まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染…

まさのあつこ 地味な取材ノート

ジャーナリスト。JBpressで「川から考える日本」を連載中。『あなたの隣の放射能汚染ゴミ』(集英社新書)、『投票に行きたくなる国会の話』(ちくまプリマー新書)、『四大公害病』(中公新書)、『水資源開発促進法 立法と公共事業」(築地書館)』ほか。

最近の記事

低線量被ばくとがん死亡率との因果関係が立証された論文の扱い

累積100mSv以下の固形がん死亡リスク。厚労省が国際疫学調査の検討方針を労災支援団体に約束で書いたことの続き。 山中委員長「低線量でがんが発生する云々というそういうのを聞いたという記憶はございます」 米仏英の国際原子力労働者研究(INWORKS)の結果、これまで「仮説」としてしか認めてこなかった(時に無視、軽視してきた)累積100mSv以下の低線量の被ばくと固形がん死亡率との因果関係が、「証明」された。 高線量を浴びた原爆投下による広島、長崎の被爆者の研究がベースにな

    • 原発事故で避難せず「屋内退避」。その運用を考えるチーム会合はじまり。

      4月22日、原子力規制委員会の「屋内退避の運用に関する検討チーム」第1回開催。議題は3つだ。  議題1 原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームについて  議題2 屋内退避について  議題3 検討の進め方について 原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チーム 資料1には構成メンバーあり。 屋内退避について 資料2屋内退避については、検討の土台を共有するもの。規制庁が説明した。 以下は要点未満(私の感想まじり)。 原子力災害対策の目的は、「放射線の“重篤な確定

      • 東海第二原発の防潮堤不良施工について:県議は、市議は、村議は、規制庁は

        原発事業がその事業の全てである日本原子力発電(以下、日本原電)の2つあるアキレス腱の1つは東海第二原発(茨城県東海村)だ。 2024年4月4日、超党派議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」が、その東海第二原発で起きた防潮堤の施行不良工事について、茨城県の県議および原子力規制庁からヒアリングを行った。 この問題を巡っては、日本原電が設計変更申請をするとのことで、3月26日に原子力規制庁が審査会合を開いたばかりだ。 以下、重要なことが含まれており、長文となったがご容赦いただ

        • 累積100mSv以下の固形がん死亡リスク。厚労省が国際疫学調査の検討方針を労災支援団体に約束

          フランス、英国、米国の原子力施設作業従事者約31万人が参加した国際原子力労働者研究(INWORKS)の調査結果が2023年8月に更新された。累積線量が0-100mGyおよび0-50mGyでも、被ばく線量と固形がんの死亡率に正の相関があることが示された。https://www.bmj.com/content/382/bmj-2022-074520  国際原子力労働者研究(INWORKS)とは INWORKSは 長期にわたる低線量被ばくが、がんのリスクに及ぼす影響を評価するこ

        低線量被ばくとがん死亡率との因果関係が立証された論文の扱い

          原発事故で生じた汚染土の拡散を危惧する市民と環境省、そして国会質問

          4月5日(金)、「放射能拡散に反対する会」※が除去土壌の再生利用に関するヒアリングを環境省から行なった。ギリギリセーフで会議室に滑り込んで、ICレコーダーをオンにした。(※「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」と誤解しておりました。訂正してお詫びします) 会場に来ていた川田龍平議員がこのヒアリングをもとに、4月9日(火)参議院の環境委員会で、環境省に質問を行った。ここでは、順に記録だけしておきたい。 除去土壌の再生利用に関するヒアリング趣旨 会を代表して和田央子さんが

