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運転期間延長法案に切実な声:柏崎刈羽原発

2月28日、60年超の原発運転を許容する法案が閣議決定された(既報)ことに対し、「原発推進束ね法案の閣議決定に抗議する」との記者会見が行われた。複数の市民団体が共同で開き、老朽原発に対する原子力規制委員会の判断取り消しを訴えている原告や、柏崎刈羽原発のそばに暮らす住民も加わった。最も切実な声を上げたのは、東京電力の柏崎刈羽原発が立地する新潟県刈羽村の住民だった。

02年ひび割れ隠し〜21年核燃料移動禁止命令、
そして23年、雪で通行止め。柏崎刈羽は動かない

「原発反対刈羽村を守る会」の武本和幸さんは、訥々と次のように語った。

「私は1968年に計画が発表されて以来、柏崎刈羽原発問題を見ている。今回の一連の動きを見ていて、国は先祖返りをしたと思う。国策民営で柏崎刈羽原発は世界最大の原発基地になった。2002年にはひび割れ隠し発覚事件があり、2007年には中越沖地震があり初めて原発が被災した。2011年には東日本大震災で、柏崎刈羽原発はほとんど動かない状況が続いている。

その間、現地で何が起きているか? 7号機では使用済み燃料が満杯です。六ヶ所村も満杯で、2号機に380体移送する計画があった。ところが、2021年、7号機の安全対策工事が完了したというのに完了していなかった。他人のIDカードを使ったり、核防護施設が損傷しているに放置していたりしていたことがわかり、核燃料の移動禁止命令が出ている。動かせる状況ではない。

311前は、原発事故は起きないが念のため、と原子力防災計画を作った。しかし、避難はできるのか。この冬3回、そう問われることが起きた。12月19日、雪で原発周辺は道路が遮断。1月、2月にも除雪のために高速道路が通行止めとなった。

先週土日、30キロ圏にヨウ素剤を配布する会場が満杯になった。みんな事故が起きるのを本当に心配している。それがわかった。住民は東電はとても原発を管理できる会社ではないと思っている。そんな中で、国が原発の運転期間延長を後押しするのはどういうことなのか。

安全審査「不正閲覧する事業者の鵜呑みでいいのか?」

「老朽原発40年廃炉訴訟市民の会」の柴山恭子さんの批判は、裁判で分かったことに基づいている。

「私たちは高浜1号、2号機、美浜3号機で、今の法律で例外に認められた20年延長許可の取り消し訴訟を2016年から行なっている。安全審査は厳格ではない。取り替えができない原子炉の中性子脆化については、高温高圧の原子炉に冷却水が流れ込んだ時にバリっと割れないかどうかを評価することに規則ではなっている。 

しかし、評価結果が変だったので、元のデータを出して欲しいと求めると原子力規制委員会は持っていなかったことがわかった。裁判所に求めて関西電力のデータを見ると、破壊靱性試験(引っ張ってどこまで耐えられるか)は、母材と溶接金属と1回にどちらか1種類しか試験をしていない。1種類分しか入っていないからだと。ここまでズサンな審査だったことは驚きだった。

開き直った言い訳が、『元のデータを見ることは法令で求められていない、人的・物的資源が限られている、事業者には品質保証の義務を課しているから信頼性は担保されている』と。しかし、今、顧客データの不正閲覧など問題を起こしている事業者の鵜呑みでいいのか」

「運転期間の撤廃だけ先に決めるのは順番が逆」

国際環境NGO FoE Japanの満田夏花事務局長は、「岸田首相は、国会審議などにおいてしっかりと説明ができる準備をした上で閣議決定をするようにと指示。それから11日しか経っていない。」

原子力資料情報室の松久保肇事務局長は、「原子力規制委員会は、劣化状況はどのようなタイミングでも評価できるというが、原発の劣化に明確な境界線があるわけではない。安全側に判断できるのか。」

原子力規制を監視する市民の会の阪上武代表は、「60年超の審査をできるのかについてはフワフワした議論しかしていない。運転期間の撤廃だけ先に決めるのは順番が逆だ。原子力規制委員会には驕りがあるのではないか」。

柏崎刈羽原発はどの理由で何年延長されるのか?

ここまで書いて、筆者は考える。武本さんが指摘した「柏崎刈羽原発はほとんど動かない状況」を考えると、もしも法案が通った場合、経産省が判断する延長していい理由は、以下(既報「原発「運転期間」延長の焼け太りー電気事業法」で整理)のどれにあたるのか、あたらないのか。
 1.新規制基準への適合と審査で停止した期間
 2.行政処分で停止したが、停止する必要がなかった期間
 3.行政指導に従って停止した期間
 4.裁判所の命令で停止したが、停止する必要がなかった期間
 5.他の法令等、予見し難い事由に対応するため、停止した期間

それとも、「ふしだらな事業者」(山中原子力規制委員長の弁:既報)だから延長なんてとんでもないということになるのか。それとも延長どころか、再稼働もダメだというのか、それは経産省ではなく、住民に聞くべき話だと、筆者は思う。

参考 東京電力ホールディングス株式会社資料
使用済燃料の号機間輸送等について 2020年 10月28日
柏崎刈羽原子力発電所のIDカード不正使用および核物質防護設備の機能の一部喪失に関わる改善措置報告について 2021年9月22日 
柏崎刈羽原子力発電所 一連の不適切事案について
7号機安全対策工事の一部未完了
核物質防護設備の機能の一部喪失
IDカード不正使用

なお、武本さんが指摘した他にも、長期間使用していない7号機循環水ポンプを起動させたら、配管の下部に6センチの穴が空いて、海水が漏れ出ていたことが分かった、という事件も2022年10月に起きている。

以下資料より筆者抜粋
出典:「7号機循環水系配管(A)の欠損原因について」
2022年11月24日 東京電力ホールディングス株式会社 柏崎刈羽原子力発電所

【タイトル写真】Note のフォトギャラリーより

「第400回 再稼働反対!首相官邸前抗議(ファイナル) - 2021年3月26日(金)/東京都千代田区」Photo by rio_akiyama 

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