高浜原発2号、1983年 高浜発電所1号でも起きていたことがわかった。そこで、2月3日の規制庁ブリーフィングで、1、2、4号機の制御棒駆動装置の製造者を教えて欲しいと聞いた。広報からはブリーフィング直後に「申請書類に製造者名は記載されていないのでわからない。関西電力に聞いてほしい」と即答があった。その答えには呆れたものの月曜日朝に早速、以下の通り問い合わせを行った。」

1月30日に原子力規制委員会に報告をされた「高浜発電所4号機の原子炉自動停止について」に関連してです。可能性の一つとして制御棒駆動装置の故障が考えられていると思いますが、CRDM重故障がこれまでに1983年 高浜発電所1号、1981年高浜原発2号機で起きており、これらの製造メーカーについてご教示をいただきたくよろしくお願いいたします。原子力規制庁に取材を試みましたところ、関西電力さんにお尋ねするようとのことでした。よろしくお願いいたします。

2023年2月6日筆者から関西電力への問い合わせ引用

1日おいてすぐに回答がきた。

この度はホームページよりお問い合わせいただき、ありがとうございます。
お問い合わせいただいた内容に関しまして、高浜発電所1、2号機で故障した制御棒駆動装置の製造メーカと、高浜発電所4号機の制御棒駆動装置の製造メーカはともに三菱重工株式会社さまでございます。
今後とも、弊社事業にご理解とご協力を賜りますよう、お願いいたします。
関西電力株式会社 広報室

2023年2月7日関西電力から筆者への回答

全部、三菱重工業のものだった。

モノには全て耐久年数がある。製造ミスも、設計ミスもある。そして老朽化する。原発の過酷事故が起きた時に、事故の原因や、事故が拡大する原因や、事故が防げなかった原因など、さまざまな局面から見なければ、事故が繰り返される可能性はより高い。

そして、日本では、現在、原子力損害の賠償に関する法律(第4条)で、原発事故による損害は、製造物責任法の適用対象外となっている。それでいいのか。1000万点あるとされる原発関連設備のメーカーにも適正な責任を負わせることもまた、事故を防ぐ一つの道ではないかと思う。この点は時間を作っていずれまた書く。

【タイトル写真】
関西電力「特別点検の結果および運転期間の延長認可申請の方針の決定」
(「高浜発電所3、4号機の40年以降の運転について」2022年11月25日より)

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