          原発事故で生じた汚染土の拡散を危惧する市民と環境省、そして国会質問

          ALPS処理水を薄める水周辺の海底土の放射性物質の話

          2024年3月28日の東電会見(動画、資料)に関する取材ノートの続き。 ALPS処理水は海水で100倍以上に希釈して「海洋放出」を行う。実施計画(東電が申請、原子力規制委員会が認可)でそう定めている。今日は、その希釈のための海水を取水する場所の海底土の汚染具合を示すセシウム濃度のグラフに関する話。 ALPS処理水を薄める海水を取水する場所、開渠 それがどんな場所かは下図。右側の「全体図」の赤で囲ったところ。黄色に塗られた「5,6号機取水路開渠堆砂対策堤」の上に、見えにく

          ALPS処理水を薄める水周辺の海底土の放射性物質の話

          ALPS処理水に含まれる29核種の総量

          2024年3月28日、毎月最終木曜日の東電「中長期ロードマップ」会見が行われた(動画はこちら。資料は廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合/事務局会議)。 ALPS処理水については、海洋放出の第4回目が3月17日に終了したこと他、諸々の報告があった。 総量規制がないので「塵も積もれば山」 彼らが定義している通り、「ALPS処理水」とは、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」。逆に言えば、基準未満の核種は残存し、総量規制がないため「塵も積もれば山と

          ALPS処理水に含まれる29核種の総量

          複合災害は「当然、含まれる」ー原子力災害時の屋内退避の検討チームの検討範囲

          2024年3月27日の原子力規制委員会で「原子力災害時の屋内退避の運用に関する検討チームの設置」が決まった。忙しい方は以下の目次から「会見で確認した4点まとめ)に飛んでください。これまでの話から辿りたい方は「複合災害では「避難と屋内退避」を組み合わせるという机上の空論」をご参考ください。 検討事項と自治体を含むメンバー 検討結果を2024年度中を目処にまとめるとして4月中に第1回を開催するというもの。 検討項目は2月14日にまとめた論点を元に、以下3点となった。 そして

          複合災害は「当然、含まれる」ー原子力災害時の屋内退避の検討チームの検討範囲

          技術力が低下した中で運転される高浜原発

          関西電力の高浜原発1号機〜4号機は49歳、48歳、39歳、38歳と4基すべてが原則「40年」とされた運転期間を過ぎたか、1〜2年で達する「老朽原発」だ。その全ての再稼働が認められているが、3月27日に原子力規制庁が行った報告で、それらは、社員らの技術力が低下した中で運転されていると分かった。 十分安全が確保できない事案が1年で4件 3月27日の原子力規制委員会で行われた報告は、高浜原発3号機で2022年7月から2023年6月までに起きた「保安規定違反」まではいかないが、十

          技術力が低下した中で運転される高浜原発

          志賀原発で何が起きていたか? ⑥東芝、日立、三菱の変圧器の耐震性と基準地震動の見直しなど。段差は80ヶ所

          五月雨式取材ノートで恐縮だが、前回(「志賀原発で何が起きていたか? ⑤壊れた変圧器は、データ改ざんのあった三菱電機製だった」)、【3月25日加筆】1号機の変圧器は「東芝製」であると北陸電力に確認したとしたが、細かく記録しておくが、能登半島地震で一時的または現在も機能不能状態の変圧器は3台あった。 変圧器3台3社 1号機起動変圧器(東芝性) 油漏れしたが、修理部品があり今年8月に修理完了予定。 2号機励磁電源変圧器(日立製) 油が揺れて圧力を調整する板が割れただけで破損では

          志賀原発で何が起きていたか? ⑥東芝、日立、三菱の変圧器の耐震性と基準地震動の見直しなど。段差は80ヶ所

          志賀原発で何が起きていたか? ⑤壊れた変圧器は、データ改ざんのあった三菱電機製だった

          能登半島地震で、志賀原発1号の変圧器から3,600リットル、2号機の変圧器から19,800リットルもの油が漏えいして機能しなくなった問題の続き。 【3月25日加筆】1号機の変圧器は「東芝製」であると北陸電力に確認し、「北陸電力が三菱電機に確かめるべきこと」を「北陸電力が東芝と三菱電機に確かめるべきこと」として修正を行いました。 参議院予算委員会での質疑 「志賀原発の変圧器は、500ガル程度までの耐震設計を要求されていたのに、399ガルで壊れてしまった」と書いた(2月8日

