見出し画像

「常陽」合格後に再稼働延期/核燃料サイクル行き詰まりを示した上関町

こちらで書いたように、高速実験炉「常陽」は7月26日、新規制基準に適合したとの判断を原子力規制委員会から受けた。それから1ヶ月弱、「新規制基準への適合性確認に係る原子炉設置変更許可の審査において、更なる耐震対策、火災対策の強化が必要となった」として、事業者である日本原子力研究開発機構(JAEA)が再稼働時期の延期を発表した。


議事録を再確認してしまった

ん?と再度、原子力規制委員会の議事録を確認してしまった。最後に山中委員長が「原子力委員会及び文部科学大臣に意見聴取を行ったところ、異存はないということでございますので、日本原子力研究開発機構大洗研究所(南地区)の高速実験炉原子炉施設「常陽」に係る原子炉設置変更許可について、別紙5のとおり審査の結果を決定し、別紙6のとおり許可を決定してよろしいでしょうか」と諮り、全員「異存なし」で許可が出た。

常陽再稼働の時期は2年延期

新規制基準の合格通知を受けてから、工事計画を変更したわけだ。運転再開時期が「2024度末」から「2026年度半ば」に延期となった。

しかし、何度も繰り返すが、半世紀が経っても完成しない核燃料サイクル施設を断念し、核燃料サイクル政策自体も止めるべき時ではないか。

核燃料サイクル政策の行き詰まり

この間、核燃料サイクル政策の行き詰まりもさらに色濃く見えてきている。

原発の中に溜まりに溜まった使用済み燃料は、国が決めた核燃料サイクル政策のもとで六ヶ所村にできるはずの再処理工場に運ばれるはずが、完成せず、行き場が無い。(六ヶ所村には4月に取材に行ったがまだアウトプットできていない。)

上関町長の「中間貯蔵施設」調査受け入れという振興策

例えば、上関(かみのせき)原発の建設の見込みがほぼない中国電力は、8月2日、「上関町長からの地域振興策の検討要請に対し、上関町大字長島の当社所有地内にお いて使用済燃料中間貯蔵施設(以下、「中間貯蔵施設」という)の設置に係る検討を進める」と発表(上関地点における使用済燃料中間貯蔵施設の設置に係る調査・検討について)。

使用済み燃料の置き場に困り果てた関西電力に至っては、渡りに船とばかりに同日、「(コメント)中国電力株式会社と共同の使用済燃料中間貯蔵施設の設置に係る調査・検討について」を発表した。

そして8月18日の上関町議会で、中間貯蔵施設の話を中国電力に持ちかけた西哲夫町長が、調査の受け入れを表明した。議会では半数に近い反対意見が議員たちから出たにもかかわらず。

これらは核燃料サイクルの行き詰まりを示すものだとSNSなどでコメントが飛び交っている。同感だ。「無理が通れば道理が引っ込む」は江戸のカルタにあったとか。令和の「無理」は今後、何万年にもわたって影響していく。

【タイトル画像】

日本原子力研究開発機構「高速実験炉「常陽」原子炉施設の新規制基準適合に係る工事計画の変更について(お知らせ)」より

関係報道


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?