          志賀原発で何が起きていたか? ⑤壊れた変圧器は、データ改ざんのあった三菱電機製だった

          嶋津暉之という生き方

          「生き方がカッコいい」と思う人は数多くいる。紛れもなくその一人は嶋津暉之(しまづ・てるゆき)さんだ。先月、逝去されたが、「嶋津さんが亡くなった」と知らない人に伝えることができなかった。言葉に出したくなかった。しかし、東京新聞に記事が載ったことで、私も、その生き方を、嶋津さんを知らなかった人にも知ってもらう機会にしたいという気持ちに転じた。 嶋津さんは2005年に「田尻賞」(「公害Gメン」と呼ばれた田尻宗昭さんの名前を冠し、公害、環境、社会問題に取り組む人に贈られた賞)を受賞

          再生可能エネルギーの主力電源化の時代に、「学生実験程度」の高速炉開発か?

          「ナトリウム冷却高速炉」事故のための試験で火災発生:茨城県で書いたように、日本核燃料開発株式会社という会社が、火災を起こしたのは、原子力規制庁が発注した事業だった。その続報。 規制庁は原子力規制委員たちに小出し報告 3月19日の原子力規制委員会で、原子力規制庁からはその火災について説明があったが、一体、なぜ火災が起きたのか、「何をしようとしていたのか」(杉山委員)、「どうしてこういうことになったのか」(田中委員)と尋ねられても、原子力安全研究部門担当者は、「金属ナトリウム

          再生可能エネルギーの主力電源化の時代に、「学生実験程度」の高速炉開発か?

          「ナトリウム冷却高速炉」事故のための試験で火災発生:茨城県

          3月15日に茨城県内の原子力施設でまた火災があったと江尻かな茨城県議がポストしていた。 茨城県の「原子力施設における事故・故障等に関する情報」サイトには、夥しい火災の記録が並ぶ。今回は日本核燃料開発株式会社の研究室で起きたとある。 なぜ水のあるところでナトリウムを? 毎日新聞「日本核燃料開発で火災 ナトリウム処理中にバケツから発火 茨城」によれば、「水を張ったバケツにエタノールの容器を入れ、ナトリウムを加えた瞬間に炎が発生」したとある。原子力規制委員会から請けた事業だと

          「ナトリウム冷却高速炉」事故のための試験で火災発生:茨城県

          福島第一:建屋止水を最優先に〜原子力市民委員会が政府・東電に要請

          3月15日、原子力市民委員会(座長:大島堅一龍谷大学政策学部教授)が、内閣府原子力災害対策本部、原子力損害賠償・廃炉等支援機構、東京電力に対し、汚染水の発生ゼロを目標とした上で、燃料デブリを現在地で長期遮蔽管理することを提言した。 原子力市民委員会側からは、技術・規制部会の後藤政志部会長やメンバーの滝谷紘一氏、川井康郎氏らが出席。東京電力や経済産業省に対して「中長期ロードマップ」における廃止措置目標と現状について確認を行った後、 (1)汚染水対策については「発生量ゼロ」を

          福島第一:建屋止水を最優先に〜原子力市民委員会が政府・東電に要請

          原発事故がなければと思う時

          JBpress というオンラインメディアで【川から考える日本】を連載し始めて1年が過ぎた。原発事故が起きていなければ、私は本来、この分野で日本をマシにすべく、人生の多くの時間を使っていたはずだった。原発事故から13年目。「ああ、原発事故さえなければ」と思う自分がいる。選択の結果なのだが。 5人の命を奪ったダムの「緊急放流」、降水量に見合った運用していればこんな悲劇は…【川から考える日本】豪雨で凶器と化す川「誰の何のためのダムか」https://jbpress.ismedia

          原発事故がなければと思う時